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二十三話 さあ!ぶっ飛ばしに行こう!

「……私もね、お店を閉めたら何処か遠い所に引っ越そうかと思ってるの。


どこにもアテなんて、無いんだけどね……」


最後にそう言ってパサレーは顔を曇らせるも、俺達にそれを見せまいと背を向ける。


だがその直前、彼女の頬を一筋の涙が伝った事を俺は見逃さなかった。


……今の今まではあんなにも快活で、優しかったパサレーにこんな顔をさせやがった犯人が、例の大馬鹿野郎だと思うと何だかムカムカしてくる。


そして、そんな話を聞いた俺達は。


「……パサレー、もう大丈夫。

もう何も心配する必要は無いんだよ。

俺が今から、ソイツぶっ飛ばしてきてやるからさ」


「そうですよパサレーさん!

私と師匠のコンビならどんな相手だってちょちょいのちょいです!」


「まあピアンテはいてもいなくてもあんま変わんないけど……」


「えっ」


「とにかく、そういうワケだからさ。

だからパサレー、少しだけ待っててもらえるかい?


君はお店を閉める必要も無いし。

涙を流さなくても良いんだ。


俺が必ず、君をまた笑顔にして見せるよ」


当然臆する事無く、考えを変える事も無く。

宣言した通り、彼女の力になると決めた。


その理由は勿論、一宿一飯……あ、泊めてもらってはないか。


なら訂正して……美味な一飯の恩義と、その恩人を苦しめる馬鹿野郎がムカついたって言うのもあるけど。


実はもう一つ、きちんとした訳があるんだ。

それはね……


「え……えぇっ!?

だ、ダメよ!!危険過ぎるわ!!


あの怪物は何人もの人達を一瞬にして倒してしまったのよ!?その中には勿論、戦闘職の人だって大勢いたはずなのに……しかも、それを二人でだなんて……」


「フフフ、パサレーさん……それが大丈夫なんですよ!!何たってこのお方は……いや師匠は!!あの有名なセイントソード様ご本人なんですから!!」


「ちょ、ピアンテ。そんな風に言われると恥ずいんだけど……まあ事実ではあるけどさ」


「え!?じゃ、じゃあ貴方が、あの魔王を倒したっていう……??」


「う、うん、まあそんな感じ。

だから心配しないで俺達に任せてよ。


それにね。まあ、これはまだ確定ではないんだけど……例えその話を知っていても、いなくても。


どの道、俺達はソイツの所に行ってたと思うからさ、だからそこまで君が気にする必要は無いんだよね」


「え?そ、それはどうして……??」


「多分だけど、その復活した魔物ってのがね。

俺の探し求めてた、裏ボスでほぼ間違い無いはずだからさ。ほら、ココに書いてあるでしょ?」


「う、『うらぼす』???

裏干しって言いたいのかしら……???」



……そう。

ここまで言えば、もう分かったよね?


俺達がパサレーを助けるもう一つの理由。


それは……『極秘!裏ボス情報メモ』に書かれている奴と、彼女を困らせている元凶が恐らく同じだからなんだ!


まあ、パサレーはあまりよく分かってないみたいだったけど……



店を出てすぐに、俺達は行動を開始した。


パサレーから聞いた例の馬鹿野郎がいるという邸宅に二人で向かい、付近に隠れた俺は剣の手入れをして交戦の準備を。ピアンテはそこに潜り込んで情報収集の真っ最中だ。


ん?情報収集なんてしないでさっさと突っ込めば良いのにって?いやいや、そうも出来ないよ。


万が一の事ではあるけど、もしもその相手が俺でも苦戦するような奴なら対策しておかないといけないからね。特に今回は、失敗は許されないからさ。


……だからこそ、一度宿屋で休憩しようかとも考えたんだけど。


でも、パサレーは今も苦しんでいるのだと思うと、そうするよりもまず先に身体が動いてしまったんだ。


『彼女を苦しめる元凶をぶっ飛ばす』っていう目的のためにね……だから、休憩はその後にたっぷりとさせてもらう事にするよ。


とまあそういうワケで、俺はピアンテが邸宅の中から戻って来るのを待ち続けていたんだ。


すると、何と驚くべき事に、ピアンテが。

ピ、ピ、ピアンテが…………普通に戻って来た!!


追手も無ければ追い掛けられてもいない。

ちゃんと静かに、文字通り『私、偵察して来ましたけど?』みたいな風でこちらへと向かって来る。


それにビビった俺はひとまず、こちらまでやって来た彼女の頬をペタペタと触り、その後にペチペチと叩くという動作を繰り返した。


「ちょ、痛……痛いですって師匠!やめて下さいよ!

もう!酷いじゃないですか!真面目に偵察して来たっていうのに……何でこんな事するんですか!」


だが、ちょっとやり過ぎてしまったようだ。

ピアンテは涙目になりながら俺を非難してくる。


良かった。とりあえず魔法か何かで洗脳されてるとか、操られてるとかそういうワケじゃなさそうだ。


それを知った俺は手を止め、漸く彼女に話しかけた。


「ゴメンゴメン。いやなんというか、ちょっと驚いちゃってさ……っていうかピアンテ、どういうやり方で偵察して来たの?」


「え?やり方ですか?

そうですね……まずは身体強化魔法の応用で耳を強化して、使用人達の話を聞いて敵の居場所を特定するじゃないですか?


その後はこれも水魔法の応用で、それを鏡みたいに使って、本当にそこにターゲットがいるか確認したりしてって感じですけど……」


彼女は自身の偵察方法をするすると、ごく自然な様子で教えてくれた。だがそんなピアンテとは真逆に、俺は更に動揺する。


「マジで!?本当に!?凄いねピアンテ!?

もう一度聞くけど、それマジで言ってる!?凄くない!?ピアンテ凄くない!?」


「…………あの〜師匠、さっきから何をそんなに驚いてるんですか?私、そんな凄い事してます?


これくらいやろうと思えば師匠だって出来ますよね?だったら、そんなに驚く事も無いと思うんですけど……」


「いやーだってさ、正直言うと……

ピアンテは偵察に失敗して、絶対追手とか大勢連れ帰って来るんだろうなぁ……って思ってんだもん俺。


いや本当、絶対そうだと思ってたからびっくりしちゃったんだよね。だから剣の手入れとかもしてたんだし。ほら、ピアンテってそういうキャラじゃん?」


「な……!?し、師匠!?

私の事なんだと思ってるんですか!?


いくら何でも酷すぎます……

う、うぅ……うわ〜ん!!師匠のバカ〜!!」


すると、またやり過ぎてしまったらしく。

今度こそピアンテは泣き出してしまった。


「あっ!ちょ!ちょっとおい、騒ぐなって!

気付かれちゃうから!ゴメン!ゴメンってピアンテ!」


そして、その原因を作ってしまった俺は。

何とか彼女を落ち着かせようと、必死に努力したんだ……


いやまあ、悪いとは思ってるけどさ。

でも流石に驚くじゃん?ピアンテがちゃんと偵察を済ませて来るなんてさ。


だってほら、さっきも言ったけど……ピアンテってそういうキャラだし。

ちょっと日が空いちゃいましたがまた更新していきます!

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