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十二話 さあ裏ボスと戦おう!!

俺は息を切らして扉の先にあった階段を駆け上がり、その少し後からピアンテが必死について来ている。


その場所の壁も、段の一つ一つも。

見れば一瞬で分かる程古く、ダンジョンよりもこちらの方が遥か昔から存在していた事は明白だった。


でも、それなのに。

ここにある全ては、何もかもが傷一つ無く造られた当時からそのままなのであろう姿形を残している。


恐らく、魔物達が一匹も寄りつこうとしなかったからだろう……


たった一匹、裏ボスを除いて。


……そんな風に、この場所を己が自由にしているその魔物は、一体どんな奴なんだろう?


どうやって戦うんだろう?

そして、どんな方法で俺を楽しませてくれるんだろう?


推察すればする程テンションが上がってくる。

階段を駆け上がる足の回転がますます早まるのを俺は感じていた。


それはもう、ピアンテを置き去りにするくらいだ。

これもまた一種の放置プレイと言えるかもしれない……まあ、それはともかくとして。


階段の最後にあった扉の前にまで辿り着いた俺はそこで漸く立ち止まった。


にも関わらず、「はぁ、はぁ」、「し、師匠〜!」という声と共に、まだカツカツと段を蹴る音が聞こえているのは勿論ピアンテが俺を追いかけて来ているからだ。


でも、そんな彼女を無視して俺は扉を開けて中に入った……すると。


そこは行き止まりで、かつ大きな一つの部屋になっていて、中にはただ一つだけ。


巨大で禍々しい……スロットマシン?

そんなモノが中央に置かれていたんだ。


そして、それを見た俺は。


「……!?」


驚愕すると共に、頭を抱える事となった。



「ヤバイ……キヤガッタ……ヤバイ……」


俺が今もの凄ーく悩んでいる最中だと言うのに、誰かがそうぶつぶつと呟くような声が聞こえてくる……多分ピアンテだろう。


だが、俺はまたもやそれを無視して床に胡座あぐらをかいて座り、考えに考えを重ねていた。


「ハァ、ハァ、やっと追い着きましたよ師匠……って、何をそんなに悩んでるんですか?」


すると、そこで漸くピアンテが俺の所にまでやって来た……あれ?じゃあさっきのは誰の声だったんだろう?


「コイツハ……弱イナ。デモ、アイツハダメダ……」


とか思っているとまた聞こえてきた。


けどもう訳が分からないし、というかそれどころではないので次からは無視する事としよう。


という事で俺はその声に聞こえないフリをしつつ、ピアンテの問いに返事をした。


「いやぁ、実はさ……ここにスロットマシンがあるだろ?」


「まあ、はい、ありますね。

随分と古いみたいですけど、ただのスロットマシンが……それで?」


「いやいや、コイツは〝ただの〟スロットマシンじゃなくて間違い無くミミック系統のモンスターだよ。ここにいるっていう裏ボスってのもコイツの事だと思う」


「え、えぇ!?

じゃあ、私達は今からコレと戦うんですか……!?」


「……!!ヤバイ……バレテル……ヤバイ……」


「うん、まあそうしようと思ってるんだけどさ……」


「……ヤダ……ヤメテ……ヤメテ……」


「ん?今何か聞こえませんでした?」


「そうだね……ま、今はそんな事どうでも良いんだ。

問題はコイツがどうも見た所『めんどくさいタイプの敵』っぽくてさ、もしそうなら対策しなくちゃならないから、すぐに戦うかどうか悩んでたんだよ」


「めんどくさいタイプ、ですか?」


「うん。例えばだけど。

真っ先に思いつくのは、スロットにちなんでコイツが『ギャンブル要素のある敵』だったりする可能性だね。


例を挙げると、スロットで揃えた絵柄によってこっち側を状態異常にしてくるとか、何かしらの攻撃をしてくるとか、自分の能力を上昇させるとか……まあそんな感じかな?」


「ア、ハイ……大体合ッテマス……ッテカコイツ、良ク分カッタナ……」


「また変な声が……」


「……まあ、無視して続けるけど。

それでもし、そんな要素が運悪く噛み合っちゃったら流石の俺も苦戦するかもしれないって思うと、どうも踏ん切りがつかなくてね……ピアンテはどう思う?」


「そうですねぇ……まあ確かに、そういう厄介な呪文とか魔法とかって確実に防げるとは限りませんから、ちょっと心配ではありますよね」


「そうそうソレ!それなんだよ!

俺ですら100%防げるワケじゃないからさ、何千回に一回って確率だけど、喰らっちゃう可能性はゼロじゃないんだよ!


だから余計に悩んじゃってさ……せっかくの裏ボス戦で何も出来ないどころか、そんなんでやられちゃったりしたら気分悪いじゃん?ムカつくじゃん?万が一の心配なのは分かるけど不安じゃん?」


「なら、やっぱり一旦街に戻った方が良いんじゃないですかね?」


「……!!コイツ弱イクセ二、良イ事イウジャン!!

ソウダヨ頼ム!頼ムカラ帰ッテ……帰ッテ……!!」


「うーん、でもなぁ……」


「イヤ、ソコデ悩ムナヨ!!

帰レ!!モウ帰レヨ!!絶対ソッチノ方ガ良イジャン!!」


「せっかく会えた裏ボスですし、そんなに不安がってたら台無しになっちゃうと思いますよ。だからやっぱり戻った方が良いですって!」


「ソウダソウダ!」


「うーん、それはまあ一理あるんだけど……

でもなぁ……うーん……うーん……」


そして、そんな二人(?)のアドバイスを聞いた俺は。


俺は、俺は…………


ピアンテの言う通り、一度街に戻って準備を整える事を決めた。


「よし分かった!ピアンテの言う通りにするか!

それじゃあピアンテ!街に戻るよ!」


「良かった……これでやっと着替えられる……さっきからぐしょぐしょで気持ち悪かったのよね……」


「ん?何か言った?」


「いえ何でもありません!さあ師匠、行きましょう!!」



……ていうか、あの謎の声さあ。


なんかもうほぼ、『私が裏ボスです!』って明かしてるも同然の事ばっかり喋ってたような気がするんだけど、気のせいかな?


……いや、そんなワケないか。

ミミックが喋る所なんて見た事ないし。


もし本当にそれが出来る奴がいたんだとしても、そんな奴はそれこそ『裏ボス』くらいでしょ!


あ、でもそうなるとやっぱり……


まあ良いや、ここでいくら考えても仕方ないし。

それはまたここに戻って来てから考えるとしよう。



「……………イナクナッタナ。

ハァ、タスカッタ……ハヤク逃ゲヨ!」


まあその時にはもう、スロットマシンは影も形も無くなっていて。


俺はそんな事を考える余裕なんて無かったんだけどね……

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