四十話 また裏ボスを探そう!
な、なんと……まさか、二人がそんな事を考えていただなんて、夢にも思わなかった……!!
いや失礼。正しくは一人か。
ピアンテは多分、お漏らしの事を言ってるだけだし。
……いやピアンテさあ!?
それは君がしょっちゅう漏らすせいで、俺全く悪くないからね!?責任なんて絶対取らないよ!?
……まあ、それはどうでも良くて。
問題はパサレーだ。
っていうか君の言ってる〝あんな姿〟って、例のオムレツ事件(?)のアレだよね!?
〝こんな姿〟っていうのも、シチューセット事件(?)のアレだよね!?ねぇ!?
いやまあ、アレもアレで確かにヤバいけどさ!?
でも責任って……!!それはちょっと展開が早過ぎない!?
それで君は良いの!?
ていうか俺も別にわざとやったんじゃないし!?
……まあ!!まあ良い!!
まあそれはそれで良いんだ!!君の気持ちは分かったからさ!!だからこの際、その事について何も言うつもりは無いよ!!
でも、ねぇ…………今は。
いや、今だけは……
それは、秘密にしておいて欲しかったなぁ……
何故かって?
ハハ……分からないかい?
…………だって。
パサレーがそんな話をしてしまったから。
そう、だからこそ。だからこそだ。
だからこそ、それが原因で…………
俺の肩には今、鬼のような形相を浮かべた魔王の手が置かれているんだからさ。
「ふ〜ん、ありがとパサレー。
お陰でよ〜く分かったわ。
コイツが私達の心を弄んだ、とんでもないクソ野郎だったって事がね……!!」
あぁ!!
つ、遂に魔王がブチギレてしまった……!!
こ、これはヤバい……!!
まだ助かるかな……!?助かるのかな俺は……!?
ま、まあでも!!わざとじゃないし!!
誓ってそうだと言えるし!!
だからきっと!!きっと!!
それをちゃんと話せば、魔王も分かってくれるはず……!!
だ、だよね…………!?
「ま、待ってよ魔王!!
それは別にわざとやったワケじゃな」
「うるさいうるさいうるさいうるさい!!
もう本当に……今日という今日は絶対に許さないんだから!!
セイントソード!!覚悟なさい!!
特訓に特訓を重ねた私の力を見せてあげ……
いいえ!!もうそんなのどうでも良い!!
今すぐぶっ殺してやるんだから!!」
「いやいやいやいや!?
待って!!本当に待ってよ!?
話せば分かる!!話せば分かるって!!」
「うるさい!!死ねぇ!!」
「わぁあああああああ!!」
そして、その後はもう……
「ひぇえええええええ!?」
「ああっ!?ピアンテ様!?
さっきお風呂に入ったばかりだというのに……ま、また私が連れて行かないといけないのか……!?」
ピアンテはまた漏らすし。
「え!?ちょ、ちょっと魔王様……って、あぁああああ!?」
「あぁ!?ケ、ケーキが!?
せ、せっかく作ったのに……!!」
テーブルがひっくり返って何もかも滅茶苦茶になるしで。
もう本当、散々としか言いようが無かったんだよね……
はぁ、どうしてこんな事に……
……え?その後?
まあ色々と大変ではあったけど、誤解は何とか解けたよ。
それと、無事に俺と魔王が交際するっていうのも伝えられてね。ピアンテと、パサレーと、トロール君と、ブラックドラゴン君……皆々、俺達を祝福してくれたよ。
特にあの二匹は、涙を流して喜んでくれたっけな……
まあそんなワケで、俺は魔王城に一つ部屋を貸してもらってさ。
本格的に魔王城が家みたいになって。
ついでにピアンテとパサレーもそこに住む事になって。
で、俺は旅なんて止めて。
魔王とのラブラブな生活をスタートさせて。
はい、めでたしめでたし……
……っていうのは冗談だ。
悪いけど俺の目標はまだ達成されてないからさ。
だから俺は、旅を続けているんだよね。
ただし、今回は一人でだ。
ピアンテとパサレーは魔王城が気に入ったみたいだし。
それに何より、魔王がね……
『聖也!!裏ボス探しの旅は止めないけど、他の女と一緒にいるのはダメよ!!やるなら一人でにしなさいよね!!分かった!?』って、うるさかったからさ。
だからどの道、俺に他の選択肢は無かったんだよね……別に、何でも良いけど。
とまあ、そんなワケで俺は未だに裏ボスを求め、相変わらず国中を巡り歩いているんだ。
それももう、半年くらいはやってるかな?
