めんどくさがり令嬢の、めんどくさライフ 5
ライオットは、この1週間を振り返り、どうして月の日と金の日に、コーシャン侯爵家のマルガリータ嬢が。火の日と木の日には、スペクト侯爵家のキャサリン嬢が来るのかと、頭を抱えていた。更に、土の日に至っては、なぜか2人が揃って来たり、時間差で来たりしていて。おちおち、鍛錬もできない状態であった。
「・・・・どうして、侯爵家の令嬢が、俺の公務を知っているんだ」
「どうして、と言われましても。ライオット殿下のスケジュールは、休暇に中てている日以外は、公表されていますから」
「・・・・・いつ休憩をするとか、昼はどの時間にとるか。好んでいる飲み物とか、食べ物とかもか?」
「それはぁ・・・・・。そこまで、詳しくは公表していませんね」
テンがお茶を出して、答える。ライオットは、カップを持つと飲んだ。
「・・・・誰かが、令嬢たちに入れ知恵をした。と考えるのは?」
「あり得るかもしれませんが。どなたが、入れ知恵をしたのかまでは、解かりかねますね」
しれっと返してくるテンを睨み、ライオットは思いっきり溜め息を吐きつつ、背もたれにもたれて天井を見る。
「はぁ~~~~・・・・・・。・・・・・アンジーか」
「お答えできかねます。殿下が、なにかしらアンにしたのではないですか?」
「なにもしてないっ。・・・・というかっ、呼び方がムカつくっ」
「・・・・俺は、アンからアンと呼んでいいと言われていますので。それと、あんまりがつがつ行っていると、アンに逃げられますよ」
「・・・・・否定できんっ。だがっ、そうでもしないと、アンジーはどこにでも行ってしまいそうだろう!?」
「めんどくさいことが、大っ嫌いですからねぇ。アンは。皇族に嫁ぐなど、とてつもなくめんどくさくて嫌なことでしょうねぇ・・・・・」
「テン・・・・。お前は、俺とアンジーとどっちの味方なんだ?」
「そうですね。どちらかと言えば、アンですね」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。」
テンに、味方にするのはアンジェリーナ。と言われて、ライオットはムスッとして天井を睨みつけていた。
アンジェリーナは、ここ1週間ほどのライオットの情報を聴いて、くすくす笑っていた。
「くすくす。・・・・ふっふっふ。これで、ライ様が、どちらかのご令嬢と婚約してくだされればっ。私はっ、晴れて自由になれますわ!! めんどくさい、社交界とか。めんどくさい、外交とかっ。めんどくさい、めんどくさいっ、財務処理とかっ。しなくて済むのですからっ」
こうもうまくいくとは思っていなかったアンジェリーナは、正直、このままことがつつがなく進むと疑っておらず。ベッドにダイブすると、枕を抱えて笑い出す。ティーファは、このままライオット殿下が済ませる訳ないですのに・・・・。と思いつつ、なにも云わずに控えていた。
「ねぇっ。ティーファ! わたくしも、国外逃亡の準備を進めないといけませんわっ。念には念をいれておかないねっ」
どこの国が良いかしら? 飛び起きてテーブルに行き、地図とノートを広げて逃亡先を吟味し始める。本当に、ご自身がめんどくさいと感じられていることからは、どうやっても避けて通るアンジェリーナの姿を見て、ティーファは言った。
「アンジェリーナ様。ライオット殿下も、誰が公務の日程などを教えたかのか、もうご存じだと思いますよ?」
「そう? でも、ライ様の公務日程は、公表されているから。誰でも知っていることでしょう?」
「そうですが。・・・・・ライオット殿下が、お昼を取る時間とか、お茶の時間とか。そんなに詳しく知っているのは、傍にいるテンかアンジェリーナ様しかいないでしょう?」
「・・・・言われてみれば、そうね・・・・・」
めんどくさいことはしたくないので、めんどくさいことを回避するために先回りをするのだが。どこか少し抜けているところがあり。ティーファは、やっぱり気付いていらっしゃらなかったのですね。とお茶を煎れて、続けた。
「アンジェリーナ様は、月に何回か、ライオット殿下のお手伝いとして、公務をされていらっしゃいますから。休憩時間をご存じでしょう。侯爵家のご令嬢が、そこまで把握は普通はできないのではないでしょうか」
「・・・・・ううっ。言われてみれば、そうよねっ。でもっ、断じてわたくしは、王子妃にはならないわっ。王家に嫁ぐなんてっ、とてつもなくめんどくさいことしかないですものっっ」
めんどくさいのは嫌よっ。これは、本気で逃亡先を選ばないと。逆に真剣に選び始めてしまったアンジェリーナに、ティーファは、きっと無理だと思います。と思っていた。
手紙をしたためたライオットは、テンに渡し、席を立つ。
「さて、先ぶれより先に、アンジェリーナに会いに行くことにするか」
「・・・・ライオット殿下。それをすると、もっとアンに避けられますよ?」
「私に先に、そういう行動をさせようとするようなことをしたのは、アンジーだぞ」
「そうですけど。王家としての、いえ。男性としての礼儀を持たないと、アンに嫌われるぞって言ってるんだ」
「うぐぅっ・・・・。仕方がない。先ぶれが先に届くように、少しだけゆっくりと行くとしよう」
直接、抗議をした方が手っ取り早い。とライオットは、上着を手にして部屋を出る。テンは、大きく息を吐くと、ライオットを追いかけた。