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六話 ピアンテを探そう!

なんやかんやありつつも、ひとまずテリオーンの街へと無事に到着した。


ここは砂漠の中にあったオアシスを中心に作られた街であり、そのためか意外にも国は豊かで人も多く、また貿易も盛んだ。


その証拠に、左を見れば武具屋。右を見ればアイテム屋。他にも宿屋、噴水のある広場なんてモノもあったりして、おまけに娯楽施設や裏路地に行けばちょっと怪しげな露天なんかも……と、ありとあらゆるものがここにはある。


だがその中の何処を、どれだけ探してもピアンテの姿は無かった。


ただ正直に言えば、アイツは成り行きで仲間になったようなもんだし、別に探さなくても良い……とは少し思ったりもしたけど。


ここまで連れて来たのは俺だし、何か変な事に巻き込まれていたりでもしたらそれはあまり気分の良いものではない。そう思って探し続けていたんだ。


でもまあ、百歩譲ってだ。

仮にもしピアンテがそうなってしまっていたとしても、これ以上俺と一緒にいるよりはずっとマシなのかもしれない。


俺が向かう先はその全てが、殆ど地獄と呼んでも過言ではないようなものなんだから。


それがまだ未熟なピアンテなら、尚更に。


彼女を探すうちに、段々とそう思い始めていた俺は。

いつしか『この店の中にいなかったら、ピアンテの捜索は諦めよう』と決意していた。


そんな俺が最後に立ち寄ったのは。


テリオーンの街の裏路地にある、小さな占いの館だった。



扉なんかは無く、大きな一枚の布で覆われているような見た目をした、いかにも『占いの館』っぽいその場所に。


俺はさっと顔だけを入れて中を見回した。

お店の人には悪いけど、俺別に客じゃないからさ、完全なる冷やかしだからさ。


その中は……アロマとでも言ったら良いんだろうか?

心地良く、それでいて何処か不思議な香りが充満していて。


ただ、占いに使用するんだろう魔物の羽根や頭蓋骨、果てはギラギラと輝く水晶なんかもあったりして……それが俺の心をざわつかせる。


落ち着くアロマと妙なアイテム。

差し引きゼロ……いやゴメン、マイナスだ。なので総合的な評価としてはあんまり落ち着ける場所じゃないな。


とか思いながらも、俺はそこにピアンテの姿を探しキョロキョロとしていた。


「あら、お客様ですの?

でしたらそんな所にいないで、中に入って来て下さいませ」


するとお店の人に見つかり、声を掛けられてしまった……まあ、今はお客さんゼロみたいだし、そりゃあ見つかるよね。


ただ、俺もお客様ではないんだよね……


だから俺は申し訳なさそうにして中に入り、占い師であろうその人の前に立って事情を説明する事にした。


「いや、その……ゴメン。

実は占ってもらいに来たんじゃないんだ、ある人を探しててさ」


「あら、そうでしたの?

ふふ、お気になさらないで。この街は広いですから。

私こそ急に引き止めてしまってごめんなさい。


…………あら?貴方様は……?」


だが、それを聞いても占い師の女性は怒る様子も無く、むしろ微笑んで俺を迎え入れてくれた。


真っ直ぐに伸びた、長く青い髪をした女性だ。

というか、多分俺よりも一回りは年下だから、女の子と言った方が良いかもしれない。


だがそれなのに、口調は大人びているのが……良い!


……じゃなくて素敵だ。

これこそ占い師って感じの艶かしさ。と、その中にも可愛らしさがあって、油断するとそのギャップに胸がときめいてしまいそうになる。


そんな彼女が、最後の方に何か言って俺の顔をじーっと見つめ始めたが、それには一体何の意味があるんだろう?


とか思っていたら、突然彼女が動き出した。


「セイントソード様!セイントソード様ですのね!!

あぁ、なんて幸運なのかしら!!私はずっと、ずうっと貴方様にお会いしたいと思ってましたの!!」


だが、次の展開は流石の俺にも予想出来なかった。


先程までの口調はとても大人びていたというのに。

そんな彼女がまるで、少女のような満面の笑みを浮かべながら俺に抱き付いて来るとは。



「……えっ!?じゃあ君は!!」


「ええ、そうですわ!

私はガダニお爺様の孫娘、ティオにございます!!」


先程いきなり抱き付いて来た占い師の娘、ティオの話によると。俺は以前、間接的にではあるがこの子を助けた事があるらしい。


それは魔王討伐の旅を始めたばかりの俺が、最初にこの街を訪れた時の事だ。


当時偶然にもこの辺りに辿り着いた俺は、露天商のガダニという名の爺さんから『魔物に大切な水晶を奪われてしまったから、それを取り返して欲しい』というクエストを受注(?)し。


そして、それを成功させて無事に『魔力大水晶』なるデカい水晶をその爺さんへと返してやったのだが。


何と驚くべき事に。

実は、その爺さんの孫娘こそがこのティオであり。

今占いに使用している水晶がその魔力大水晶だったらしいんだ。


……まあ簡単に言えば。


だからこそティオはずっと感謝していて、願わくば一度俺と会い、その占術で俺の助けとなる事を夢見ていた……と、いう事なんだって。


正直、そこまで言われるとちょっと照れちゃうかな。


まあでも、悪いけど俺は占ってもらいたい事とかは特に無いし、今はやらなくても良いかも。


それに、先を急いでるからね。

……やっぱり、ピアンテの事がどうも心配だからさ。


そういうワケで俺は、ティオにその旨を話してこの占いの館を後にする事に決めた。


「セイントソード様、今紅茶を淹れますから少し待っていて下さいね。ああ勿論、お代なんて入りませんから、ご自宅のようにどうかゆったりと寛いでいって下さいませ」


何だか楽しそうに色々と準備を始めた、彼女には本当悪いけど……


「あ、あのさ、ティオ。

悪いけど、俺そろそろ行かなくちゃ……人探しを続けないといけないからさ」


「え……!?あ、あぁ、そうでしたわね。

セイントソード様は人探しの途中なんですものね……私すっかり舞い上がってしまって、その事が頭から抜け落ちてしまってましたわ……ご、ごめんなさい」


そしたら、すぐにティオは一目で分かる程しょんぼりとしてしまった。


な、何だか物凄く悪い事しちゃった気分だよ……

そうだよね、自分で言うのもアレだけど、彼女の中で俺はヒーローみたいなものだろうしね……


「ですがセイントソード様。

その方の居場所にお心当たりはあるのですか?

いいえ、無いんでしょう?そうでなければ、今までずっと探しているはずありませんもの」


しかも痛い所まで突かれてしまった。


確かにその通りで、俺はピアンテの現在地も分からなければ手掛かりなんてこれっぽっちも無い。


「……仰る通り、です……」


「ふふふ、やっぱり。

なら、今こそ私の出番という事ですわね」


「……え?」


すると、ティオはそんな俺に……


「さ、私の正面にある椅子にお掛けになって、セイントソード様。私が尋ね人の事を占って差し上げますわ!」


自身の得意とする占いを勧めるのだった。


「……そっか。

じゃあお言葉に甘えて、お願いしても良いかな?」


「ええ、お任せください」


という事で、俺はピアンテを探す前に。

ティオにサクッと占ってもらう事に決めたんだ。


だって、たった今俺には『占ってもらいたい事』が出来ちゃったんだからさ。急いではいるんだけど、仕方ないよね?

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