三十一話 また、旅に出よう!……三人で!
でもね?ピアンテは泣いてばかりいるけど、良い事もあったんだよ?
例を挙げるとすれば……あれだ。
実は町長が虎野郎とグルだと気付けたのも、彼女のお漏らしがあったお陰なんだ。
何故かって?それはね…………
虎野郎の邸宅にいた使用人達が、ピアンテのお漏らしを『俺達からの拷問』と勘違いして、それで全部洗いざらい吐いてくれたからなんだよ!
今思えば、それは本当に〝全部〟だったな。
町長の不正を暴露した後は、皆揃ってゲロゲロと……ま、汚い話はこれくらいにして。
だからまあ、ピアンテの漏水は有益でもあったのは事実なワケで。
だからこそ、そんな風にして利益を齎してくれた彼女を叱るでもなく怒るでもなく、俺が慰めたのはむしろ自然な事だったんだよね。
「泣かないでピアンテ。
君は〝それ〟でこの町の悪を曝け出しただけじゃなく、〝それ〟で町を救ったんだ。
分かる?君はこの町の英雄なんだよ?
だからそんなに気にする必要は無いし、泣かなくても良いんだ。
皆もきっと分かってるはずさ。
だからピアンテ、いい加減に泣き止んで……」
「って事は私、お漏らしで英雄になったワケですか??…………うわ〜ん!!そんなのヤダ〜!!」
ただあんまり、意味は無かったみたいだけど。
という感じでまあ色々とあったので。
俺達は町長の家に行って最後に残った悪を滅ぼし。
自警団の所へと行っていたピアンテと合流し。
彼女が泣き止まないので一旦宿屋に戻ってお洗濯とお風呂を終え……
そして漸く、パサレーに報告が出来たというワケだ。
あまりにもその展開が早過ぎたためか、彼女は最初こそ信じられないような様子でいたが。
でも、俺達の話によりやっとそれが真実だと分かると、そこで初めて彼女は笑顔を取り戻し、また俺達に向けて太陽のように微笑んでくれた。
そして、俺達はそんなパサレーから大量の料理を振る舞ってもらい。
食べて、飲んで、笑って、喜びを分かち合うという、最高の祝勝会で今回の事件(?)は幕を閉じたのであった。
……っていうのが昨日の話で、今日はその翌朝。
また新たな旅を続けるため、俺達はルボワの町の門前にて最終チェックをしている所だった。
「宿屋のチェックアウト良し。荷物も良し。追加で買った食料も良し。あとピアンテの服は……これもちゃんと乾いてるからヨシ!!
あとは……えーと、何かあったかな?」
「…………あの、師匠」
「ん?どうしたのピアンテ?」
「……私達が良い事をしたっていうのは間違いないと思います。
でもその結果として、あの人……は何してたか分かりませんが、町長がいなくなっちゃったワケじゃないですか?
いえ、町長も悪い人だったんですし、それがダメってワケじゃないんですが……ただ、町を治める人がいなくなって、この町の人達は大丈夫でしょうか?
皆良い人でしたから、それだけがちょっと心配なんです……」
「そっか、それでさっきからボーっとしてたんだ」
だが、これから旅立つというのにピアンテは何処か寂しげな様子だ。
まあ、その気持ちは分からんでもない。
この町の食事は美味しかったし、自然も綺麗だし、あとはもう少し町に活気さえあれば最高と言っても過言ではなかったはず……そう、虎野郎と町長の事さえ無ければ、ココは素晴らしい町であったのだ。
それだけに名残惜しいのだろう。
そして斯く言う俺も、そんな風に思う気持ちは勿論ある。
でも、こればかりは仕方がないのさ……俺にはまだ『裏ボスと戦う』っていう目標が残ってるんだから!!
「まあ確かに、管理者がいないと最初は大変だと思うけどさ……でも、そこまで心配する必要は無いと思うよ。
皆やっと解放されたんだ。きっと明るい未来を目指して頑張ってくれるはずだよ。
っていうか、ピアンテ。
もしここに残りたいなら、残っても良いんだよ?」
「えっ!?いやいや、そんな事は流石にしませんよ!
