16.私もろとも、撃ってください!-あぁ、あぁ、私は……-
全34話予定です
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状況としては、クリスが後方で援護している間にフィリスが前進、一方の帝国も一体を前進させてきた。そしてもう一体は、おそらく方角からして随分回り込んだのだろう、ちょうど横手から出てくる形になったのだ。
――この状況では、撃てない。
正確に言えば援護射撃にならない、と言うべきだろう。フィリスの機体に弾を当てないように照準してマシンガンを撃つ。一見すると何気ないように見える。同盟連合の射撃管制はかなり優秀と自負も出来る。だが、相手は接近戦を挑んできたのである。当然、こちらとしては武装の類はマシンガンしかない。それでも相手は距離を詰めた、つまりは近接戦闘用の武装があるというのを示している。
ここまでのクリスの判断はほぼ的確だろう。そして、クリスの前では合計三体のレイドライバーがもう少しでもみ合いになる、そんな状況を醸し出しているのだ。
「クリス少佐、してやられました、援護を」
当然、そんな声も上がる。その悲痛な叫びにクリスだって何発か撃った。それでも相手を始末するには、行動不能にするには至らないのである。
「フィリス准尉、逃げて!」
それが土台無理な相談なのは傍観者であるクリスが一番よく理解している。既に相手との相対距離は十メートルあるかないかだ、そんな距離でレイドライバーという兵器を相手に[逃げて]などというのは不可能に近いレベルである。
事態はクリスの目の前で着々と起こった。敵はナイフのようなものを突き刺してきたのである。恐らくは以前にクラウディアの機体が装備していたものと同等のものであろう。一方のこちらは、と言えば撃ちあいを想定して装備を固めている。なのでリアクティブアーマーを着ているのだが、これは弾丸をはじくという機能の代わりに重量増、つまり重りになり、自身の動きに制限がかかるというのを意味している。そして相手のナイフはリアクティブアーマーの隙間を突けるだろう。
――私は、どうすれば。
クリスは頭の中が白くなるのを感じていた。そんな折、
「クリス少佐、私もろとも、撃ってください!」
そんな無線が入る。
「わ、私が、撃つ?」
思わず声に出る。
「今です、さぁ、私こど行動不能にしてください。そうすれば貴方は助かる。一体は健在で居られます」
と言われなくとも、その計算が出来ないクリスでもない。だが、本当を言えば、
――味方ごと撃つ!?
その一点なのだ。ゆっくりと考えていたいが、そんな躊躇は許されないのもまた事実。思考は生体コンピューターのお陰でスムーズに回っている。だから、
「私はあの時から汚れすぎた。だから、貴方が、撃って……」
という言葉を聞くかどうかのところでクリスは遮蔽から出てマシンガンを撃っていた。射撃管制は大まかにしかしていない。純粋に弾をバラまいたのだ。十数発撃ったところで弾倉が空になる。直ぐに変えの弾倉に入れ替えてまた撃った。
――あぁ、私はまた一つ汚れていくのだわ。こんな私でもご主人様は要らないと言わないだろうか。あぁ、あぁ、私は……。
悦に入っていた。もしかしたらそれは上気を通り越して痙攣していたのかも知れない。
弾丸はそれぞれ三体のレイドライバーに当たっていった。この作戦では、それなりの撃ちあいになるのを見越してか、マシンガンの弾薬のストックはそれなりに持たされている。敵はリアクティブアーマーを着ていないらしく、弾が当たったところからどんどん行動不能になっていく。
クリスは、止めなかった。もうどうにでもなれ、そんな気持ちなのと背後に襲ってくる背徳感からの気持ちよさで満たされていたのだ。だから、持っていた弾丸をほぼ使い切ってしまったのである。
その頃には三体とも動かなくなっていた。
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