三十八話 ダンジョンのボス(魔王)に挑もう!
このダンジョンのボスであり、同時にラスボスでもある魔王は……
今回は下着姿でもなく、寝癖もなく。
バッチリと準備が完了している状態にて俺達を待ち受けていた。
そして、俺達の姿を目にした魔王は。
玉座の上でニヤリと笑い、ラスボスに相応しき口上を述べて見せる。
「フフフ、よくぞここまで来たわね!!
褒めてやるわ、セイントソー…………」
かと思いきや、それは途中で止まった。
仕方ないから一応、全部聞くつもりではいたんだけど……どうしたんだろう??
とはいえ、今口を挟むと言うのも『空気の読めない奴』みたいで嫌だったし、俺は黙って魔王がまた話し始めるのを待った。
それから待つ事数秒。漸く魔王はその口上を再開した……
のではなく、彼女はまた別の事を話し出した。
「……無視しようかと思ったけど、やっぱり言わせてもらうわ。
ちょっと、アンタ達ねぇ……
人様の城で一体何してんのよ!?
何でピアンテに首輪付けてるのよ!?
何でアンタは女を抱きかかえてるのよ!?
っていうかその女は誰よ!?
あと何か臭うんだけど!?
本当にアンタ達、一体この城に何しに来たの!?
妙なプレイしてるんだったら今すぐ帰りなさいよ!!」
うんうん、なるほど……
どうやら俺達怒られてしまったらしい。
でも確かに、言われてみればとんでもない絵面だ。
一人はお姫様抱っこされてて。
一人は首輪を付けられていて、あと漏らしてもいて。
そして最後の一人に至っては、お姫様抱っこしている張本人かつ首輪&漏らしてる人の飼い主みたいになっているんだもん。
むしろ我が事ながら、『言われてからじゃないと気付かないってのもヤバいよね』と言いたくなるくらいである。
「ま、魔王様違うんです!!
これには深ーい、ワケがあってですね……!!」
すると、それを聞いたピアンテが前に出て言い訳し始めた。
まあ、今回に限っては……いや前回もそうだったかな?とにかく、彼女は悪意があって漏らしたワケではないのだし、言い訳する権利は充分にあると思う。
だが、魔王は無情にも……
「ちょ……くっっっさ!!
ちょ、ちょっとピアンテ!!
それ以上来ないで!!そこまでにしておいて!!」
「え……?…………うぅ……グスッ……
うえ〜ん!!酷いですよ魔王様〜!!うえ〜ん!!うえ〜ん!!」
そんな酷い事を言って、ピアンテを泣かせたばかりか。
「トロール!!トロール!!いるんでしょ!?
いるなら今すぐピアンテをお風呂に連れて行って!!
また部屋が〝アレ〟臭くなったら堪ったものじゃないわ!!」
「はっ!魔王様!!
さあピアンテ様、急いでお風呂へ参りましょう!!
だがそれにしても、また、私なのか…………」
「堪ったものじゃないって……うえ〜ん!!
そんなにいう事ないじゃないですか!?うえ〜ん!!」
トロール君を召喚(?)し、ピアンテを連れ去ってしまったのだ。
これはまさに、『ピアンテは やられてしまった!』と言っても良いだろう……流石魔王だ。
もう、我がパーティの3分の1に当たる戦力を削り取られてしまったのだから……
俺は気が付けば、冷や汗を垂らしてしまっていた。
ちなみに言っておくと、それは魔王にビビったからとかではなく、パサレーを支える両腕がそろそろ限界だったからだ。
まあ、結構序盤の方からお姫様抱っこしてるからね。
流石の俺でも、ちょっとキツくてさ……
などと思っていると魔王の矛先が、今度はそんなパサレーへと向けられた。
「ちょっと!!そこのアンタ!!
アンタも良い加減ソイツから離れなさいよ!!
ブラックドラゴン!!アンタもいるんでしょ!!
いたらソイツを何とかしなさい!!」
そして、次に魔王はブラックドラゴン君を召喚(?)すると……
「はっ!魔王様!!
さあパサレー様、私と共に安全な所へ移動しましよう。そのままではセイントソード様も戦えぬはず……それでは、貴女様も危険に御座います」
「嫌!嫌!私、聖也君から絶対に離れないわ!!
私一人じゃ、どうする事も出来ないんだもの!!私は料理しか、料理しか出来ないのよ……!!」
「なるほど、でしたら私と共に、別室でケーキを作るというのは如何でしょう?」
「え……?アナタも料理、出来るの?」
「ええ、ですが大した腕前では御座いません。
そんな私だからこそ、貴女様のお力添えを頂きたいのですよ……ですからパサレー様、どうか一緒に来ては頂けませんか?」
「…………わ、分かったわ。それなら任せて頂戴。
ちょっと怖いけど、アナタについて行くわ……」
あろう事か、そうしてパサレーをも連れ去ってしまったのだ……!!
な、なんて事だ……これでは殆ど、我がパーティは壊滅状態にあると言っても良い……
どうしたら、どうしたら良いんだ……!!
……って言うのは冗談で。
本当の意味で肩の荷が降りた俺は最後の最後でやっと、多少ではあるが元気を取り戻す事が出来て。
そして、それと時を同じくして。
「はぁ……これでやっと、邪魔者がいなくなったわね……」
魔王もそう言っているように、彼女とも漸く面と向かって話せるようになったのだから。
正直に言えば、結構嬉しかったんだよね。
「魔王も、なんかゴメンね?
色々と騒がしくしちゃってさ……」
「……そんなのは良いの……そんな事はね……」
「そ、そっか。
それじゃあ早速だけど、戦う?」
「いいえ!!そんなの後よ!!
アンタには聞きたい事が山程あるんだから!!」
「え?」
「ねえ!!あの女は一体誰なの!?それとあのプレイは何なのよ!?さあ!!さっさと説明しなさいよこの浮気者!!」
「えぇ……う、浮気者って……」
でも、やっとまともに話せると思っていた魔王は。
何故だかそう言って、未だに激怒していたんだ。
いやまあ、言っている事は分かるんだけど。
でも、浮気者っていうのはちょっとね……別に俺達、付き合ってるワケでもないしさ。
だから俺は、何と言えば良いのか正直よく分からなかったんだよね。
「ええと、あの子はパサレーって言ってね。最近俺達と一緒に旅をするようになった仲間なんだよ?
あとは、えーと……プレイだっけ?
それは別に、そういうワケじゃなくて……
あと浮気者っていうのも……それはちょっと、違うんじゃないかなぁ……??」
それでも、何とかそう説明したんだけど。
「アンタ……アンタは……!!
前に、私の事が大切だって言ってくれたのに……!!
それなのに……なのに、何でアンタは……!!
いつもこう……私を不安にばかりさせるの……!?」
だけど、魔王の耳には俺の声が届いていないらしく。
今の彼女は俯いたまま何かブツブツと呟き、拳を震わせているばかりだった。
「ま、魔王?大丈夫?」
でも、次の瞬間。
「……まあ良いわ。
もう、こうなったら……私がどれだけアンタを想っているかって事、今から直接教えてやるんだから!!」
そう言うと共に、ガバッと顔を上げた魔王は。
凄まじい早さで俺の前にまでやって来ると。
そのまま、自身と俺の唇を重ねて見せるのだった。
もうちょいでラストです…!




