24.それだけ優秀だった-しかし、本当にこんなに初戦で上手くいくとはね-
全34話予定です
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結局、四体の全身義体組は目立った損傷もなく前線基地に戻ってきていた。それだけ優秀だった、というべきなのだろう。もちろん今回の作戦はデータ取りという側面が多分に強い。そして制圧すべき次の前線へと送られた。
そこでも多少の損傷はあったもののやはり無事にすり抜けたのである。
旧ギリシャ戦が終戦し、四体はフィリスの乗った輸送機に一緒に乗ってエルミダス基地まで帰ってきていた。そこから車に乗り換えて研究所へ、となったのである。もちろん研究所の位置を知らせるわけにはいかないので、四体は脳核だけ生命維持をし、他の機能はすべて遮断する、いわゆる[自閉モード]というものに設定をし、まさしく被検体として目的地へと運ばれたのだ。この状態になると、外部から解除しない限り自分からの自発行動と呼べるものが一切取れなくなる。そう、これは兵士の輸送にも使える技術なのである。アフリカからシベリアに本人に知られずに送る、なんてのもお手の物なのだ。本人が知らなければ話せない、話せなければ敵に知られる由もないのだから。
そこで今回得られた戦闘データを収集、一部データを四体それぞれに共用化した。昔の、いわゆる脳に直接データを書き込む[アップデート]と呼ばれたものは現在使用されていない。その代わりといっては何だが、生体コンピューターに若干の記憶域の拡張を図って、運動や姿勢制御などの基礎データに限って共有化を図ったのである。
「しかし、本当にこんなに初戦で上手くいくとはね」
そんな言葉を発したのがカズその人である。それを[襟坂]が、
「そうね、実際テミラデの存在が大きかったかも。彼女が素直な娘でよかったよ」
テミラデは実験にとても協力的な態度で接していた。本人が連れてこられたいきさつを考えれば怒ったり癇癪を起してもいいようなものだが、それよりも怯えと、未知の躰が背中を押したのだろう。何せ研究所の人間に言わせれば[すこやかな健康を維持しつつオマケに寿命が延びる]との事だ、生身の身体とはおさらばしたがそこはうまく自分との折り合いを付けた、いや付けざるを得なかったのだろうが。
話を戻すと、この結果は軍上層部としても無視の出来ない内容だった。それはそうだ、生身の人間は腕などに被弾すればたちまち動けなくなる。そうなれば必然、後退せざるを得ないのだ。その点、義体化した身体であれば、たとえ片腕が吹っ飛ばされようが本人は平然と戦闘を続行できるのだから。
事実、前線に送り出した四体のうち二体は若干の負傷はした。しかし、そこは義体、普通の人間よりも丈夫にできている。身体の接触面に対して直角に弾丸か入らない限りはだいたい弾いてしまうのである。弾いた身体は確かに傷がつく。だが、その部位のペインアブソーバーを下げてしまえば痛みは感じにくくなる。そして次に、となるのである。
こうして四体の試験部隊は[男女の差異なく]前線に投入が可能、と判断されたのである。この結果は軍や政府上層部に今までの考え方と違って大きく舵を切るきっかけとなったのである。現在、レイドライバー本体は米州で製造されており、コックピットとサブプロセッサー周りを研究所で組む、というスタイルが採られているのだが、ここに全身義体の躰も含まれることとなった。
つまりはレイドライバーと共に義体も供給可能になったのである。
だが、脳核を摘出、ガワに詰めて頭部に入れるのだけは研究所の技術である。今でこそ事故率ほぼゼロで手術が出来るようになったが、それまでは多少の[ロス]は出ていたのだから。政府も[米州ですべて完結を]と言ってはいたが難しいのも分かっていたので現行の、研究所での施術を容認してきた。
しかしこの技術の拡大という、大きく舵を切ったことでそうも言っていられなくなってきたのである。
必然、研究所の分所化を検討することとなった。しかし、この脳核を取り出すという技術は当の研究所でも数人しか行えない技術だ。
ではどうするか。
数名ずつ腕の立つ医師を研究所が引き受け、一緒に作業させることで技術の習得をする。そして技術が習得できれば本州へ帰って別の人間に技術を……となったのだ。
この段階においてはカズとしても[人の脳みそを公言されるおつもりですか?]という昔の一言は仕舞わざるを得なかったのだ。米州で脳核の取り出し、生体コンピューターの埋設が出来るようになれば米州でレイドライバーも製造可能になる。そうなればいよいよ本格的に生産が出来るようになる。そして全身義体化した兵士軍も出来上がるという寸法になったのだ。
これはカズが准将になり、全軍の統括を一部任されるようになったのと関係している。もうここまで研究が進んだ現在、人体実験を極秘にしなくてもいいのではないか、そんなところまで来ているのである。
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