15.クリス少佐、自分が活路を開きましょうか?-貴方は先陣を切って出られますか?-
全34話予定です
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クリス達が互いに睨み合って一時間は経っただろうか。その間、散発的に銃弾が飛び交っていたが、互いの陣営も大して被弾する事なく経過していったのだ。
そんな中、
「クリス少佐、自分が活路を開きましょうか?」
そう言ったのはクリスがとっている遮蔽の向こうで岩場に身を潜めているフィリスだ。
――それは……。
クリスでなくともそう思うだろう。クリスは一度、マリアーナを失いかけた状況に上気して悶えてしまっている。そんな過去は当然フィリスは知る由もない。そしてカズと共にトリシャも仲間を犠牲にして悶えたという事実を知っている。その事実、それは人の生き死にに情動を催している、それはトリシャも同じだ、そう言っているのだ。
もしもここでフィリスを先行させれば? おそらく無事では済まないだろう。では自分から行くか? しかしそれは恐ろしいことだ。自死などというのは恐ろしくて考えたこともない。それが恐ろしいからあんなに怖かった男性の罵倒や暴力に敢えて劣情を催すようになったのだから。
しかし、とも思う。この感覚をずっと引きずって生きていくのも悪くないのかな、と。自分は人の死の上に成り立っている。それだけの死が自分の汚点であり、劣情を催すきっかけになるのだ。人の死に上気する、それでも最後の兵士として戦場に立っている。そんな兵器になっても良いのかも知れない。
――私は人の死に悶えながら生きて良いのですか、ご主人様……。
ふとそんな考えが芽生えた。だが、それは上に立つ立場の人間は、気持ちはどうであれ多かれ少なかれ責任というものに向き合う必要はあるのだろう。クリスの場合はたまたま上気という感情に逃げてしまっているだけに過ぎない。
なら。
「貴方は先陣を切って出られますか?」
クリスははっきりとそう問うたのだ。
「もちろん、マスターの命であれば」
現在のマスターは、クリスだ。それは分隊化で出撃する際にカズから直々に言われるのである。脳科学を用いて[刷り込み]を行った者たちにはすべからずそういう命令が出来る。一時的にマスター権限を付与できるのだ。それは裏を返せば[死んで来い]という命令すらできるというのに他ならない。
そして当のフィリス本人が[活路を開こうか?]と言っているのである。
「では私が援護しますので、一ブロックずつ前方に進みましょう」
そうして進軍が始まったのである。
フィリスは雑に動いているわけではない。それは外から見ていて分かる話だ。模擬戦も何度もこなしたのだろう、動き自体は決して悪くない。慎重さも備えたようだ。
スモークグレネードを前方に投げ、そこから二テンポほど遅らせてから遮蔽を出る。案の定、敵は撃ってきたがそこは現代戦においても[目くらまし]という古典的な方法は通用するのだろう。事実フィリスは被弾する事なくクリスの前方にある岩場へと移動した。
――むこうはどうなんだろう?
ふとクリスはそんな事を考える。そして思考はすべてコンピューターへと繋がれ索敵に集中する。すると一体、向こうも移動した形跡がある、と出た。もう一体についてはこちろの移動と重なっているのか、それとも本当に動いていないのか、検知できなかったのだ。
「フィリス准尉、敵も一体移動しています。十分注意を」
と言いつつも遮蔽から身を出してマシンガンを撃つ。向こうからも応戦の弾が飛んでくるのだが、後方の敵が撃っているらしく、こちらには当たらない。
機会を見てはブロックごとに前方移動を繰り返し、気が付けは敵との相対距離は十ブロック程度、距離で言えば百メートルくらいであろうか、そんな距離まで詰めた。そこまで近づけばどんな手段だってとれる。そして相手はそんな手段を選んできた。
――えっ? 二体いる?
敵は対多数戦を仕掛けたのである。
フィリスの近くに敵レイドライバーは二体いたのだ。それが波状になって移動を繰り返していたのである。恐らくは音を消して回りこんだのだろう。わずかこれだけの短期間で駆動系の革新があったのか、それともクリスが見落としていたのか。恐らくは両方であろう、その状況にクリスは焦っていたのだ。
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