9.それに対してのざわめきは、起きなかった-彼女は軍人としての籍も与えられた-
全34話予定です
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それに対してのざわめきは、起きなかった。
それはサブプロセッサーしてみればこの姿になったのは、ある意味必然だと、そう刷り込まれているからなのだろう。そしてゼロフォーはその中でもヒトとして扱ってもらえる事になった。それは羨望の対象にこそなれど妬みの対象にはならない、そういう話である。その辺りは孤児院を出たあとの二年半でよく刷り込まれている。
つまりは[あいつが妬ましい]と思う事が出来ないのである。それはひとえに[マスターの言葉は絶対]という刷り込みからきている。彼女たちはマスターの絡んでいる人を、羨めこそすれど妬めないのである。自分自身が妬むという思考を許さないのだ。それほどに脳科学は、刷り込みはガッチリとサブプロセッサーたちの心を縛っているのである。
そして、パイロットはと言えばこちらも二期生以降は脳科学を使用して刷り込みを行っている。だから[今からお前の躰を取り上げる]とカズが言えば有無を言わさずそうなるし、本人たちも抵抗しようという心が芽生えないのである。
「オレは、パイロットもサブプロセッサーも等しく等価だと思っている。それはもちろん綺麗ごとなのかも知れない。それでも前線に出て行ったパイロットだけでなくサブプロセッサーの行方もやはり心配なんだよ。もちろんサブプロセッサーを等しく[ヒト]として扱うのは現在は出来ない相談なのも重々承知している。でもね、こうしてパイロットへの道が開けた、それを軍が良しとしてくれたんだよ」
少しだけアツく語ってみる。それはカズと言う人物を知れば知るほど[嘘だ]と分かるはずだ。それでもカズは言葉に熱を込めて話した。いつものカズらしくない行動である。
――まぁね、これが第一号なんだ。それに別の褒美もあるけど、今はまだ黙っておこう。
カズはそんな事を考えながら話をしていた。
「異論は……出来ないのも知っているのでこれまでにするけど、ひとつ。パイロットになれて本名を明かせる可能性がある、それだけ覚えておいてほしいかなって。じゃあ、早速だから名乗ってもらおうか」
そう言ってゼロフォーをコールする。すると、
「マスターから名を授かりました。私はソフィア、ソフィア・ペトローヴナ・スルガノヴァ大尉です」
そうソフィアは名乗った。
「彼女は軍人としての籍も与えられたので、躰がないという以外は軍人の大尉と変わらない扱いになる。もちろん現在のサブプロセッサーという存在が世に知られていないので同盟連合軍内で自由に名乗るのはできない。でも大尉というクラスがあって、命令権もある。場合によっては分隊の指揮官機となるやも知れない」
と言ってから、
「これは実験の一部でもある。今までレイドライバー技術は急速に進化していった。その中で必要ないと判断された技術もある。旧式、と呼ばれるようになった技術も。そんな中で絶えず研究は進んでいるし進めている。ソフィア大尉にはもしかしたら別のものが与えられるかもしれないが、それは研究の途中だ。だから、とりあえず今回は彼女という存在を受け入れてほしい。ああ、それから」
話を終わらせるところだったカズは、
「ソフィア大尉は今のところゼロフォーの機体に搭載される、つもりでいる。パイロットはマリアーナ中尉だ。つまり当面の間はサブプロセッサーとして働いてもらうんだけど、作戦内容によっては単独行動もありうる、と。幸い、ソフィア大尉は帝国のトップと呼べる人物に面識が出来たからね」
そんな言葉で締めくくる。ざわめきはやはり起きなかった。それはパイロット含めて皆がカズの事をマスターと認識している、まさにその表れなのだろうし、マスターの言った言葉なのだから絶対なのである。
「さて、ここからは作戦会議だ」
カズは改めてそう振りなおした。
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