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四話 ダンジョンに入ろう! 2

一瞬、魔物達が怯えたような気がした。


つまり、相変わらず叫び散らかしているピアンテ以外は皆が、その存在が動き出そうとしている事に気が付いているのだろう。


勿論、俺もその事には気付いていた。


出た……裏ボスだ!!

魔物が人語を扱う時点でかなり珍しいし、それにこの強大なオーラ、間違いない!!


先程の興奮を思い出し、また口角だけが上がり始める。この身が戦いを、強い相手を求めているんだ。


……こうしちゃいられない。


だから俺は、この放置プレイを中断してさっさと奥に向かう事を決めた。


でも、ピアンテをこのままにはしておけない。

というか彼女を狙っている大量の魔物も、ついでにピアンテ本人も邪魔でしか無いし、そもそもそんな大声出しながらウロウロされたら集中出来ないったらありゃしない。


「お前ら、少し大人しくしててくれるか……?」


そこで俺は魔物達に向け声を低くしてそう言いながら、背中の剣に手を触れたんだ。


抜きはしない、ちょっと脅かしてやるだけさ。

それだけでもここにいる魔物達ならきっと、俺の実力はすぐに分かるだろうし。


すると、効果はすぐに現れた。

空気が一瞬張り詰めたかと思うと、魔物達は蜘蛛の子を散らすようにして逃げ出して行った。


中にはブルブルと震え出したり。

気絶してしまっている魔物もいる。


そしてピアンテは……マジか、こっちも気絶しちゃってるみたいだ。


しかも今の彼女からは、ほのかに漂うアンモニア臭が……どうやら失禁までしてしまっているらしい。


「あ、ヤベ……」


とは思ったけど、ニオう事以外は正直そうしていてくれると非常に有り難い。近くにいられると守りながら戦わないといけないだろうし、そんなほぼ舐めプみたいなやり方じゃあ、裏ボスに勝てないかもしれないしね。


そう思った俺は……

とりあえずぶっ倒れているピアンテに防御魔法を掛けて、奥へと進んだ。


まあ、専門外だけど大丈夫でしょ。

さっさと倒して来れば良いんだからさ。



そう思っていたんだけど。

俺はなかなかピアンテの元に戻れずにいた。


漸く辿り着いたダンジョンの最奥。

そこにいるはずの裏ボスがいないからだ。


そこは行き止まりになっているから、例え裏ボスが移動したとしても鉢合わせるだろうし、だからこそ余計何故いないのかが分からない。


ただあるのは一つ、大きな魔物の死骸。

いや、もう白骨化しているから正確に言えば大きな魔物の骨、ただそれだけだった。


そんな中で、俺は必死に裏ボスの姿を探し続ける。


……マジで何で?どうして?

本当に何でだよ?殺気とかめちゃ放ってたじゃん!


じゃあもしかして、気のせい?


いやいやいやいや絶対無いって!

俺伊達に魔王倒してないですから!

伊達に英雄とか呼ばれてませんから!

そんくらいは分かりますから!


でもそれなら、本当に何でいないの……?


そう思ってずっと探し続けたけど。

とうとう、タイムリミットがやって来てしまった。


もうそろそろピアンテにかけた魔法が解けてしまうからだ。


ヤバい……でも裏ボスが……


いや、例え現れてもこの時間から戦っていたら間に合わない、か……仕方ない。


そうして、俺はがっくりと肩を落としてピアンテの元に向かった。


さながら、失恋したばかりの男のような足取りでね……



「はぁ……」


「う〜ん、むにゃむにゃ……

さっきから……後頭部が擦れて……

めっちゃ痛い……むにゃむにゃ……」


結局、俺は裏ボスを見つける事もそれと戦う事も出来ないまま、失禁&気絶したピアンテを引きずりながら町へと戻った。


……だから。


「ニンゲン……アイツハ……ヤバイ……

バレナクテ……ヨカッタ……」


そうやって、俺がいなくなるまで。


『ただの死骸』のフリを続けていた、『死の超越龍 ドラゴンゾンビ・ダナトス』には。


もう、二度と会う事は無いかもしれない。


だってその正体を俺は知らないんだから。



でも、まだ全てが終わったワケじゃあない。


何故かって?

フフフ、それはね……


魔王に貰った『極秘!裏ボス情報メモ』には。

まだまだ裏ボスの情報が残されているんだからね!


よし!じゃあ次に行きますか!

そうして、元気とやる気を取り戻した俺はナチャロの町を後にしたんだ。


ええと、そしたら次の裏ボスは……と、その前に。


俺は振り返り、背後で俺をじーっと見つめていたピアンテを見つめ返した。


「…………一応聞くけど、まだ付いて来る気なの?」


すると、それを聞いたピアンテは。


「はい!!もっちろんですよ!!

師匠は私の命の恩人なんですから!!どこまでもついて行きます!!」


……だ、そうです。


いやまあ、確かに古井戸の中では助けたっちゃ助けたけどさ。


あれは何と言うか、俺が勝手に放置プレイして勝手に魔物を追い払った結果だから、何かマッチポンプみたいで恩人って呼ばれると物凄い違和感が……まあ、いっか。


と言うか正直に言うと、『もう好きにしてくれ』って感じなんだよね。


まあ、とにかくそういうワケで。

新たにピアンテを仲間(?)にした俺は、次の目的地へと向けて進み始めたんだ。


「あっ……そう。

じゃ、死なないようにだけ頑張ってね。

俺の目的地はさっきのダンジョンみたいな強い魔物のいる場所ばっかりだと思うからさ」


「任せてください!

例え火の中水の中!何処へだろうとお供します!」


「なるほど、じゃあまた魔物の中に放置したりしても大丈夫そうだね」


「……!?」

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