私は何処までも師匠について行きますから!!」
「そ、そっか……何処までもねぇ……」
という事で俺は、ピアンテにそれだけを確認し。
「よし、それじゃあ行こうか!」
そうしてまた、歩き出した。
ルボワの町を後にして、またいつもの旅路を。
「あ、待って下さいよ師匠〜!!」
ピアンテと。
「フフフ、私旅するのって初めてなの。
何だかワクワクしてきちゃうわね〜」
そしてパサレーの。
これもまた、いつもの三人で一緒に。
「……あれ、三人?」
「あれ!?パサレーさん!?」
「パ、パサレー?どうしてここにいるの?
俺達これから、また旅に出る所なんだけど……?」
「だから、私もそれについて行くのよ。
お料理担当、いた方が良いでしょ?」
いつの間にか我がパーティに入り込んでいた、パサレーは戸惑う俺達に向けてそう答えた。
……いやいやいやいや!!
キミは来ちゃダメでしょ!?故郷だとかお店の事とか、色々あるじゃん!?
そう思い、俺はすかさずこう切り返す。
「いやいやパサレー、君は故郷から離れたくなかったんじゃないの?お店だって、あんな状態でもずっと続けてたんだし……」
「まあ、違うと言えば嘘になるわね。
でも良いの、私はこの愛すべき町を救ってくれた、貴方の役に立ちたいんだもの!!」
「それはまあ、嬉しいけど……
でも、お店はどうするのさ?叔父さんから受け継いだものなんだろう?」
「それも心配無いわ。昨夜、叔父さん宛てに手紙を送っておいたから。
叔父さん、『いつか必ずこの町に戻って来る』って別れる直前まで言ってたから、手紙を見たらきっとすぐに帰って来てくれるはずよ」
「昨夜って……なら届くのは、早くても二日くらいは掛かるんじゃない?」
「大丈夫、この町で一番足の早いポストマンにお願いしておいたから。もしかするともう手紙を見ている頃かも。
その人、狼の獣人でね。
本当に物凄〜く、早いんだから〜」
「へ、へぇ……凄いんだね〜……」
すると彼女は案外、切り替えと根回しが早かったらしく。俺の聞いた二つの問題は既に解決された後だったようだ。
なるほど、まあそれなら一応は納得出来るな……しかし、この獣人。
おっとりしてるだけかと思いきやそれだけではなく、『意外と行動力のあるおっとりさん』だったようだ。
……と、まあそんなワケで。
俺は彼女を拒否する理由がなくなってしまったんだけど。
だが、だがそれでも。
俺がいるとはいえ、それだけで危険の付き纏う冒険を共にする許可など到底与える事は出来ず。
だがしかし、とんでもない料理スキルを持った、しかも恩人の彼女を突き放す事などもっと出来ず。
そしておまけに、俺は首を縦にも横にも振る事が出来ず。
暫くの間じっと黙っているしかなかった……のだが。
そんな俺に、とうとう決意させたのもまたパサレーであった。
「フフフ、ありがとう。
私の事心配してくれてるんでしょ?
でもそんな事気にしなくても良いのよ。
私は私の意思でそうしようって決めたんだから。
私は、これから貴方達と一緒に。
その『うらぼす?』っていうのを探す、旅をしようってね。
それに、貴方言ってくれたじゃない?
『俺が必ず、君をまた笑顔にして見せるよ』って。
……約束、破っちゃヤーよ?セイントソード様?」
そう言って、最後にニコリと微笑んだパサレー。
そして、それを見た俺は……
「…………はぁ、君には敵わないな。
分かった。それじゃあ、今日からよろしくね。
我がパーティのコック長さん?」
遂に、彼女の同行を許可するのだった。
「フフフ、私コック長なんだ?
いきなり大役を任されちゃったわね。
でも頑張るわ、二人共期待してて……そういえば二人共、朝ご飯は食べたの?」
「それが、準備にちょっと手間取っちゃってね、まだ食べてないんだよ」
「なら私の出番ね。任せておいて。
とはいっても、どうしようかしら?
私がこのパーティに加わってから作る初めてのお料理なんだから、少しは豪華にしておきたいわよね?うーん、何を作ろうかしら……?」
「そ、そんなに気を遣わなくても大丈夫だよ?
むしろ君は初めての旅なんだから、最初の方はお店で買ったモノとかでも」
「あ!それなら私、またオムレツが食べたいです!!」
「あら、ピアンテは本当にオムレツが気に入ったのね。分かったわ、楽しみにしててね!」
「ピアンテ……また君はそんな遠慮も無しに……っていうか、受け入れるの早いね……」
そうして、新たにパサレーを加え。
三人となった俺達の旅路は続いてゆく。
(^ω^)




