22.旧ギリシャを目指していた-これから特殊作戦に従事してほしい-
全34話予定です
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ここで一旦、話は旧ギリシャでの戦線にまで時間を遡る。四体の全身義体を駆る兵士たち、アルファ、ブラボー、チャーリー、デルタの四体は軍用輸送機で一路、旧ギリシャを目指していた。
………………
四体になる前の、それが四名だった時に彼、彼女たちはそれぞれ別の部隊に所属していた。いわゆる非戦闘地域での勤務となっていたのである。だが、全員に共通して言えるのは日本戦や旧ブルガリア戦を経験しているというところだろう。経歴を掘り出せばそれこそ兵士として前線に出ていた時期の方が長い。そんな三十路になるかならないかの[脂の乗った]諸君ばかりである。
そんな彼、彼女らに個別に[ある情報]がもたらされたのはつい一か月前になるか。
「これから特殊作戦に従事してほしい。そして作戦に従事するにあたってひとつ条件がある」
そう告げられて出たのが全身義体の話である。もちろん身体を捨てろと言われて[はい分かりました]と素直に言える人間が一体どのくらいいるだろうか。
しかし、そういう人材をピックアップするのもまた情報部、軍の仕事でもある。何事も適材適所、そういう意味では同盟連合の方はどこぞの独裁政治と比べていささか優れている、ともいえるのかも知れない。片方が独裁の、一極集中の恐怖政治を貫いているのに比べて、同盟連合は合議制を採っている。いわゆる民主主義陣営、と呼ばれた国々の集まりなのだ。その大統領には強大な権限が付与されているが、国議に関して言えば基本的には議会に召集される旧各国代表の、現各州代表の合議によって取り計らわれるのだ。
そして同盟連合は表現の自由が、全面的ではないにせよ認められているのだ。これは戦時下が長く続いているせいもあるのだが、他国を非難するようなものには検閲が掛けられる。しかし、他の大多数の記事には検閲は掛からないのである。そういった土壌が色々な考え方を許しているのである。そして許されているからこそ恐怖政治との違いはここに出てくる。こと一兵士が、どんな事を考えて、どんな思想を持っているかといった情報がより採取しやすいのである。
それはそうだ、恐怖政治を敷いている某大国は思想が厳しく統制されている。基本的にはメディアはすべて国が関与しているし、国直轄と言ってもいいのである。そのメディアに出てくるのは[自国にとって有益な]情報しか、戦争情報などまず出てこない。一部のゲリラ的なメディアが命を懸けて映してくるのを、周りの目に怯えながら見る、それくらいしかできないのだ。
なので兵士たちは基本的に単一思想とみなして処理される。つまるところ適材適所ではなくて[穴が開いたからお前が埋めろ、拒否権は無しだ]という具合である。だからもしも全身義体の技術が某大国が採用したならばその人選は上が決めるものであって自分が決められるものではないのだ。
………………
そして先ほどの話に戻る。
「これから特殊作戦に従事してほしい。そして作戦に従事するにあたってひとつ条件がある。きみはその身体に執着はあるか? その身体と決別しても良いと考えられるか」
そう尋ねたのである。その答えが多分に[はい]という言葉を含んでいる事を承知の上で聞いているのだ。そして実際に[はい]と答えた兵士が四名いた、という結果につながるのである。
「きみたちには男女一組ずつに分かれて制圧班に入ってもらう。つまりは最前線だ。そこで思う存分その身体で戦ってもらう。負傷については某施設で聞いた通り[壊れても直せる]そうだ。ヘッドショットを受けるのは極力避けるように。そして痛いのが嫌だからといってペインアブソーバーの数値を下げすぎないように。下げれば下げるほど実際の感覚がなくなっていくからな、以上だ」
となったのである。
情報は、ほとんど開示されていない。ただ、自分が全身義体という新しい身体と病気のリスクからほぼ解消されたというメリットと、脳さえ無事なら死なない身体になって、寿命が延びたという事実だけが告げられたのである。
「自分たちは試験部隊と聞いていますが、男女一組ずつというのは、何か意味があるのでしょうか? 比較試験をするなら男性と女性で分けたほうが良いのではないか、と」
と誰ともなく声が上がる。そんな質問に、
「きみたちは[兵器]だ。その[兵器]の品質を吟味するのに男女差があるのか、というのはもっともだ。しかしそれは、男女一組で比較試験をした時に差が出るようでは困るのも、分かるかな?」
と言われては黙るしかない。そう、彼、彼女たちは既に[兵器]なのである。
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