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一話 魔王城に行こう!

裏ボス裏ボス……ダメだ。

情報ゼロで全く思い付かない。


まあ良いや、魔王にでも聞いてみよ。

ボスって言うんだから多分魔物だろうし、魔物の王である魔王なら何か知ってるっしょ。


という事で、俺は今この国の最果てにある魔王城に来ている。


ちなみに、そこは昔なんたら辺境伯……の住んでいた場所を魔王が乗っ取ったものらしくて、外観は物凄く立派で高級感満載、そしてめっちゃ広い。


ただ、魔王が乗っ取ってからは、アイツがセンスのカケラも無い銅像とか、これまたナンセンスな自画像とかを飾りまくってるから、色々と台無しではあるんだけど。


……いや、文句を言うのはこれくらいにしてさっさと魔王の所まで行くとしよう。それにアイツ、あんまりそういう事言い過ぎると不貞腐れるし。


「いらっしゃいませ!セイントソード様!」


そんな俺を、魔王の側近達がまるで何処かのお店の店員と間違えてもおかしくはないくらいの良い笑顔と挨拶で迎え入れてくれた。


片方は俺の三倍くらいはありそうなトロールで、もう片方は滅茶苦茶に強そうな見た目をした漆黒のドラゴンなのにだ。


そう思うとちょっと笑いそうになるけど、二人はちゃんと自分の仕事をしてるだけなんだし、我慢我慢。


「やあトロール君、ブラックドラゴン君、いつも悪いね」


だから俺は笑いを堪えながら、いつものように二人に挨拶し、いつものように扉を抜け、そしていつものように魔王のいる玉座へと歩き出した。


……どうしてそんなに魔王城に詳しいのかって?


そりゃあ、週二、三のペースで来てたらね。

むしろ誰でもそうなると思うよ?


まあ確かに、英雄と呼ばれてるはずの俺がそんな頻度で魔王城ここに来てるのは自分でもおかしいと思うんだどさ。


でも、街に行ったら行ったで『セイントソード様!セイントソード様!』って取り囲まれるし、握手すっごいさせられるし、最近はサインなんかも求められるしで……


だから、こっちの方が落ち着くんだよね。

何だか皮肉な話だけどさ。



というわけでほぼ自宅と化している魔王城の中を俺は歩き、玉座の前にまでやって来た。


後はこの扉を開ければ魔王がいるはずだ。

と言うか、さっきからずっと中の方から何かゴソゴソと物音が聞こえるから、絶対いると思う。


「よお魔王、お邪魔してるよ」


そうして俺が扉を開けると、そこにいたのは。


魔王にしては華奢な身体つきで、腰に掛かるくらいの金髪と額から伸びた二本の角と、紫の肌を持った女の子……そう、彼女こそが魔王なのだ。


「あ……あ……」


そんな魔王はベットの上でその身をこれでもかと露出し、口をぱくぱくとさせている。


しかも、俺と目が合った途端、みるみるうちに頬が赤くなり始めた。


「あー、ごめんごめん。

気にしないで続けてよ、それより聞きたい事があってさ……」


どうやらお着替え中だったらしい。


でも、別に魔物の着替えなんて見てもどうって事は無いし、俺は当たり前のように玉座に腰を下ろして寛ぎ始めた……けど。


「あ……あ……アンタは本当に!!

乙女の部屋に入る時はノックしなさいって何回も言ってるでしょうがぁぁぁ!!!」


すぐに追い出されてしまった。


いや、乙女ってガラじゃないと思うんだけど?魔王だよ?アンタ一応、そんな見た目でも魔王なんだからね?



「もう入って来て良いわよ!」


数分後、漸く着替え終わったらしい魔王が部屋の中からそう呼ぶ声を聞き、俺はまた玉座へと戻った。


「あ、紅茶はもう少ししたら部下が持って来ると思うわ。お砂糖は二つで良かったわよね?


あとケーキもあるから、楽しみにしてなさい。

それで?今日は何の用なの?」


すると、今度の魔王は玉座の方に座り直していて、先程とは打って変わって威厳ある姿を俺に見せてくれた。


別に何も、そこまでしなくてもいいのに。

それに寝癖は残ってるから台無しだし、途中から完全に友達みたいになっちゃってるし。


とは思うけど、毎度の事なのでとりあえずスルーさせてもらい、俺は彼女にここに来た目的を説明した。


「あのさ、魔王ってラスボスじゃん?」


「は?らすぼす?最後のボスって事?

