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二十二話 パサレーの悩みを聞こう!

「「ご馳走様でした!!」」


あまりの美味しさに、もりもりと勢い良く料理を食べ進めた俺とピアンテが食べ終わるのはほぼ同時だった。


だが思わず、食べたのは自分自身のクセに『えぇ……終わっちゃったんですか』とすら言ってしまいそうなくらいだ。それ程までに最高の時間だった。


パサレーの調理のお陰で味は勿論、食材もこの町で採れた物を使用しているためか風味も良くて新鮮そのもの。それが最高で無いはずが無いのである。


というワケなので、何度でも言わせてもらおう!!


パサレーの料理の腕は一級品だ!!

この店の料理は最高だった!!


以上が、俺の感想である。


「パサレーさん凄い!凄いですよ!

このオムレツ本当に美味しかったです!ご馳走様でした!」


しかし、俺が絶品料理の余韻に浸っているというのにも関わらず、ピアンテが興奮気味にパサレーへと向けて喋り出した。


……が、それは俺と全く同意見のものであったので俺は何も言わず。ただうんうんと頷き彼女の発言に対して肯定の意を示すのみに留めた。


「フフフ、ありがとう。

そういってもらえると私も作った甲斐があったわ」


「本当に、流石オーナーさんって感じですよ!!

正直最初はちょっと不安でしたが、これならその若さでお店を経営されているのも納得です!!」


「!……いいえ。

そんなに褒められるような人じゃないのよ、私。


このお店はね、親戚の叔父さんから受け継いだものなの。叔父さん、遠くに引っ越しちゃうからって私にこの店を譲ってくれてね。


私はまあ、それを貰い受けたってだけだから……本当はもう少し、側でお料理の勉強をさせてもらいたかったんだけれど、ね……」


だが、そんなピアンテとの会話の最中。

パサレーの顔が一瞬曇ったのを俺は見逃さなかった。


その辺りの事については、あまり触れて欲しくなかったんだろうか……?


まあ多分そうなんだろうし、少し気にはなるけど。

でも、それは心の中に留めておくとしよう。


誰だって一つや二つくらいは、人に話したくない秘密があるはずだからね。


「え?そうなんですか?

なら、叔父さんはどうして」


「ピアンテ、そろそろ行こう。

お腹も一杯になった事だし宿で一眠りしようよ。君も疲れてるだろ?」


「……ああ!そう言えばそうでした!それじゃあ戻りましょうか、師匠!」


そう思った俺はピアンテの言葉を遮って止め、宿屋に戻るよう促す。


「パサレーありがとう。凄く美味しかった。

またすぐにでも来させてもらうよ。それで、オムレツとシチューのセットでいくらだい?」


で、最後にお会計を……と、懐から財布を取り出したのだが。


「…………いいえ。

貴方達はタベルナ・パサレー閉業の日に、最後のお客様としてやって来てくれたんだもの、感謝してもし切れないわ。


だから、それだけで充分。お金なんていらないわ」


何と驚くべき事に、パサレーはそう言って金銭の受け取りを拒否するのだった。


……酷く、悲しい笑みを浮かべながら。


「…………え、ええぇ!?

お店、閉めちゃうんですか!?そんなぁ!?」


それを聞いたピアンテはあまりの驚きにそう叫び。


そして、俺は。


「……ねえパサレー。

それにはきっと、何かワケがあるんだろう?


君が良ければだけど、それを俺達にも教えてはくれないかな?」


パサレーの手に触れ、ひいては彼女の秘密に触れるべくそう言った。


とはいえ、それは俺が心中のみに留めておいたはずの行動だ。だからもしかすると、パサレーはそれを嫌がるかもしれないけど、でも……


でも今度ばかりは、そうせずにはいられなかったんだ。


素晴らしい料理を食べさせてくれた礼に。

その料理を作ってくれた、彼女の力になりたくてさ……



パサレーは俺達に全て話してくれた。

店を閉める理由、この町の現状、何もかもをだ。


でも、まずは順を追って話そう。


昔、俺がこの町に来た事があるとは以前にも話したと思うんだけど……当時のルボワの町は、突如として現れた強力な魔物によって悩まされていてね。


だから、俺がソイツを討伐してやったんだよ。

勿論ソイツ自体は普通に強かったんだろうけど、でも俺の相手じゃ無かった。なんでサクッと倒して見せたよ。


当然人々はそれを喜んでくれて、まあそこまでは良かったんだけど……


何と、つい最近になってから何を思ったのか、それを復活させた馬鹿野郎がいたらしいんだよね。


そして、その大馬鹿野郎の名前は……ごめん。


それは忘れちゃったんだけど……でも、それがどんな奴だったかはパサレーの話を聞いて思い出した。


ソイツはこの町一番の資産家かつ、唯一貴族の階級に属する奴で。まあ、要はお偉いさんってワケだ。


でも、一体何故ソイツがそんな事をしたのか、どうやって復活させたのかとかはパサレーも、それ以外の町民も誰も知らないみたい。


っていうかそんな事、口が裂けても聞けなかったらしいからさ……


だってソイツ、その復活させた魔物を使って人々を自分の命令を聞くよう脅したり、勝手に税金を取ったりとか、とにかく好き勝手し始めたらしいからさ。そりゃあ町民には無理な話だよね。


とはいえ、それをどうにかしようと立ち上がった人々もいたらしいんだけど……残念ながらその魔物には勝てなかったみたい。


何でもその魔物、復活後は以前よりも遥かに強くなってるらしくてさ、魔法どころか普通の攻撃もかなり強力で、人々はあっという間にやられてしまったそうなんだ。


……それで、その馬鹿野郎の独裁政治が始まっちゃって。


ソイツに首を垂れて、このまま苦しい生活を続けるのか。故郷を去るかの二択を迫られているっていうのが、今の町民の現状なんだって。


……で、ここからはパサレーの話なんだけど。

彼女もやはりというべきか、ソイツに悩まされている町民の一人でね。


彼女の叔父さんがこの町を去ってしまったのも、お店を閉めるっていうのも、それが原因だったみたい。


でも、パサレーは叔父さんから譲り受けた、昔から続くこの店をどうしても守りたいっていう気持ちが強かったから。


お客さんが誰も来ない事を知りつつも、こうしてずっと営業を続けていたんだけど……そろそろ限界だったらしくて。


だから、最後に誰か一人でもお客さんが来たら。

その人に自慢の料理を食べてもらって、それで店を閉めようと思っていたそうなんだ。


で、その最後に来た客が俺達だったってワケ。


まあだとしても、無料はやり過ぎだと思うけどね……

またちょっとずつ更新していきます!

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