12.これでも研究所の所長なんだなぁ-基礎試験はクリアしたよ-
全34話予定です
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カズは引継ぎをアルカテイルの面々としたあと、直ぐに研究所に向かっていた。旧ギリシャの話もある、日本近郊の動向も注視しないといけない、さらに言えば米州のお偉い方のメンツも立てなければならない。そんな立場になった、と改めて痛感してはいるところなのだが、
――これでも研究所の所長なんだなぁ。
そんな事を考えつつ、移動中に米州から回してもらった各資料に目を通しつつ、迂回しつつも研究所に向かう。
カズは准将になってから本当に雑務が増えた。それは彼の立場が関係している。お飾りの准将ではなく、発言力のある准将として振る舞わねばならないのだ。政府と軍の上層部では、折を見て次は少将に、という声もあると聞く。だがそれは些細なことだ。現段階でも十分な発言力を有しているのだから。
そしてカズが研究所に戻らねばならない理由が、
「基礎試験はクリアしたよ」
という一報を受けたからである。
相手はもちろん[襟坂]こと千歳である。彼女には全身義体の試験を任せていた。それがどうやら上手く行った、との知らせを受けたのだ。
もちろん、初めから[これはダメかもな]という内容ではなかった。もしもそうだとしたらまずカズはGOサインを出さなかっただろう。しかし、それまで義手や義足のような義肢開発で積み上げてきた実績、[襟坂]の実力それらを加味して、よしやろうとなったのだから。
「なになにー基礎試験って、これはそのまま実地試験じゃん」
送られてきた資料を手にカズは唸った。
そこにはテミラデの、四人目となる被検体の[その後]が事細かく書かれていのである。
脳核を取り出して専用ケースに収め、生体コンピューターを取り付けた、つまりはサブプロセッサー化したというところまではカズは見ている。カズはそこで[襟坂]にあとを任せてあちら、こちらと奔走しつつも現在ホームである研究所に戻っているのだ。
――まぁ、実際にこの目で見てみたいとは思っているけど。
そんな感想を抱くほどには[襟坂]の中身である自分の妻を信じてはいるのだが。
[帰って来てから正式に話すけど、とりあえず]という見出しで始まったその報告書はそれはもう[実戦に出せるのではないか]と思えるほどに完成されているようだ。
まずは自立した生命活動をしている事。これは基本中の基本だし、これが成り立たないようではそもそも計画自体がスタートはしていない。心臓のある場所を敢えて避け、胸部の上方に生命維持装置を取り付けた、とある。これは実戦に出された際の帰還率の向上を狙っての事だとすぐに分かる。ヘッドショットを避ければ生還できるというのはもう一つ、心臓を一突きでは死なないというのも意味しているのだ。もちろん実戦背出れば防弾チョッキの類は付けるのだが、例えば貫通弾のようなものでピンポイントで心臓を狙撃されても位置を若干ずらしてあるので問題はないという事になる。
次に、全身義体を運用するうえで重要な事柄、つまりは制御系だ。これについては生体コンピューターを使用しつつ、義体側に一基サブコンピューターを搭載して連動させることで解決した、とある。カズとしては脳核に取り付けた生体コンピューターのみで行けるだろうと踏んでいたのでこれは意外といえば意外なのだが、
[生体コンピューターだけでは使用負荷がかかった際にハングアップの可能性が否定できないし、躯体側にもコンピューターを設置した方が何かと便利、かつ安全だから]という注意書きがなされていた。
――確かに。レイドライバーもサブコンピューターを積んでるからな。
現在の第二世代型、一部は第三世代型になったが、全レイドライバーにはサブコンピューターが搭載されている。これはサブプロセッサーの負担軽減というのが大きいのだが、ゼロフォーなどは戦闘時に一部演算を肩代わりさせている、という実際のデータが残っている。それはつまるところ、戦闘時にはコンピューター二台体制を採れるというのに他ならない。それだけ柔軟に運用が可能かつ非常時には自爆、もしくは味方陣地までの撤退にも使用できるという利点も併せ持つ。
問題だったのはここまでなのだ。自立した生命活動と身体行動時における姿勢制御。それさえクリアしてしまえば、今使用している義肢程度の性能は出せるのだから。
現在の同盟連合が保有する義肢技術は帝国と同等、いやそれ以上のものがあるのである。そしてそれを可能にしたのがレイドライバーという兵器の技術である。それは前述の通りだし、事実がそう告げてくれている。
義肢に関して言えばレイリアの両腕をはじめとしてマリアーナだってほぼ半身を義体化している。レベッカに至っては両脚だ。それはもちろん戦闘での負傷というものが原因ではあるものの、現にそれが原因で作戦や生活に支障が出た、という話も聞かない。彼女たちに支給している義肢はもちろん人体との接合部の強度の問題があるから、人間が出せる力以上のものは出力しないようになっている。しかし、それにしたって[敢えて]ブレーキをかけているだけでやろうと思えばそれこそ人間の何倍もの力が出せるのである。
そして。
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