振り返ってみれば色々な事があったよ……
裏ボスがいないかもう一度探すため、ナチャロの町とテリオーンの街に戻ってみたり。そこでティオに会って、また占ってもらったり。
『極秘!裏ボス情報メモ』もちゃんと活用して。
とある小島そのものが『ザラタン』っていう伝説の魔物だって事で、それを探しに行ったら。
もう、その島は無くなっていたり……
他には、『魔物を操る人魂』みたいな魔物がいるって聞いたから、結構遠くの町にも足を運んでみたんだけど。
それはもう、何処かの少女が倒したとかどうとかで、いなくなった後だったり……
あとは……そうそう、つい最近だと、俺にスキルを与えてくれたあの女神様の所にも行って来たんだ。
ほら、そういう人ってなんか強そうじゃん?
でも謎のパワーみたいなもので、すぐに追い返されちゃったんだけどね……
まあ、とにかく。
そーゆう感じでまだ旅は続いているよ。
ちなみにいうと、それは結構サクサクと進んでいる。
多分、一人だと野宿だろうが何だろうが好きにすれば良いし、女性陣に気を遣わなくて良いというのも大きいからかもしれない。
でも……さっき言った事からも分かるだろうけど。
残念ながら、俺はまだ裏ボスと戦えていないんだよね。
不運が重なっちゃって見つからなかったり。
そもそもいなかったり。いなくなった後だったり。
やっと会えたとしても、それは裏ボスと呼べるレベルじゃなかったりとかしてさ……
…………はぁ。
俺が裏ボスと戦える日は、一体いつになるんだろう?
俺はとある場所を目指しとぼとぼと歩いていた。
その足取りは重く、またゆっくりでもある。
また今日も不発だったせいで、テンションがガタ落ちしているからだ。
……ったく。
何が『太古より封印されし伝説の魔物』だよ。
まあ、間違いじゃあなかったけどさ。
でも封印、解けてないじゃん!現在進行形じゃん!
はぁ……そんなんで戦えるワケないじゃん。
思い出すとどうにも虚しくなり、気が付けば俺は肩までもをがっくりと落としていた。
…………まあ良いや。今日は帰ってもう寝よう。
それで、明日はまた別の裏ボスを探して……
でも、また情報が間違っていたり、嘘だったりして無駄足になったら、どうしようかなぁ…………
ああもう!ダメだダメだ!
今日は全部考えがネガティブな方向に行っちゃってダメダメだ!
もう考えるのヤメ!さっさと帰って寝る!以上!
……という事で、俺は考えるのを止めて歩く事だけに集中した。
そして、そんな俺が帰還すべく向かっているのは……もう分かるかもしれないが、勿論魔王城だ。
最近では行く頻度が高いだとか、最早そういうレベルではなくなり完全に自宅と化している。
まあ、愛する魔王がいるとなれば仕方ないでしょ?
それにピアンテやパサレー、トロール君、ブラックドラゴン君達に会うのも楽しみだからね。
特にピアンテと戦うのは、もう俺の『密かな趣味の一つ』と言っても良い程で、帰宅後には必ず一戦はしているくらいなんだ。
……え?『それってただいじめているだけなんじゃないのか』って?
いやいや、間違ってもそんな事は無いと断言出来るよ?だって、あの子はね……実はあれから毎日、トロール君と一緒に修行しているらしくてさ。
それで、今では上級者と呼んでも良いくらいには強くなっていて……巷では、『大魔道士ピアンテ』なんて呼ばれているって噂もあるくらいなんだ!!
だから俺ともちゃんと勝負出来るくらいではあるんだよ!!
…………三秒くらい、だけどね。
でも、成長したのはピアンテだけじゃないんだ。
パサレーも負けてない……ただ、こっちは別方向の成長だから、勝ち負けとかは決められないんだけど……
まあとにかく。
それが何なのかって言うとね。
彼女はこちらも毎日、ブラックドラゴン君と共にお料理修行に励んでいるみたいで、その料理ったらもう、本当の本当に絶品と言えるくらいなんだ!
