95話:丁度いい隠し場所!?です!
キリッとしたいつものデキる公爵様になったジェラルドは、私を見て提案する。
「彼らがいた部屋に、その取引で使う野菜や果物があるかもしれない。念のためで確認をしてみるか」
「そうですね。一応、見てから戻りましょうか」
どうせ隣の部屋なのだからとジェラルドと共に隣室に入れるか試す。
だが。
校長がいた部屋……そこも貯蔵庫だと思うのだ。
「用意はできている。見ての通りな」と言っていたのだから。
ジェラルドと私が潜んだ部屋は、カギがかけられていない。
でもこの部屋はカギがかけられている。
「なんだか怪しくないですか?」
「一つの可能性としては、わたしとキャサリンがいた部屋の貯蔵庫にある物は使用人や母屋で暮らす校長の親族が食べる物なのかもしれない。でも校長がいた貯蔵庫の品は取引で使う物。よって部屋のカギをかけていたとも考えられる」
こういう時のジェラルドって、惚れ惚れする程、冷静だわ。
確かにそう言われると、そう思える。
でも……。
「こういう場合、鍵を開けることは、そう難しいことではない」
なんとジェラルドは私がつけていたブローチのピンを使い、鍵を開けてしまったのだ。
なぜそんなことができるのかと驚愕すると――。
「子供の頃、ティータイム時間以外で甘いものを食べたくなり、よく厨房に忍んでいた。それを注意され、棚にカギをかけられてしまった。そうなると甘いものを食べたいわけではなく、その棚を開けたいという気持ちが強くなり……。カギ開けが得意になってしまった」
ジェラルドの意外過ぎる過去にビックリ!
でも彼ならそういう発想に至ってもおかしくないかもしれない。
何せいろいろできてしまうスパダリなのだから!
ということで貯蔵庫に入って確認することにした。
ランタンとマッチが入口すぐの棚に置かれていたので、明かりをつける。
「木箱の中は……これは陶器の壺が入っているな」
数合わせなのか、蓋が閉じられていない箱があり、ジェラルドが中の壺を一つ取り出した。
「これは……スパイスだな」
「スパイス、ですか?」
「……そうだな。スパイス……クローブなのだろうか?」
「クローブですか? ビーフシチューやクッキーに使われるものですよね?」
半信半疑という表情でジェラルドが壺の中身を嗅いでいる。
料理を作らないジェラルドが、なぜスパイスについて、クローブについて、知っているのか。
その答えは簡単。
自身が運営する商会でもスパイスを取り扱っている。
よってジェラルドはスパイスについて、当たり前のように詳しかった。
「ビーフシチューやクッキー。そうだな。リンゴのスイーツにも合う。薄暗いから断言できないが、クローブ特有の甘い香りがしている」
私も匂いを嗅ぐが、確かに濃厚な甘い香りはクローブだった。
「不思議ですね。クローブはこの国は勿論、周辺国でも栽培が難しいですよね? 気候的に」
「よく知っているな、キャサリン。その通りだ。温室栽培は可能だろうが、ここでスパイスの栽培をしているとは聞いていないが……。そもそも学園のカフェテリアで、こんなにクローブを使うのか?」
「スパイスは長期保存が可能です。とはいえ、そう毎日クローブばかり使うわけがないので、少し不思議ではあります」
そこでジェラルドは既に蓋が閉じられている木箱をわざわざ一つ開け、スパイスの入った容器を取り出した。
「ジェラルド、なぜ新しい木箱から取り出したのですか?」
「うん。もしやと思うことがあってな。これを持ち帰り、調べたいのだが……」
そこでジェラルドが私の腰を抱き寄せる。
「丁度いい隠し場所を見つけた」
そう言うとジェラルドが私の首筋にいきなりキスをする。
ビックリすると、彼は私の胸の谷間にその容器を隠したのだ!
スパイスは高価なので容器自体は小さい。
でもこんな場所を隠し場所にするなんて!
西洋人のバストサイズって本当にすごいから……。
「では戻るぞ、キャサリン」
「は、はいっ!」
ひとまず戻ることにした。
お読みいただき、ありがとうございます!
【第二章完】加速する三角関係
>>登場人物イラスト追加
『森でおじいさんを拾った魔女です
~ここからどうやって溺愛展開に!?』
https://ncode.syosetu.com/n4187jj/
読み進めていくと謎が解け
じわじわと溺愛展開に向け、物語が動いています。
人型になれる使い魔もワイルド系イケメンで
まさに二人の素敵メンズの間で、主人公が少しずつ恋に目覚め……
キュンとするような三角関係を楽しめます。
特に13話はレミオロメンの『粉雪』を聴きながら読みたくなる
切なくキュンなお話になっています。ヾ(≧▽≦)ノ
ぜひご覧くださいませ~
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