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九話 ピアンテを尾行しよう! 2

数分後、遂にその瞬間は訪れた。


ぽっちゃりは体力が。ガリガリは魔力が。

そして赤髪イケメンは心が折れたのか、洗い息をしたまま動かなくなった。


だが、それで魔物達が諦めてくれるという事は勿論無く、四人は瞬く間に囲まれてしまう。


さて、問題はここからだ。

コイツらはどうする……?


俺は様子見を続ける。

ただし、いつでも助けられるように準備だけはしておくけどね。


……そんな時だった。

突然赤髪イケメンが動き出したかと思えば。


何と、ピアンテを魔物達の方へと蹴り飛ばしたんだ。


「きゃ!!……な、何するのよ!?」


「へへ、悪いなねーちゃん。

アンタには囮になってもらうぜ。


ま、元からその予定だったんだけどな……おいお前ら!!今のうちに宝を探すぞ!!」


驚くピアンテを前に、赤髪野郎はそんな事を暴露し、ぽっちゃり、ガリガリと共に逃走を図る……


「そ、そんな……!!」


そして、取り残された彼女の顔は可哀想な事にも、みるみるうちに青くなっていった。


「……はぁ、ツーアウトって所かな」


だけど、俺はまだ動くつもりは無い。


ま、正直こうなる事は予想済みだったからね。

あともう少し、もう少しだけ見守るつもりだよ。


という事で、俺は様子見を続ける……


すると、天罰だろうか。

魔物達はピアンテではなく、そんな三人の方をターゲットとして狙う事を決めたようだ。


そうして再び囲まれる三人……

その時に彼等が見せてくれたのは。


「仕方ねえか……おらっ!!」


「うぐっ……!?あ、アニキ……!?」


「悪いなゲリエ。化けて出て来るんじゃねえぞ!」


今度は体力の尽きたぽっちゃりを生贄にして、ガリガリと赤髪の二人で目的を達成しようという、追い詰められた人間の醜い選択だった。


「あ、アニキ!アステッド!

待ってくれよ……ハァ、ハァ……!!」


だが、ゲリエと呼ばれたぽっちゃりの声などまるで無視して二人は走り出す。


恐らく、アステッドがあのガリガリで、アニキと呼ばれているのが赤髪なんだろう。


……まあ、そんな事はどうでも良いや。

俺の前でスリーアウトを決めてしまったアイツらの事なんて、覚えておく必要すらも無いんだから。


さてと、それじゃ行くとしようか。


「……ハヤクコイ、コイ……

ギャンブルダ……戦イダ……ヒャハハハハハハハ!!」


その時、何者かの声が聞こえたような気がするが……まあ『気がする』だけだし、放っておく事にしよう。


じゃあ、改めて……行動開始だ!



確かアニキと……アスベスト、だったかな?


ぽっちゃりとピアンテを置いて逃げ出したその二人は、とことん運に見放されているみたいだ。


だって、二人は早速魔物達に囲まれてしまったんだから……まあ運と言うか、急に動くのが魔物達を刺激しちゃってるんだろうね。良い加減その事に気が付かないのかな?


でも、絶対絶滅のピンチだっていう時に冷静でなんていられないか。


じゃあ仕方ない、そこから助け出してあげるよ。


そうして壁際から離れて通路の中央に立った俺は。


そこからクラウチングスタートをしてすぐに走り出し、ピアンテを。ぽっちゃりを。最後にはガリガリと赤髪をも光のような速度で追い越すと。


光の一閃(ル・スラッシュ)


その背後にいた魔物達を一掃…………


出来なかった。

というか、『やっぱりダメだった』って言った方が正しいかな?


アンデッド系の魔物は空に消えるようにして行方を晦まし、爬虫類、両生類のような奴等は水中に飛び込んでって感じで、魔物達が速攻で逃げて行っちゃったからさ。


いやもう本当、ずっとこうなのよ。

ちょっと本気を出すとすぐ魔物達が怯えちゃってさぁ……


ちなみに、相手が強ければ強い程こうなる確率は上がるんだ。多分そういう奴は知能も高いからなんだろうね。


いや、本当困っちゃうよ。

まあ、だからこそ裏ボスを探してるワケなんだけどね。


……って、まあそれは良いや。

今は裏ボスとかは一旦置いといて、あの三人……いや、赤髪野郎に〝話〟があるからさ。


そんな俺が背後を振り返ると、やはりそこにいたはずの魔物達もすっかりいなくなっていて。


「し、師匠!?なんでここに……!?」


ピアンテはやっぱり騒ぎ。


「スゲェ、あんなに苦労させられた魔物達が一瞬で……」


ぽっちゃりの方は驚き。


「アニキ……今のは……」


「ああ、恐らくアイツが……いや、間違い無い」


ガリガリと赤髪野郎は何かボソボソと呟き。


「…………コイツハ、ヤバイ!!

コイツハ来ルナヨ……頼ムカラ来ルナヨ……コナイデ……」


あと、さっきも聞いたような感じの声も何だか怯えているようで……って、アレ?こんな奴いたっけ?


……とにかく。

残された四人もたった今俺の存在に気が付き、皆が驚いている様子だった。


けどそんな事は気にしない。いつもの事だし。

だから俺はいつもの調子のまま、そんな四人へと近付いて行った。


「……アンタ理由は分からねえが、俺達を助けに来てくれたのかい?」


最初に声を掛けてきたのは赤髪野郎だった。

まあ、腐ってもある程度の実力者なのは事実なんだし、この中では一番肝が据わっているという事だろうか。


奴は手を胸の辺りにまで上げると、次にそれを前に差し出し、すしざ……もとい、俺を歓迎するような仕草までして見せる。


対して俺は、少しイライラしていたと言う事もあってそれを無視していた……が。


「それにしてもアンタ凄えな!!

どうだい、アンタ俺達と一緒に……」


続いてそんなセリフが奴の口から飛び出すと、とうとう我慢出来なくなり。


俺はその言葉を遮り、赤髪野郎へとこう言ってやった。


「絶対に嫌だね!!途中で仲間を見捨てる奴なんかと誰が一緒に旅なんてするかよ!!


それに今の俺は、お前達にとっては英雄ヒーローじゃなく新たなる敵(ニューチャレンジャー)だ!!上には上がいるって事を今からたっぷりと教えてやるから覚悟するんだな!!」


「…………へっ!言ってくれるぜ!

ならやってやろうじゃねえか!覚悟が必要なのはどっちだろうな!!」


「アニキ!?本気ですか!?」


「当たり前だ、俺が負けるワケねえだろ?

それに、最悪の場合はアステッド、お前が背後からでも奴に魔法を当ててくれさえすればそれで終わる話じゃねえか」


そうして剣を手にした俺に、赤髪野郎はその誘いを受け入れ臨戦体勢となった……


別に、俺はそれを愚かな行為だと笑うつもりは無い。


何故ならばそれは、確かに慢心と知識不足から来る行動とは言え、俺に刃を向ける者なんてここ数年では一人もいなかったんだから。


……これは、久々に楽しめそうだ。

一瞬とは言え、戦う事それ自体が久し振りだからさ。


ただ、あくまでもこれは『戦い』であって『殺し合い』ではないから、その事をちゃんと覚えておかなくちゃいけないっていう制約付きではあるんだけどね。


さて、それじゃあ……ん?


「……!?し、師匠!!

そのたっぷりと教えてやる相手には、私も含まれているんでしょうか!?」


「あ、いや……ピアンテには何もしないから、じっとしてて!」


…………ピアンテのせいでイマイチ締まらないけど。


とにかく、始めるとしようか。

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