そして、そんな彼女もまた『魔王城の三ツ星料理人』なんて人々からは呼ばれているらしくて……
今では一日に五人は、人間が危険を省みずに魔王城へとやって来る程なんだよ。
『頼むから料理を食べさせてくれ!』ってな感じでね。
まあでも、それだと食材不足で俺達があの激ウマ料理を食べられなくなるかもしれないから、中に通した事は無いんだけどさ。
……っていうか、それで思い出したけど。
俺も確か、最近では『魔王城の何とか』みたいな通り名で呼ばれているらしいんだよね。
えーと、何だったかなぁ……??
まあ良いや。忘れるくらいにはどうでも良い通り名だったと思うし。
それより、今は帰って休みたいんだ……
と、そんな時だった。
「おい、そこのお前」
俺を呼び止める者がいたのは。
それは人型の魔物で、まるで鬼のような見た目をしていた。しかも体格はかなり大きく、おまけに筋骨隆々ときている。
これは、戦えばかなりの強敵となるだろう…………そこら辺の人々にとっては。
俺?俺はこれくらい全然大丈夫だ。
というか、いくら強そうとはいえトロール君と比べれば全く手応えが無さそうだし、俺としてはあまり興味が湧いてこないんだよね。
……いや、あのトロール君と比べるのは流石に可哀想か。
まあ良いや。とにかく面倒だし、帰ってもらおう。
と、いう事で俺は敵意剥き出しのその魔物にさっさとお帰り頂くべく。
武器は持ち出さず、動きもせず。
ただそれを睨み付けて威圧するのだった。
それは何故かと言われると……
最初にも言っていた通り、今の俺は色々と面倒臭くなっているからだ。
それに、コイツくらいならこれで充分だからね。
「キミ、俺に何か用なのかい?
無いとは思うけど、もしかして戦いたいんだったら」
「あ、あ……いや何でも無いです!失礼しました!」
ほら、ホントにもう終わっちゃったし。
「……そう、じゃあ俺は行くよ。
あ、もし魔王城に料理を食べに来たってなら、悪いけどそれは無理だよ?こっちにも食費とか食材調達とか、色々と事情があるんだからね?」
「は、はぁ……?」
……まあ、そんなワケで俺は。
すっかりと大人しくなった魔物に『パサレーの料理は食べさせないよ!』とだけ釘を刺し、また歩き出した。
「…………あの威圧感、あのオーラ。
ま、間違いない!!あの男こそ……!!
魔王をも凌ぐ力を持ち、何故か魔王城に棲みついていると噂の……『魔王城の裏ボス』だ!!
一見大した事はなさそうだったが、アレは流石のオレでも勝てないだろうな……」
その際、背後でさっきの魔物が何か呟いていたような気がしたんだけど……
あまりよく聞こえなかったので、そのままにしておいた。
……ちなみに。
それから少し後に開かれた、お茶会で皆の話を聞き。
「そういえば師匠って、世間だと『魔王城の裏ボス』とか呼ばれてるみたいですよ!」
「えっ、そうなのピアンテ?」
「ああソレ、私も聞いた事あるわ。
何でも、国中を歩き回ってるめちゃくちゃ強くて『裏ボス……裏ボス……』が口グセの奴が、魔王城に出入りしている……とかいう、噂話から始まったみたいね」
「魔王も!?……っていうか何ソレ!?
別に口グセとかじゃないんだけど!?」
「あっ、それなら私も街にお買い物をしに行った時聞いたわ〜。
でも、何だか皮肉な話よね〜。本来追い求めてたはずのモノに、気が付けば自分自身がなっていたなんて」
「パ、パサレー……その言い方は何か、ちょっと酷くない……??」
そこで初めて『魔王城の何とか』とだけ記憶していた自身の通り名が、正確には『魔王城の裏ボス』だと、俺は知ったのである。
と、いうワケで。
俺は晴れて裏ボスの称号を得る事になったらしいんだけど。
…………いや、全っ然!!
これっぽっちも嬉しくないわ!!
そもそも、俺はなりたかったんじゃないの!!
探し求めてるだけなの!!戦いたいの!!
そう!!戦いたくて戦いたくて!!
戦いたくて、仕方がないんだよぉおおおおおお!!!
漸く完結です!
お付き合い頂きありがとうございます!
また別の自作でお会いできれば嬉しいです( ´ ▽ ` )マタネ~