まあ、人間から見たらそうなるんじゃない?」


すると、そこで先程のトロール君が紅茶とケーキを持って来てくれた。


俺はトロール君に礼を言い、魔王は困惑しながらも二人でそれを飲み、嗜み、そして話を続ける。


「だよね……でさ、そんな魔王なら裏ボスも知ってるんじゃないかと思って、今日はその事について聞きに来たんだ」


「裏ボス……???

はぁ、また出たわね、『アンタの変な造語』。

毎度毎度、それを解読させられる私の身にもなって欲しいわ」


だが、魔王はその存在どころか、裏ボスという単語すら知らない様子だった。


……まあ確かに、言われてみれば裏ボスって〝あっちの世界の人達〟がそう呼んでるだけだもんね。それを魔王が知ってるはずはないか。


そこで、俺はもう少しそれについて詳しく魔王に解説する……そうだ、その間に軽く説明しておこう。


魔王が言った『アンタの変な造語』とは簡単に言えば、俺が元いた世界の言葉を間違えて口走ったもの、それの総称だ。


例えば『バフ・デバフ』だの、『火力』だの、主にゲームなどで使われるネット用語がそれに当たる。


その他には『納豆』や『ラーメン』なんかもある。

そう言えば、ラーメンの話を聞かせた時魔王は目を輝かせていたっけ。


まあ、それはさておき。

魔王は裏ボスがどんなものなのかを理解したようなので話を戻す事にしよう。


「あーはいはい。なるほどね。

要するに『物凄く強い魔物』でしょ?アンタが探してるのは」


「そうそう、大体そんな感じ。

それで、魔王は裏ボスとかについて何か知ってる?」


「そうねぇ……

知らない事もないけど、そういう奴等とは基本的に交流してないから、今何処にいるかだとか、生きてるのかすらも正直よく分からないわ。馬が合わないんだもの」


「本当の所は?」


そう言って俺は魔王の角をつんつんと触る。


何故かと言うと、その時に角がぴくぴくとしたら嘘をついていて、逆ならば本当の事を言っているからだ。


「いや、まあ正直に言えば。

ほら、そんなのが近くにいたらいつ下克上されるか分からないじゃない……?


だから交流はしてないのよ……ゴメン。

でも、奴等についてあまり知らないのは本当よ」


結果は勿論アウト。

角はぴくぴく動いていたし、現に魔王も正直にそう話したのでコイツが嘘をついていたというのは確定した。


けど、それ以上知らないのは事実らしい。


でも、それでは困る……

そこで俺は一か八か、魔王に頭を下げてある事を頼み込んだ。


「…………あのさ。魔王。

下克上の心配をしている所悪いんだけど。


俺、どうしても強い奴と戦いたいんだ!

だからお願い!何とか裏ボスの情報を教えてはくれないかなぁ……?」


「はぁ!?アンタさっきの話聞いてなかったの!?

無理無理無理無理、無理!そんなの絶対嫌よ!!アンタが奴等に会って、私の居場所がバレたりでもしたらどうするのよ!?」


しかし、魔王には秒で断られてしまった。


だけど、そこで諦める俺じゃない。

と言う事で俺は最終手段を取る事にした。


「…………ふーん。そっか、断るんだ?

じゃあアレ、皆に言いふらしちゃおっかな?」


「え?何よアレって?」


「魔王、さっき着替えてただろ?

その時に見えたんだよね、アレがさぁ」


「だからアレって何よ!?」


「可愛いレースの下着」


「……!?」


「アレ、人里で買って来たヤツだろう?

俺は結構似合ってると思うよ、特に魔王の紫色の身体と、あの白い下着が良いバランスで」


「分かった分かった!!

もう分かったから、それ以上言わないで!!」


こうして、魔王から裏ボスの情報を聞き出す事に成功した俺だったが。


流石にちょっと申し訳ないと思ったので、ケーキのクリームがついたフィルムを魔王にプレゼントする事とした。


……そしたら、すぐに城から蹴り出されてしまった。


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