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二十八話 漸く!裏ボスをぶっ倒してやろう!2

「お前、死にたいのか?」


次に俺がそう言った時には既に、この部屋はむせ返る程の殺気で充満していた。


その原因とは勿論、この俺自身である。


悪いが、もう怒りのメーターが振り切れてしまったんだ。だから殺気こいつの加減は出来ない。


まあ、するつもりも無いけど。


そして、それを聞いた者は皆がすくみ上がり。


「ぁ……ぁ……」


特にその言葉を向けられた張本人である虎野郎に至っては、瞬き一つも出来ずに固まっているばかりだった。


だが……それで許されるような罪なら、俺がここまで激怒するはずもないだろう?


という事で当然、まだ俺の怒りは収まらず。

再びその矛先は虎野郎に向けられる事となった。


「なあ、死にたいのかって聞いてるんだよ俺は!!


本当にふざけた真似しやがって!!お前さっき絶対に許さないとか言ってたけど、それはこっちのセリフだからなこの野郎!!」


そうしてキレている途中、俺は一瞬『川のせせらぎのような音』と『何かが剥がれ落ちるような音』を聞いた。


しかし今の俺にとってそんな事はどうでも良く。

引き続き、虎野郎へと怒りをぶつけまくる。


「俺がどんなにこの時を待ち侘びてたかお前に分かるか!?ずっとずっと楽しみにしてた、待望の裏ボス戦だったんだぞ!?


なのに、なのにお前は……それを行動制限なんかで台無しにしやがって!!


お前もソイツと一緒に戦うんだったらまだ良いよ!!

二対一ってだけだろ?そんなの上等だよ!!


っていうか、制限もある程度なら全然良かったんだよ!!


例えばアイテムだけ使えないとかさ!!

それくらいならむしろ大歓迎だよ!!だって俺アイテム使いまくって勝つとかそういうの求めてないし!!


でも、魔法も技も使えないとか……それは違うだろ!?


今まで培ったもの全部使ってこその裏ボス戦だろ!?

なのに通常攻撃以外何も出来ないってどういう事だよ!?そういう高難易度求めてないんだっつーの!!


なあ!?ここまで言えば分かっただろ!?

俺は『理不尽を高難易度と勘違いしてんじゃねえよ』つってんだよ!!


おい!!聞いてんのか!!…………ねえ、おい!?」


だが……どうやら俺の声は、もうコイツには届いていないようだ。


気が付けば虎野郎は俺の殺気に当てられたのかすっかり戦意を喪失していて。今となってはもう、ただガクブルと震えるだけの子猫と成り果てていたのだから。


「…………ふぅ」


そこで俺は怒鳴るのを止め、一度深呼吸をした。


それは、これ以上コイツには何を言っても無駄だと思ったのが一つ。


あとは、コイツがあまりにもビビり過ぎていてちょっと引いたというか、何というか……


まあそのような理由で、逆に俺の方が冷静にさせられてしまったから……というのが二つ目の理由だ。


もしかして、コレってあれかな?


『自分より慌ててる奴を見ると冷静になる』みたいな現象の、親戚みたいなモノなのかな?


……まあ、例えそうであろうがそうでなかろうが。

『ビビりまくる虎野郎』ってのは俺が作り出したものなんだし。


だからつまり。

コレって、ただの完全なるマッチポンプ的行為でしかないんだけどね……



すると、突然にも俺の目の前でそれは起こった。


何と、驚くべき事に。

虎野郎の身体から、突如として何やら『黒いモヤ』のようなモノが散乱したかと思えば。


いつの間にやら、俺に掛けられていたはずの黒魔術である……行動制限が解除されていたのだ。


「おや!?こ、これは……まさか!?」


だが瞬時に、俺はそのカラクリを理解した。


そうだ。

俺はかの有名なセイントソード様であるのだ。


自分で言うのもアレだが、そんな強過ぎる俺様には色々と耐性も付いている。いや付きまくっている。


だから例え、その効果が行動不能だろうが行動制限だろうが、この俺の前では他者の魔法など全て死にかけのウィルスも同然。そんなものが俺の中でずっと機能し続けられるはずがないのである。


しかも、それに加えて俺に行動制限を掛けた張本人である、アイツ自身が戦う意志をああも完璧に失くしてしまっているのだから。


だからそう……それがいくら黒魔術であろうと。


主人の手助けすら失ったそれは、どう転んでも消滅する……いや、消滅しなければならない運命だったのだ。


…………やった、やったぞ!!

遂にあのそびえ立つクソから解放された!!


これでやっと、やっと心置き無く戦える!!


……戦えるんだ!!念願の裏ボスと!!

ちゃんとした実力で!!全力で!!


いつしか俺の発言終わりにはまた、ビックリマークが増加傾向にあった。


とはいえ、今回のそれは怒りによるものではない。

喜びによるものだ……誰だって、今の俺を見れば一発で分かると思うけど。


まあとにかく、そんな風にして俺はクソ要素からの解放に喜び、通常攻撃以外の選択肢がある事への幸せを噛み締めた。


そして、そうとなればすぐにでも戦わねばと思い。


俺は笑みが溢れそうになるのを何とか堪えながら、再び戦闘準備をするが…………


その時になって初めて。

今の今までフルシカトしてしまっていた、裏ボスこと百魔集合体アグリゲート・ドラシェンの体が……


集合体であるはずのその体がぼろぼろと、崩れ始めている事に気付いた。


「えっ!?な、何で!?」


だが当然と言えばそうだが、俺の問い掛けに裏ボスは答えてくれず。そうしている間にもどんどんと小さく、軽くなりつつある。


というか、このぼろぼろいう音。

さっき聞いた『何かが剥がれ落ちるような音』と同じだ。


マジか、じゃあコイツあの時から〝おこぼれ〟してたのか……でも、本当に何故……


……あ!!も、もしかして!!


虎野郎が戦意喪失して、俺に掛けられた黒魔術も消えたんだから……コイツとの契約?みたいなものもまた消えてしまって……


そして……まさかとは思うが、コイツは……

コイツは今、存在ごと消滅しようとしているのではないか……!?


「ちょ!?ちょっと待って!?

もうちょっと頑張ろうよ!?もうちょっとだけ!!もうちょっとだけで良いからさ!!」


それに気付いた俺は慌てて裏ボスを説得(?)してみるが。


でもやっぱり、それに意味なんてなくて。

というか、そうしているうちにもみるみるコイツは小さくなっていって……


とうとう、残ったのは本体の『フェンリルみたいな奴』だけとなり。


だが、それもすぐにふわりと空に舞い上がったかと思えば。


〝良かった……これであのバケモノと戦わずに済む……〟


そんな言葉を残し、幸せそうな表情で。

そのまま、空高くへと消え去って行ってしまった……


これがいわゆる、昇天というヤツだろうか?


まあ、今となってはそんな事、どうでも良くて。

それを見た俺は、力無く崩れ落ちて。


「さっきの言葉……って事は。

何だよ、アイツもだったのかよ……!!」


泣きながら、そうも呟いて。


そして、それと同時に。


俺にビビり散らかしていたのは。

虎野郎だけではなかった事を知った。

(・∀・)

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