19.うん、いいんじゃあないかな-思考を縛るか否か、それはとても難しい問題-
全34話予定です
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その後のクリス達は拠点まで一旦撤収を、という流れになった。同盟連合の機械化部隊を中心とした地上部隊も、初めは押され気味だったのだがクリス達の戦闘と時刻をほぼ同じくして援軍が到着し、反転攻勢へと出ていたのである。
もちろん、帝国製の新型戦車の威力は凄まじかったが、こちら側から出た航空部隊による爆撃部隊が何とか沈黙させることに成功、それも地上部隊の反転攻勢に一役買ったのだ。
もちろん、ゼロファイブの活躍も無視はできない。航空部隊とレイドライバーと。その組み合わせが結果をちゃんと残したのである。
そして、クリスはカズに今回の作戦の報告をしていた。
カズは、
「うん、いいんじゃあないかな。過程はどうであれ、ちゃんと三つ巴になったターゲットを撃てたんでしょ? 結果がどうであれ、それが実行できたというのが大きいかな。その事実をどう[消化]するのかは自分次第だよ」
と言ったのだ。
もちろんその言葉に素直に[はい……]とは答えたクリスではあったが、
「これはやはり思考をもっと縛って頂いた方がいいのでしょうか?」
と問う。
「思考を縛るか否か、それはとても難しい問題なんだ。今の脳科学を用いればきみを戦闘マシーンに仕立てる事も恐らくは可能だろう。だが、オレが欲しているのは殺人機械じゃあないんだ。もしも殺人機械が欲しいのであれば、AI(人工知能)の可能性の方を推せばいい。しかし、AIはいまだ単独での実戦投入には至っていない……のは知ってるか。まぁ、そんなだから今回は満点回答かな。[事後]の処理は自分でしなさい、いいね」
と言われてしまえば、流石のクリスとて、
「分かりました、ご主人様」
となるのである。
そうやって、まずはカズに一報を入れたあと、クリスはフィリスの元へと向かう。野戦病院に応急的に運ばれたのである。一応、運んだ際のトリアージで生存の可能性が高いという診断は受けた。しかし、まだ目を覚ましてはいない。これは脳震盪が疑われる事案だろう。医師からは[手は尽くしてみるから]と言われて現在に至るのである。
ゼロエイトは、と言えばクリスの自機であるツーワンに搭載したままである。この機体は確かに急遽第三世代型の試験運用という形が採られた機体ではあるが、ベースになっているのは第二世代型である。なので、当然ながらサブプロセッサーを搭載するスペースは存在しているし、何なら栄養バックも[念のため]積まれている。良くも悪くもトリシャがした救出劇の教訓が生かされる形となったのだ。
クリスはコックピットに乗ると、シート背面に備え付けられていたゼロエイトを取り外す。このまま背面に設置しておいても良いのだが、機体を失った今、脳みそは一個でも多い方が良い。必然、ツーワンのサブプロセッサーを担当してもらおうというのだ。
取り外したそれは本当に脳みその形にそって出来ている。もちろん、サブプロセッサーなのだから戦闘や取り外しを考慮して脳核が収められている[ガワ]にもう一段外装が施されている。なので、実際の脳核よりは若干の大きくなってはいるものの、それでもゼロゼロの時代から比べればそのサイズは段違いに小さくなっている。
そのサブプロセッサーを今度はパイロットシートを開けて中に収納する。この辺りは専門知識がなくとも出来るように設計がなされているのだ。
だから取り付けて生命維持装置をポータブルの本体からレイドライバーの方へ切り替えた瞬間から読み上げが始まる。ゼロエイトが生体コンピューターから指示を受けて[読み上げてしまう]のである。
その内容は、と言えば生命維持装置が切り替わった事、レイドライバーの制御系に接続された事、そしてレイドライバーの起動シーケンスの読み上げである。第二世代型以降は基本的にサブプロセッサーだけで行動が可能になる。もちろんパイロットが乗っていればそちらが優先になるのだが、万一の事があった場合は直ぐにサブプロセッサーが独自に動けるようになっているのだ。
なので、
「起動しました。今回は本当にありがとうございます」
と言われた時、クリスは少しだけ複雑な気持ちになっていた。この事態を招いたのは他でもない、クリス自身である。今回はたまたまパイロット、サブプロセッサーともに無事[回収]出来たからよかったものの、これがもしも両名とも死亡、等となっていたら。
――止めよう。これ以上は[身に余る]考えだ。
クリスは誓ったのである。カズの為なら何でもしよう、と。それが例え今回のように味方共々攻撃することになっても、例え自軍の人間を殺めることになっても。そして、その結果から逃げない、と。例え上気や、もっと言えば痙攣にまで性的なものに結びつけてしまっても、それを抱えて生きていこう、そう思ったのだ。
だから、
「ごめんなさい、とは言いません。それが私の責任の取り方ですから」
ゼロエイトにそう答えたのである。
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