32.それじゃあ、ヒトとして最後の言葉を-ねぇ、パパ。もう一度やり直さない?-
全34話です
ここでカズの夢の中で出てくる「パパ」という台詞はヒューマンシリーズの中の、ヒューマン3の登場人物に起因しています。
この作品はR-18にしたので、作者ページからは直接は見られません(直接検索のやり方があるのかが分からないです)。
性的行為に関しては若干あるものの、激しい描写はほとんど出てきませんのでそんなに読みづらくはないと思われます(主観ですが)
なのでリンクを貼っておきます。もしもご興味がありましたら是非読んでくださると嬉しいです。
▼【R-18】ヒューマン 3 -時間遡行によってもたらされたものは-▼
https://novel18.syosetu.com/n2786ia/
曜日に関係なく毎日1話ずつ18:00にアップします(例外あり)
※特に告知していなければ毎日投稿です
手術日はちょうど一週間後になった。やる作業としてはいつものサブプロセッサーを作成するのと何ら変わりはない。ログを取る機能を削除した生体コンピューターが用意された。これはカズの立場としては当然だろう。
手術台に乗せられ、周りにはアイザックと[襟坂]がいる。麻酔医を兼ねた看護師もいる。そんな看護師が、
「ご自身で話が出来る最後ですが」
と尋ねてレコーダーを差し出す。
カズは、
「それじゃあ、ヒトとして最後の言葉を」
と続けて、
「失敗はほぼないと考えています。だけと一応、今までありがとうと言わせてください。オレは今まで色々なことをしました。それはみなさんにとっては耐え難いことも含まれていたかもしれません。それについては謝罪を。そしてこれからもこんなオレに付き合ってくれると嬉しいです。しばらくの間留守にするけど、今の体制なら大丈夫だと信じています」
そう言って言葉を締めた。
「じゃあ、やっちゃおっか」
[襟坂]はいつも通りだ。アイザックの表情も何も変わりはしない。そしてここにいるのは同盟連合の中でも最高のスタッフなのだ。手術に心配はほとんどないだろう。
「では麻酔をします。聞こえます……」
そんな言葉を最後まで聞こえずにカズは意識をなくした。
…………
カズは夢を見ていた。大学時代の夢である。千歳がいて、恵美がいて、吉岡や岩田、下山がいて。
いつものように昼食の時間、大学の四階にある喫煙スペースで皆で柳川のから揚げ弁当を食べて。
いの一番で食べ終わる吉岡が煙草を吹かすのを皆で苦言を呈しながらも誰一人欠けずにそこにいる、そんな夢を。
――ああ、そうか。今のオレでもこんな夢が見られるんだ。それはとても嬉しいことだよ。あの頃に戻れればどんなにいいか。今思えばあの頃が一番平和だったな。千歳も襟坂さんも。岩田だって下山だって生きてる。それがどれだけ尊いことか。
…………
――あの頃に戻れないかな――
ふとそんな気持ちがよぎる。しかしそんな光景はもう数十年も前の話だ、今更あの頃に戻れるとは思っていないし、第一それはどだい無理な話である。しかし、カズはあの頃に戻りたいと切に思うのである。戦争も三国体制もまだない、日本という国があって皆が平和に暮らしていたあの頃。
だが、それは幻想であろう。夢まぼろしというやつである。どんなに切望したところで時間を巻き戻すことは、今の人間には出来ないのだから。
それでも。
と、カズは思ってしまうのである。あの頃に戻れればどんなに嬉しいことか。
――またみんなでワイワイとやりたい、な。
そんなカズも意識が戻りつつあるのが、思考がまとまらなくなってきていた。人間が夢から覚める瞬間に似ている。時間感覚が徐々に戻りつつある、というべきなのだろう。夢の中で見ていた時間と現実に流れている時間のすり合わせがおきて、目覚めるのである。
「ねぇ、パパ。もう一度やり直さない? ぼくが望んだのはこんな未来じゃあない。これじゃああんまりだよ、ねぇ、パパ?」
そんな声が聞こえたような気がしたのは、夢を見ているせいなのかも知れない。
そして。
「ここは?」
カズは見慣れない、ある意味で見慣れた光景に戸惑っていた。
全34話です




