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三十七話 ダンジョン『新生の魔王城』に挑もう! 3

まず最初に事が起こったのは、俺達にトラップが近付いた時だ。


その時も俺は、背後にいる二匹の視線を受け。

やっぱり少々の居心地の悪さを感じていたのだが……


しかし、それで完璧に集中出来ていなかろうが何だろうが、俺はあのセイントソード様であるのだ。道中に潜んでいる罠の存在など、勿論分かっていた。


そして、それは恐らくびっしりと棘の付いた天井が、下を通る者達へと向けて一直線に落下してくるようなものであるのだという事もね。


だから、そのトラップがある少し前で、ピアンテと一緒に立ち止まれば良いかなぁって思ってたんだけど……


何故かそんな俺達よりも前に出て、それどころか罠を発動させ……しかも、あろう事かそれを片手だけで受け止めて見せたのは。


本来、〝そっち側〟であるはずのトロール君であった。


「……えっ?何で?」


俺は思わずそう呟くも、トロール君からは何の返事も無く、彼はただひたすらにそのトラップを凝視し続けていた。


そして、それを傍観しているブラックドラゴン君もまた、何も言わずにただじっとしている……


ちなみに言っておくと。

この時点で俺はまた混乱し始めていたので、もう何も言わなかった。


というか、何も言えなかった。


それから数秒程経った後。

突然、トラップを鷲掴みにしていたトロール君が声を上げた。


「…………おい!!

この罠を仕掛けた者は誰だ!!今すぐ出て来い!!」


どうやら彼は罠の制作者に対して激オコであるらしく、地の底にまで響くような大声でそれを呼び出そうとする。


俺は彼が何故そこまで激怒しているか、これっぽっちも分からなかったが……


すぐに現れた制作者なのであろう魔物に対し、トロール君がした発言によりその意味を漸く理解した。


「お前……これは一体どういう事だ!?いくら何でも棘の本数が多過ぎるだろう!?セイントソード様達が怪我でもしたらどうするつもりだ!?」


そう……トロール君は俺達の身を案じるあまりに、それが脅かされるような罠の設計へと怒りを感じていたのだ。


…………最初に言っておこう。

ありがとう、トロール君。


でも君、間違ってるからね?それで良いんだからね?トラップってそういうもんだからね?


だからそれ以上、罠の制作者さんを虐めないであげて……!!


と、俺が何とか止めに入り。

それで漸く、トロール君の怒りは治まったんだよね……



「うぅ……うぇぇ……し、師匠……」


「え?ピアンテ、何で泣いてるの?」


「それが……さっきので……ビックリしちゃって……」


「…………今日は思ってたよりも早かったなぁ」


ちなみに言っておくと。

トロール君のせいで、ピアンテがまた漏らした。



その次は確か、トラップの一件があってから数分くらいしか経ってないような頃だったと思う。


何とかトロール君を宥めた俺達は、その後も魔王城という名のダンジョンを歩き続けていたんだけど。


突然、少し開けた場所に出たかと思えば。

そこには、それはそれはもう沢山の魔物達が俺達を待ち構えていたんだ。


……流石は魔王城。


その魔物達の中には、ブラックドラゴン君よりも少し小さいくらいのドラゴンや、自身の身の丈よりも大きな斧を持ったミノタウロス。


それに歴戦の強者らしき、体中のあちこちに古傷のあるオークやトロール、ゴブリンなんかもいて……それが強敵揃いである事は、一目見ればすぐにでも分かった。


……まあ俺からすれば、そこまででは無いんだけどね。


でもやっぱり、ダンジョン攻略中に戦うザコ敵としては、充分過ぎる程である事には違い無い。


なら、こっちも手始めの軽い運動としてではあるけど、存分に楽しませてもらうとしようか……!!


そうして、俺がピアンテとパサレーを一旦安全な場所に避難させてから戦おうとしていた時、事は起こったんだ。


それは敵側にいた一匹の、あるリーダーっぽいトロールの発言が発端だった……


「へへへ、よく来たなセイントソード!!ここがお前の墓場だ!!さあお前達!!殺っちまうぞ!!」


ちなみに、その発言とはこのようなものだ。


やや過激ではあるかもしれないけど、それを向けられた俺自身は特に不快だとは思わなかった。


というか、むしろごく当たり前のセリフだと俺は思ったんだよね。だって実際に、俺とそのトロール達とは今から戦うんだからさ。


だけど、それを許さず。

俺達や魔物が動くよりも先に飛び出して来て。


そのトロールへと、詰め寄る者がいたんだ。


そして、その者とは…………そう。

俺達の背後にいたブラックドラゴン君だった。


その時のブラックドラゴン君は普段とは全く違う、鬼のような形相をしていて……


それで、こう言ったんだ。


「お前……今何と言った!?

