21.カズはその間、ある研究を続けていた-旧ギリシャの地上部隊に合流したのである-
全34話予定です
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カズはその間、ある研究を続けていた。研究というよりは実地試験というべきなのかも知れない。
研究所にずっと籠っていたのだ。
テミラデという被検体を使って、全身義体のあらゆる考えうる不具合を洗い出していたのだ。これには研究所の職員がかなり加わった。一人よりも二人、二人よりも、というやつである。多人数で洗い出しをした方が効率的かつ合理的である。それにレイドライバーの主要な研究がひと段落した今、次の研究目的は当面この義体を、となるというものだ。
全身義体、それはまさしくレイドライバーの次なる主要目標と言える。全身義体の兵士が出来ればどんなにいいか。それが分からないほど政府上層部も無知な訳でもなければ、その実現を怠るほど研究所という施設は馬鹿ではないのだ。
本当にさまざまなテストをした。それこそ、急増でハンガーの傍に体操が出来る施設を作ったくらいである。本当に様々な器具を設置してそれを試させた。逆上がりや、それこそ縄をよじ登るなんて動作も行った。同時にテミラデには思っていることを言うように伝えてあった。なので、ここが感覚と違う、とか、ここはもっと痛みがあるのでは等と言った、本人でしか気付けないところにも踏み込んで洗い出しを行っていた。
そんな不具合や、違和感の洗い出しと共に並行して行われていたのが、データ取りである。例えばある程度の高さから垂らしてある縄をよじ登る。こんな動作に一体どれだけの感覚信号が使われているか。その強弱を、本人の[ここが違う]という修正と共にずっと取り続けていたのである。
一通りのテストが終わると、次は射撃訓練に入った。もちろんそれまでに腕を使う作業はこなしていた。例えて言うならポータブルラジオの裏側に留まっているネジをドライバーで取り外したり、またつけ戻したり。
そうして実銃を使った射撃訓練も行ったのである。これは当初予想していたよりは順調に推移した。なにしろ元々が義体である。人間には身体の[揺れ]というものが存在する。
例えば、
[動くな]
と言われてまったく一ミリも動かない、等というのは並みの人間には不可能である。だが、義体は違う。それも全身義体なら、制御次第でいくらでも動かなく出来るのである。その辺りは実に制御次第、というところだろう。不随意運動はある程度仕方ないとはいえ、その不随意運動も生身の躰がない今、そんなに必要ではないのだ。不用意な動きをゼロにできる、というのは同時に正確な射撃が可能になるのである。一度誤差を修正さえしてしまえばあとは自由自在、それほどに、カズたち研究者たちが思わず唸るほどに正確に射撃をして見せたのである。銃身の曲がりを意図的に施した銃でもそれは同様だった。一、二発発砲して思っていた位置との違いを生体コンピューターに記憶さえしてしまえば、あとは自由自在に照準を定めるられるのである。
射撃訓練も順調にこなしていったところで上層部から[被検体を手配できた]との知らせが入った。それが旧ギリシャ作戦予定の一週間前である。
四体とも実戦でそれなりの成績を上げている、しかも[実力の拮抗した]男二名、女二名の計四名である。そして四名とも[四体]になる事を了承したという。
「一体どんな方法を使ったのか」
そうこぼしていたアイザックの言葉とは裏腹にその四体は研究所に拘束された状態で連れてこられた。
そこでカズから一通りの説明を受け、自分の意思で肉体を捨てるという決断をさせ、手術へと入った。
手術そのものはいたって順調であった。それはそうだ、こと一年というスパンで見ても一体いくつの被検体をさばいているのか、というくらいには脳核をしょっちゅう取り出してはケースにしまうという作業をしているのだ、しかも最近は事故率ゼロである。つまり[そういう意味]での犠牲者を出していないのだ。だからカズも、パイロットは別としてサブプロセッサー作成に当たって[第何期生だから何個作れるな]などとあらかじめ予想が付くのである。
テキパキと作業は進んでいった。それこそ、脳みそを別の容器に生きたまま移し替えるという作業なのに一体当たり四時間もあれば終わられられるのだ。
手術が終わったものから順に全身義体へと脳核を入れていく。もちろん生体コンピューターも埋設されているから、頭部にすこし出っ張りが出来るのは致し方ないところではある。
それでも全身義体の姿は元の本人に似せて作ってある。流石に全くの同一、とまでは技術が追い付いていないので無理なのだが。
そして被検体である四体はそれぞれ義体の調整を受けてその躰の使い方を覚えて、たった一週間で前線に投入されたのだ。
そう、旧ギリシャの地上部隊に合流したのである。
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