17.わ、私は、一体-もしも生きているのなら-
全34話予定です
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「わ、私は、一体」
クリスが我に返った時には一連の戦闘は終結していた。三体とも動けなくなっていたのだ。クリスは機体を、惨状のあった場所まで移動させた。もちろん全方位警戒システムのプログラムはちゃんと走らせている。彼女だって昔のままの彼女ではない。マリアーナの時のような轍は二度と踏まないだろう。人はそれを成長と呼ぶのだろう、だが、今はそんなのは些末なことだ。
「フィリス准尉!」
と声を掛けながら手に握ったマシンガンで敵のレイドライバーを突く。相手は、動かなかった。刹那、もう一体の敵レイドライバーがナイフを突き立ててきた。こちらに武装は残っていない。
どうするか。
気が付けばナイフを左腕に受けてしまっていた。だが、帝国の反撃もそこまでだった。気が付けばクリスはゼロエイトの持っていた武装を引きちぎるかのようにして分捕り、それを敵に向けて撃っていたのだ。
それが決め手となった。しばらくして敵レイドライバーは二体とも自爆モードに入ったようで内側に爆縮していった。流石に敵と会話などしてはいなかったので、一体どんな指揮官が指揮をして、どんな指示を出したのかまでは分からないが、
――これは確実にこちらのレイドライバーを一体仕留める方法だ。その為にまさか二体を犠牲に出すなんて。
そう思えてしまう程に、敵の戦い方はいささか思慮を欠いていたように見える。いや、見えるだけで実のところはそれも[命令]だったのかも知れない。
クリスはカズの副官として、様々な会議にも出ているし、またさまざまなところへ出向いてもいる。今でこそカズとは別行動が増えたが、それでも現状の把握くらいは出来ているつもりでいる。そんな彼女をして敵の行動は意外、と言えると同時に順当、ともとれるのである。
あとでカズへの報告すべき事が出来た、と同時に今はフィリスの事が優先である。これが戦闘が続いていれば話は別である。まずは戦闘を継続しなければならないが、レイドライバー戦が何度か経験されて久しい今のこの頃になると[人型は人型同士でよろしく]という風潮が出来上がっていた。つまりは作戦行動範囲内に入ってこないのである。そして、例の帝国の新型戦車は航空部隊が押さえてくれていたのでクリス達は少しだけ余裕をもってレイドライバー戦を挑めた、という訳である。そしてその戦闘は終息した。少なくとも周りに敵影は、ない。
であれば次にするのは、動けなくなった僚機の処遇である。通常、動けなくなった時点で自爆処理をするのだが、
――もしも生きているのなら。
それは、半分は自分の為でもある。クリスは三つ巴になっていた味方機もろともマシンガンでハチの巣にしたのだ。上気していた、いやそれよりもっと上の快楽も得ていたともいえる。そして[事後]の処理はしないといけない。
クリスは何度か声を掛けたが応答がない。自発応答がなければ次のステップだ。今回の指揮官機はクリスである。そして指揮官機には僚機をモニタリングする機能が備わっている。これは、パイロットのバイタルはとられていないものの、サブプロセッサーのバイタルなら呼び出せる。そしてある程度の機体全体の損傷状況も把握できる。つまるところのサブプロセッサーが認知できる部分にはアクセスできるのである。
――もしも出来るなら、こんなみじめな私に、どうか……。
祈る気持ちで情報を取得しようとコードを発行する。相手がコード要求に反応すれば、もしかしたらサブプロセッサーは無事なのかも知れない。
そして、それは情報と共に降りてきた。
現在、ゼロエイトの機体は主要機関に深刻な被害あり、自立は困難というものだ。そして、
「少佐殿、でありますか?」
その声は紛れもない、ゼロエイトの声なのだ。
「生きて、いたの?」
恐る恐るクリスが語り掛けると、
「はい、何とか、生きています。ただ自力での行動は不可能です」
それはそうだ、その旨の情報はクリスの機体は取得している。
――問題は、これからどうするか、だ。
「私は間違った決断をしたのかも知れません。もしかしたらより良い方法があったのかも。ですが」
とまで出た言葉に、
「私は貴方を責めたりはしません。それに貴方はそもそも私の上官です、そして我々のするべきことは敵勢力のせん滅、それには犠牲はつきものです」
とゼロエイトに返される。
正論である。ゼロエイトは自分が置かれている状況をしっかりと理解したうえで戦いに挑んだのだ。
「それで、これから私はどうすればよいのでしょうか?」
と追って出てきたその言葉に、
「貴方と、フィリス准尉を助けます。こちらからパイロットのモニタリングは出来ないけど、もしも生きているのであれば」
助けたい、それが上気してしまったクリスの[事後]の取り方なのだ。
全34話予定です




