第五話 汚された聖域
「……しつこいなあ」
リビングに響き渡るインターホンの音
それは拓海くんの時とは違う、焦燥感と執着の混じった、鋭い音だった
ドアモニターを確認した私の唇が、自然と吊り上がる。前消したはずのノイズ
あの女だ
「悠、あの子来てるよ。悠に酷いこと言われて、よっぽどショックだったんだね」
「……っ、ぼ、僕……何も、言ってない……!」
ベッドの上で、悠が必死に否定する
でも、あなたにはこのドアを開ける権利も、真実を叫ぶ自由もない
私は悠の唇を指でなぞり、「静かにしててね」とだけ囁いて、玄関へと向かった
ドアを開けると、そこには泣き腫らした目の女が立っていた
「悠! 悠いるんでしょ!? あのメッセージ、絶対に嘘だよね!? 何かあったんだよね!?」
「あ、ごめんね。悠、今はちょっと……”事後”で疲れてて、動けないんだ」
女の顔が、一瞬で絶望に染まっていくのが分かって、胸の奥が熱くなった
「嘘……そんなの、信じない……!」
「信じなくていいよ。でも、悠が自分の手で君をブロックしたのは事実でしょう? 悠、言ってたよ。君の好意が、ずっと反吐が出るほど気持ち悪かったって」
私が冷たく言い放つと、女は言葉を失い、崩れ落ちるようにその場にへたり込んだ
部屋の奥で、悠が何かを叫ぼうとして、ガタンと音を立てる
私はそれさえも「悠も同意してる」という演出に利用して、女にとどめを刺した
「もう二度と、ここに来ないで。汚らわしいから」
パタン、とドアを閉める。 外から聞こえていた泣き声が遠ざかっていく
部屋に戻ると、悠が涙を流しながら私を睨んでいた。 でも、その目にはもう、かつての光はほとんど残っていない。
「……ひどい……灯……悪魔……」
「悪魔でいいよ。君を救ってあげられる、唯一の悪魔なんだから」
私は悠の涙を舌で掬い取り、そのまま深く、深く、彼の理性を溶かすようなキスを贈った




