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十七話 疲れたから寝よう!

ああそれと、一つ言い忘れてたけど。

魔王がコケた時の、あのビリビリっていう音はね。


実は、魔王の下着がとうとうお亡くなりになった時の断末魔みたいなもので……というか、断末魔そのものでさ。


まあ他の人からしたら、『だからどうした』って言う話なのは分かるんだけど……俺達結構大変だったんだよね。


「あぁ……!?ま、魔王様!!」


「ん?何よピアンテ?床の掃除でもしてくれるの?」


「いやまあ、それは私のせいですし、やりますけど……って、そうじゃなくて下着!!」


「下着?」


「破れちゃってます!!今度こそ、もう何も隠せないくらいに……!!」


「え……ひゃあぁあぁあああ!!??

な、何じゃこりゃあああああ!!!」


「何!?どれどれ……」


「ちょっと!アンタは見ようとするな!

ダメダメダメダメ!!それだけは絶対にダメ!!」


「うぐっ!?ちょ、いきなり抱き付くなよ!?苦しい!!苦しいって!!」


「だってこうしないとアンタ絶対見るでしょ!?そうはさせないんだから!!


さあトロール!!一刻も早く私達を浴室に連れて行って頂戴!!このままの状態で!!持ち上げても何しても良いから!!早く!!」


「えぇ!?ま、魔王様……!!小水に触れると言うのは流石の私も…………ブ、ブラックドラゴン!!ここはお前が」


「悪いなトロール。俺の爪では皆を傷付けてしまうだろうし、まずそもそもとして、俺は今から入浴の準備をしなくてはならないんだ。


それに、魔王様に頼まれたのはお前だろう?

ならば俺の出る幕は無い……後は任せたぞ!」


「な……!?こ、この裏切り者が!!

あの時に交わした兄弟の誓いを忘れたか!?」


とまあ、そんな感じで浴室までずっと魔王に抱き付かれてたり。珍しくトロール君とブラックドラゴン君が喧嘩を始めちゃったりしてさ。


流石の俺も、もう疲れちゃったよ……



さっきも言ったけど、俺もう疲れちゃったからさ。


お風呂に入り終わって、着替えて。

それで魔王の部屋に戻ったら、まだ誰も来る気配が無かったから少し仮眠を取る事にしたんだ。


……魔王のベッドでね。

別に変な目的があるワケじゃないよ?


こうすれば、魔王が来たらキレながら叩き起こしてくれるだろうから、その後に出て来るだろう紅茶やケーキを食いっぱぐれる心配が無いんだよね。


俺って頭良くない?


ま、そういう事だから、おやすみ〜…………



仮眠中の俺しかいない、魔王の部屋。


そこに入って来た最初の人物……いや、魔物は。

ブラックドラゴン君だった。


ブラックドラゴン君のずしずしと鳴る、重厚感ある足音と共にカラカラと回る滑車のような音も聞こえて来る。なるほど、今日の配膳とお料理当番は彼であるようだ。


っていうか、彼クラスの魔物に配膳をさせるなんて、魔王はそれで良いと思ってるのかな?


まあでも、ブラックドラゴン君は意外と手先が器用でケーキ作りの腕前も一級品だし、それで止められると非常に困るから、俺は何も言わないけどね。


ついでに言うと、今起き上がってケーキを食べるつもりも無い。


そんな事したら魔王がまたブチギレるからさ……


「はぁ〜良いお湯だったわ!!

さっきまでは最悪の気分だったけど、今は最高よ!!」


とか何とか言っていたら、ご本人が登場したみたいだ。


現在はご機嫌な様子だが、どうせ今の俺を見たらまた怒り出すんだろうな……罪悪感?いやそーゆうのは特に無いよ?


「あらブラックドラゴン、もう部屋に居たのね」


「ええ。皆様をお待たせするワケにはいきませんから」


「トロールは何処に行ったの?アイツとアンタに話があったんだけど」


「トロールは今、自室で魔王様のパン……肌着を縫い直しているはずです。魔王様のご用件は後で私の方から伝えておきましょう。ところで魔王様、ピアンテ様はご一緒ではないのですか?」


「あー、アイツはまだ浴室にいるわ。

何でも、『アレ』が服に染み付いちゃったから、しっかり手で擦った後でお洗濯したいんですって……」


「…………それで思い出したのですが。

ピアンテ様の『アレ』、ちゃんと掃除しておきましたよ……」


何っ!?配膳当番が掃除もしただって!?衛生面は大丈夫なのか!?


それを聞いた俺は一瞬飛び起きそうになったが、でもまあ『ブラックドラゴン君ならそんなヘマはしないだろう』という結論に至り、眠りを再開する……別にフラグとかじゃないからね!?


「ご、ご苦労様……アンタ達には褒美を用意するわ……話ってのはその事よ。トロールにも伝えておいてくれると助かるわ」


「承知致しました」


と、そこで魔王の近付く気配がした。

どうやら俺の存在に気が付いたらしい。


「コイツ……よく他人様のベッドでこうもぐっすりと眠れるものね……」


「ううん……魔王に抱き付かれた時……

何か太ももに……モサモサしたのが当たって……嫌だったなぁ……」


「〝今なら私でもコイツの事殺せるわよね?〟」


「落ち着いて下さい魔王様!!これ以上やると城が壊れてしまいます!!それにほら、セイントソード様の今の発言はただの寝言ですから!!」


「…………ちっ」


すると彼女は俺の寝言にブチギレ、再び先程のような凄まじい殺気を一瞬にして身に纏った……


が、ブラックドラゴン君の呼び掛けにより何とか落ち着いたようだ……まあ寝言だからね?そりゃあ仕方ないね?俺悪く無いよね?ね?


と、言う事でひとまず場は収まったが。

魔王の視線がまだ俺に向けられているのを感じる。


やっぱり怒ってるのかな……?

まあ仮にもしそうなんだとしても、それでも俺は、起こされるまではこうしていると決めたんだ。


どうせ今起きても、起きなくても。

文句を言われるか軽くシバかれるのは確定なんだからね。それならまだ眠り続けた方がお得ってものさ。


……そう思っていたんだけど。


魔王はなかなか俺を叩き起こそうとはせず、それどころか今度は妙に落ち着いた様子で、いつの間にか枕元に立っていて。


そして、ただ俺を見つめているばかりだった。

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