セイントソード〝様〟だろう!?


それに『殺っちまう』とは何だ!?

失礼ではないか!!せめて敬語を使えこの大馬鹿者が!!」


「うむ、ブラックドラゴンの言う通りだ!!

お前達、セイントソード様には敬意を持って戦わねばならんぞ!!」


それとトロール君も、こんなコト言ってたっけ。


まあさっきも似たような感じだったし、大体予想はしてたけど、ねぇ……


……本当、ありがとね?

色々と気を遣ってくれてさ。


でも、そこまでしなくても良いんだよ?

敵に敬語とか使われると、逆に俺やり辛いよ?


いやまあ、敬語を使うタイプのキャラとかはそれはそれで強そうだけどさ……でもそうじゃないから言ってるんだよ!?


あのトロールとか、どう見てもそっち系じゃないじゃん!?そんなんされたらむしろ気持ち悪くなっちゃうタイプの方じゃん!?


だからブラックドラゴン君……!!

そのトロールを責めるのはやめてあげて……!!


俺怒ってないから!!

何とも思ってないから……!!


……とまあ、そんな感じで。


また俺がブラックドラゴン君を落ち着かせて、何とか彼の怒りは治まったんだけど……


でもその後は、叱られた魔物達がすっかり萎縮しちゃってさ……


戦いなんて、とても出来たものじゃなかったんだよね…………



「セ、セイントソード様!!どうかお覚悟を……!!」


「こ、ここが貴方様の墓場となるやもしれません……!!」


「さあお前達!!今からセイントソード様を殺……殺……ええと……え、永遠の眠りにつかせて差し上げましょう……!!」


「うわぁ、もうめちゃくちゃだよ……

なんか敬語おかしいし、色々言ってるけど全然攻撃して来ないし……


なんというか君達、ホントごめんね?

あんまり気にしなくて良いからね?」


「「「あ……は、はい……スミマセン……」」」


「おぉ……流石師匠です!!

師匠の放つオーラが凄過ぎて、全く敵が攻撃して来ません!!」


「ごめんねピアンテ、ちょっと黙っててもらえる?」


「えっ」



それから先も色々あったんだけど。

でも、トロール君とブラックドラゴン君が厳し過ぎて……


だから正確に言うと。

色々あったはずなんだけど、その色々が無くなっちゃってさ…………


まあ結局の所、俺達は何も出来ないまま。

遂に魔王のいる、玉座の前にまでやって来てしまったんだ。


テンション?勿論爆下がりしたままだよ?

調子はどうかって?それも最悪だよ?


「ハァ…………」


だって俺はこの通り、やる気のカケラも無くなっちゃったから絶不調そのものだし。


「師匠、私魔王様と会う前に一回お風呂に入りたいんですが……」


ピアンテはそろそろ〝アレ〟が渇いてきたからニオうし。


「うぅ……聖也君……

全部終わるまで、絶対私の事離しちゃヤだからね?」


パサレーはパサレーで、ブチギレたトロール君とブラックドラゴン君が余程怖かったのかもう絶対に俺から離れようとはしないし、勿論今もね。


……まあ、もう分かったでしょ?

俺達は今色んな意味で、ラスボスとの再戦なんてとても出来る状態じゃあないんだよね。


でも、そんな俺達とは真逆に……


とうとう最初から最後までついて来た、トロール君とブラックドラゴン君達はまだ張り切ってるみたいだから、どの道魔王とは戦わないといけないんだろうけどさ……


「さあセイントソード様!!いよいよ最後の戦いですね!!」


「我々はここで、セイントソード様方のご健闘をお祈りしております!!」


「「それではどうぞ!!魔王様がお待ちしております!!」」


そして、そんな二匹はやっぱりハイテンションで。

まだ心の準備も出来ていないというのに、勝手に玉座へと続く扉を開け始める……


もう、こうなりゃ自棄ヤケだ。


さっさと倒して、さっさとこのふざけたダンジョン攻略を終わらせてやるとしよう。


そうして、破れかぶれとなった俺は。


二匹に背中を押されるがまま、ピアンテ、パサレーと共に最終決戦の場へと足を踏み入れるのだった…………

♪( ´▽`)

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