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二話 最初の町に行こう!

「魔王様!!一体どうしたと言うのですか!?」


「トロールの言う通りです!

セイントソード様がお越しになると知った直後はあんなにも楽しそうに」


「ちょっとやめなさいよ!アイツに聞こえたらどうするの!!」


魔王城の扉の奥から聞こえた、そんな声を背に受けながらも俺はひとまず城を後にし。


今は魔王討伐の際に、最初に訪れた町へと向かっている所だった。


それは勿論、魔王に貰った『極秘!裏ボス情報メモ』を読んだからだ。


(俺が勝手にそう名付けたんだ、これからもそう呼ぶ事にする)


どうやらそれによると、その裏ボスらしき魔物はこの町の外れにある井戸の奥で、まだ見ぬ強敵を待ち続けているらしい。


…………うーん、良いね!!素晴らしい!!

特に『最初の町にいる』っていうのがグッド!!


確かに、今となっては使い古された設定かも知れないけど、でもやっぱり、裏ボスってそういう所にいるもんだよね!!


最高だ!!会うのが楽しみだよ!!


そんな感じでついつい舞い上がってしまった俺は、ますます町へと足を早めて移動していた。


「キャー!!誰か助けて!!」


するとその時だった。

突然、誰かの悲鳴が聞こえたのは。


そこで、俺はすぐさま助けに…………行かなかった。


悪いんだけど、先を急いでるからね。

それに、この辺りの魔物は雑魚の中の雑魚、キングオブザコみたいなものだから、まあ死にはしないだろうし。


だからゴメン、知らない人。

戦えないのなら最悪、他の人にでも助けてもらってね。


というわけで、俺は歩き続けた……が。


そうする度に声は近付き、気配がよりはっきりと感じられるようになり始めた……これはもしや。


どうやら、俺の進行方向に助けを求める誰かさんはいるようだ。


ん〜、まあ。それなら様子だけでも見てみるか。


そう思った俺は、とりあえず声のする方へ行く事にしたんだ。



さっきの場所から少し歩いた所に、助けを求めるその人はいた。


「キャー!!誰かー!!」


金色の長髪に青い目と、安物のローブに身を纏ったその女性は、周囲をキングオブザコ……じゃなくてスライムに囲まれていて。


今は木を背に、必死の形相で杖を振り回しているという所だった。


多分新人の冒険者で、職業は魔法使いかな?

見たところそこまで弱くはなさそうだから、慣れない戦闘に怖気付いたとか、そんな所だと思う。


「あ、あなた冒険者!?

お願い!!手を貸してくれないかしら!!」


そんな彼女は、俺の存在に気が付いたようだ。


「……よし!」


そこで、俺は。


「ココは何も聞こえなかった事にして……行くか!」


また町に向けて歩き始めた。


だって、手を貸すって言ったってあの調子じゃあね。

100%全部俺がやらないといけないじゃん?そんな事してる場合じゃないじゃん?


今は裏ボスに会いたくて会いたくて、ウズウズしてるんだから!!


あ、コレ『新しいゲームを買った帰り道』の感じに凄い似てるかも……めっちゃ興奮する!!


「えぇ!?ちょ、ちょっと待ってよ!?

私このままだと死んじゃうんだけど!?」


とか思っていたのも束の間。

シカトする俺を女は滅茶苦茶引き止めようとし始めた。


『えぇ』って言いたいのはこっちだよ……

全く、俺は急いでるのに……仕方ない。


なら最低限のアドバイスくらいはしてやろうか。


俺は女の方を向いて言った。


「……あのさ、君魔法使いだろ?

だったら振り回してないで、ちゃんとソレ使いなよ。


あと、魔法は雷属性のやつね。

それがスライムの弱点だから」


「え?」


女はぽかんとしたまま何も喋らない。

ついでにスライム達も、俺にビビっているらしくいつの間にかぴくりとも動かなくなっていた。


……これ、今なら余裕で逃げられるんじゃね?

それにアドバイスもちゃんとしたしね、じゃあ大丈夫っしょ!


という事で俺は、動かなくなった女とスライム達を放置してまた歩き出した。


「サ、サンダーボール!!」


数秒後、背後からそのような声と共に空気がびりびりと張り詰める音を聞いた。


ほらね、やっぱり大丈夫だったでしょ?



とにかく、そんなこんなで最初の町ナチャロに到着した。


良く言えば豊かな自然、悪く言えばド田舎。

周囲にいる生物は人よりも鳥の方が多い。

店に並んだ木の棒と木の盾は今の俺なら駄菓子感覚で買えるだろう。


とまあ、町の様子はそんなもので。

久々にこの町を訪れた感想としては『良くも悪くも変わってねえなぁ〜』だった。


まあ良いや、今は懐かしんでる場合じゃない。

俺は井戸を探すべく町の散策を始め…………


ようとしていたんだけど、足に何か纏わりつくものがあった。


「ハァハァ、やっと追い付いたわ……」


それはあのスライム達に襲われていたはずの女だった。


「……わぁあああああ!?」


それに驚いた俺は思わず絶叫する。


叫ぶのなんていつ振りだろう……?

始めて魔物と戦った時くらいか……?


とにかく、恥ずかしいのは確かだ。

俺は引きった顔で女を足から引き剥がした。



「さっきの『スライムが動かなくなった』のって、アナタが魔法で何かやったんでしょ?だったら多分、私よりも腕のある魔法使いって事よね?


実は、そんなアナタにお願いがあるんだけど………願い!私を弟子にしてくれない!?


私、全然魔法が上達しなくて。

そのせいでパーティにも入れてもらえなくて、ずっと一人だったの……だからお願い!私を弟子にして鍛えてはくれないかしら!?


……あ!

それなら、まずは言葉遣いから直さなくちゃよね!


お願いします、師匠!!

どうか私を弟子にして下さい!!」


まるでゾンビのように、俺の足に縋り付いた女の名前はピアンテと言うそうだ。


そんな彼女は俺の足から離れるとすぐにそのような事を言い、さっきから俺の後ろをずーっとついて来ている。


正直言うと、それはただの勘違いだからやめて欲しい……って言うのは何度も説明したんだけど。


でもピアンテは聞く耳を持たないようだし、さっきの事もあってか興奮気味で全然話を聞いてくれないから、そのままにしているってだけなんだ。


とは言え、ずっとそうしているわけにはいかないから、彼女にはそろそろ諦めてもらうとしよう。


まずそもそもとして俺は弟子を取らない主義だし。

ていうかそんな経験無いし。まず職業違うから何教えれば良いかよく分かんないし。


それに……今から行くのは。

ピアンテが一人で入れば、一分も持たないような恐ろしい場所なんだから。


「……あのさ」


目的地に辿り着いた俺は、そこで立ち止まりピアンテに言った。


「何ですか師匠?」


「最後の忠告だけど。

俺は君の師匠にはなれないから、さっさとここから離れて、他を当たった方が良いと思うよ。


これ以上ついて来られると、命の保証が出来ないからさ」


今、俺の目の前には。

禍々しいオーラを放つ大きな古井戸が存在している……


そう。

これこそが裏ボスの潜む町外れの古井戸だ。



そして、その中にいる恐ろしい魔物を。


まさしく裏ボスと呼んで相応しい。

骸と成り果てながらも、今も尚命をその身体に繋ぎ止め、そこに棲まう全ての魔物を恐怖させる巨大なドラゴン……


『死の超越龍 ドラゴンゾンビ・ダナトス』!!


その存在を、俺はまだ知らない。


「ホウ……ニンゲン……ココニ……キタカ……」

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