二十話 ごはんにしよう!
立て看板には、えーと…………
「『ルボワの町』って書いてありますね、師匠」
「何か、聞いた事あるな……いや、絶対聞き覚えがある……あ、じゃあここが目的地か!!」
……俺が今言った通りさ。
こうして俺達は無事、次の目的地であるルボワの町に到着したんだ。
最初は町か村かも忘れていたけど。
気付いた途端に色々と記憶が蘇ってくるのを感じる……そうそう。そうだよ。
確かここは、大きな森の中にある静かな町で。
住民は亜人種の中でも特に獣人が多く、逆に純粋な人間は少ない、秘境のような場所だったんだよね。
しかも、獣人は自分達の作った無精卵やミルクなんかを食材にする事もあって、そのお陰か料理は滅茶苦茶美味しかったはず……
でもどうしてだろう?その〝方面〟の記憶にはあまり良い思い出が無いような気が……まあ、それはともかくとして。
ここは俺の記憶が確かならばそんな町だったと思う。まあ勿論、時の流れで少々変化している部分はあると思うけどね。
一方で、ピアンテはやはりと言うべきかここに来るのは初めてだったらしく、それを知った俺は、彼女にこの町について色々と言って聞かせる……
「なるほど!ここはそういう場所なんですね……!!
それなら師匠!早く宿に行きましょうよ!!で、荷物を預けたら一緒にルボワの町を散策しませんか?
勿論休憩もしたかったんですけど、師匠の話を聞いたら先にこの町を色々と見て回りたくなっちゃいました!!」
するとピアンテは急に目を輝かせ、そんな事を言ってはしゃぎ始めた。どうやら彼女の体力は底無しのようだ。
そして、それを聞いた俺は、『元気だなぁ……』とは思いつつも。
俺自身、久方振りに訪れたこの町を見て回りたいという気持ちはゼロでは無かったので、ここはピアンテの言う通りにすると決めた。
「じゃあ、そうしようか。ピアンテ、まずは何処に行きたいとかある?」
「まずはお料理です!お料理が食べたいです!
だって師匠、ここの料理はめちゃめちゃ美味しいんですよね?」
「うん、確かそうだったはずだよ……とか言ってたら、ちょっとお腹空いてきたな……」
「私もです……ああ、早く食べたいなぁ……」
「よし!じゃあ荷物を預けたら食べ歩きだ!ご当地グルメで長旅の疲れを癒そう!」
「おー!!…………ところで師匠、『ごとーちぐるめ』って何ですか?」
さあ!!という事で始まりました!!
『ルボワの町グルメツアー』でございますが!!
……何と言うか、それは妙な空気感で幕を開けた。
それは何故かと言うと、『この町の廃れ具合が凄かった』からだ。
見渡せば廃墟、廃墟、廃墟……いやゴメン。
それは言い過ぎたけど、でもそう見えるレベルの家は冗談抜きで多く。実際三軒に一つは本当に廃墟だった。
そして人々の往来も少なく、今歩いている道に至っては俺とピアンテの姿しか見当たらない。
勿論『純粋な人間が俺達しかいないってだけで、獣人はそこそこいるよ』とかそういうワケでもなく、マジで俺達だけ、二人っきりだ。
あと一応これも言っておくけど、今まだお昼だからね?深夜じゃないよ?
ランチタイム真っ只中だよ?流石に変でしょ?
……まあ確かに、栄えていると言う程でも無く、それに観光客などもあまり来ないこの町には、以前から何処かうら寂しいような気持ちにさせられた事は記憶している。
だがいくら何でも、ここまででは無かったはずだ。
一体、どうしたんだろう?この町で何かあったのかな?……むしろ、そうじゃなきゃおかしいくらいに廃れてるんだけど?
そんな風に荒んだ町の中を、俺は首を傾げながら歩いていた。
「…………師匠、この町って前からこんな感じだったんですか?何か、凄い寂れてますね……」
隣を歩くピアンテも俺とほぼ同意見のようだ。
彼女もそう思うんだから、やはり……俺の勘違いでは無く、本当にこの町は廃れているんだろう。
「うん……っていうか宿屋もやけにボロかったし、あの時点で何となく妙な感じはしてたんだけど。
正直、まさかここまでとは思わなかったよ。
前はもっと町並みも綺麗で、人も沢山いたんだけどね……」
「まあ、師匠さっきそう言ってましたもんね……というか町がこんな状態で、お店なんてやってるんでしょうか?」
「うーん、何とも言えないなぁ。
今は、どうなんだろう?もしかして、全部閉まってたりとかして……」
「そんなぁ……うぅ、私もうお腹ペコペコですよぉ……」
「……俺も」
しかし、歩けど歩けど何も無く。
文句を言った所で店が地面から生えてくるワケでも無く。
いつしか俺達は、空腹という名の状態異常に犯され、悩まされていった……
でもそんな俺達だからこそ、あの店を見つけられたんだと思う。
「ん……?し、師匠!何か良い匂いがしません!?
多分何処かに、いや近くに、食堂があるかもしれませんよ!!」
「何!?クンクン……なるほど、確かにそうだね……
クンクンクンクン…………ピアンテ!あっちだ!」
「はい!!行ってみましょう〜!!」
空腹のあまり敏感になった嗅覚を頼りに、俺達は誰もいない道を突き進んで行って。
そして遂に、唯一開いていた食堂を見つける事が出来たんだ。
その店は小さな木造の建物に『タベルナ・パサレー』という看板を掲げた、これまた小さな料理店だった。
ただしココも例に漏れずボロく。外観はコメントするなら、『廃墟一歩手前』って感じかな?
物凄く失礼なコト言ってるのは百も承知だけど、事実なんだから仕方がない。
でも、そこから漂ってくる素敵な匂いは……きっと、その評価を覆してくれるに違いないと俺達に確信させるものであったのもまた事実。
だから俺達は、一切の躊躇なくその店の門を叩いた……じゃなくて、戸を叩いたんだ。
はぁ




