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79話:脅威は去りました!

 屋敷に戻った私は、学校での出来事をまず手紙に書くことになる。


 すぐにジェラルドに話したかった。だがジェラルドは今日、領地の村で植樹記念式があり、夕食まで屋敷に戻らない。ジェラルドに話すのは夕食にして、ロイター男爵夫妻に今日の出来事を知らせる手紙を書いたわけだ。


 手紙を書き終えたタイミングでジェラルドが帰館した。ヘッドバトラーにすぐに夕食にするよう伝え、ようやく今日の出来事をジェラルドに報告。


 私の話を聞いたジェラルドの指示で、ロイター男爵夫妻への手紙は、使用人の手ですぐに届けられることになった。


「しかしスチュアート殿下が動いてくれるとは……。しかも永遠の片想いを決めているなら、ミユの相手がブルースであろうと、フェリクス殿下であろうと関係ないように思えるが……。ああ、そうか。ミユの幸せこそが、殿下が願うこと――だったな」


 スチュアートの行動にジェラルドは驚きつつもこんなことを言う。


「だがこれでよく分かった。キャサリンへの一時の気の迷いは、とっくに殿下の中で終わっていたわけか」


「もう、ジェラルドったら。まだあの時のことを気にしていたのですか! ええ、あれは殿下の一時の気の迷いだったのですよ」


 こうして数日後。


 改めて国王に呼ばれ、フェリクスとミユの婚約話は取り下げられたと伝えられる。しかも国を挙げて動いておきながらのこの失態。ハッサーク国王夫妻は平謝りだった。しかもお詫びとして、バカンスシーズン中に、私達家族とロイター男爵夫妻とミユを、ハッサーク国へ招待してくれることになったのだ。


 ミユはブルースに会えるし、滞在費などすべてハッサーク国王夫妻が持ってくれる。しかも好きなだけ滞在して構わないと言うのだから……。行かない手はないだろう。


 一方の国王陛下は今回の件でハッサーク国に貸しを作ることができたので、文句はない。ただ、騒動に巻き込んだお詫びとして、国王陛下からはロイター男爵に子爵位が授けられることになった。表向きはロイター男爵の領地での小麦の品種改良に対する褒賞がその理由だが、間違いなく婚約騒動のお詫びの結果だ。


 ちなみに我が家に対しては、王家のみで航海が許されていた航路の使用が認められた。おかげでフォード公爵家が所有する商会で、砂糖やカカオがより輸入しやすくなった。


 フェリクスも我が家とロイター子爵家に直接謝罪があり、それは快く受け入れた。ミユもフェリクスを避けることがなくなり、良き友人として落ち着いている。


 全てが解決してからブルースに知らせることになったが……。


 フェリクスがミユにプロポーズしたことより、スチュアートが動いたことに驚いていた。さらに永遠の片想い宣言に感動している。


 あれだけスチュアートからいろいろされたのに。それでも許すことができるブルースは寛容であり、懐が大きい。でもその寛大な気持ちがあったからこそ、スチュアートも今回、動いてくれたのだろう。


 正直、王族であるスチュアートでなければ、今回の行動はできなかったと思うのだ。他国の王族に対し、「プロポーズするつもりだ」などと堂々と言えるわけがない。しかもフェリクスと、恋愛に関して同じ立場にあるスチュアートだからこそ、説得力があった。


 よって今回のピンチを救ってくれたのは、スチュアートであることは間違いない。


 だがそのスチュアートの貢献は、当然、国王は知らなかった。


 スチュアートが水面下で動いたことを知るのは、私達やミユとその両親だけだ。スチュアートが国王から何かを受け取ることはない。そもそもフェリクスにミユとの婚約を断念させたことを国王が知った時、喜ぶとは限らなかった。むしろ「余計なことを」と一喝したかもしれない。


 そんな影の立役者として頑張ってくれたスチュアートに御礼をしたいと、ミユの両親は東方から取り寄せた珍しいお茶菓子を贈ったという。それはどうやら落雁や飴のようだった。


 我が家はどうするか悩み、スチュアートに手紙で尋ねた。その返事は……。


『ポチリーナの作るスイーツを食べたいです。焼きリンゴも焼きマシュマロも、宮殿のパティシエに作らせました。ですがあの時食べた味と微妙に違うのです。ポチリーナの作る焼きリンゴと焼きマシュマロをもう一度味わいたい。できればこの日がいいのですが……』


 少し驚いたのは、具体的な日時が指定されていたこと。


「む。その日はわたしは御前会議に呼ばれている。月に一度、国内の五つの公爵家を国王陛下自らが招集し、意見交換を行う場だ。欠席は許されない。……仕方ないな。わたしは同席できないが、殿下が指定しているんだ。特段の用事がなければ断るのも失礼になる。それに甘い物が好きなお子ちゃま殿下は、キャサリンのスイーツが食べたいようだし、わたしがいなくても問題ないだろう」


 一時は、ジェラルドの中でスチュアートに対する警戒感が高まった。それはミユを狙う悪人として。私に邪な気持ちを抱いた者として。でも今はそれも薄れたようだ。完全に甘い物大好き殿下と、お子ちゃま扱いだ。ゆえに自身が不在でも、そのままこの申し出を受けていいとなった。


 こうして初夏の庭園にスチュアートを招き、焼きリンゴ、焼きマシュマロに加え、焼きパイナップルを振る舞った。パイナップルは温室栽培されているが、超高級フルーツである。だが焼きパイナップルそのものは実にシンプル。焼いて、シナモンパウダーをかけるだけなのだから。でもこれが美味しい。


 焼きパイナップルを食べたスチュアートは、あまりの味わいに涙をこぼしそうだった。


「ポチリーナ、今日は本当にありがとうございます。懐かしい味もありましたが、焼きパイナップルは新たな味わいで感動しました」


 そう言って頬を高揚させるスチュアートは、本当にただの素敵な王子様。

 最初から甘い物好き殿下で、大人しくしてくれていればよかったのに。


 今の様子を見る限り、ジェラルドではないが、スチュアートに脅威は感じない。


 そして間もなくバカンスシーズンも始まり、ミユはブルースに会うことができる。バカンスシーズンをゆっくり過ごし、九月になりそこから半年で卒業式。


 もう、何もないだろう。

 最大の脅威だったスチュアートは、子犬のように大人しくなってくれた。しかもスイーツさえあれば、良い子でいてくれる気がする。


 とはいえ油断は禁物。

 何が起きるか分からない。


 備えあれば患いなし。

 引き続き警戒は怠りませんよ!

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