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51話:動かざること山の如し!?です!

 スチュアートは完全にミユのことが眼中にない。


 うううううん?


 これは完全に理解不能。

 ただミユを諦めてくれたなら、それに越したことはない。


 そこで一旦、スチュアートのことは保留。他の生徒達がユラユラ吊り橋を渡れるよう、教師の誘導を手伝った。生徒達は「揺れる~」「怖~い」と大騒ぎしながら、次々と橋を渡って行く。


「残りの生徒は……」


 引率の教師がそう呟き、辺りを見て、そこで目線が止まっている。

 振り返り、見えた先にいるのは、スチュアートと二人の腰巾着、そして護衛の騎士!


 まるで“動かざること山の如し”になっている。

 引率の教師と私で、スチュアートへ声をかけた。


「スチュアート殿下。もう橋を渡っていない生徒は殿下とそちらの二人のみです。渡っていただけないでしょうか」


 するとスチュアートは「ああ」と、まるで今、気が付きましたという表情を浮かべている。その上で腰巾着二人に声をかけた。「先に行くといい」と。


 腰巾着二人は「「ではお先です」」と、ユラユラ吊り橋へ向かう。

 橋の安全性確認なのかしら? なぜスチュアートは二人と一緒に行かないの……?


 そう思う私にスチュアートは、驚きの言葉を口にする。


「ツアーガイドであるあなたも先に行っていただいて構いません。先生もどうぞ。後から護衛騎士と共に追います」


「いえ、生徒を置いてはいけません!」


 教師より先に即答していた。

 スチュアートは何を言い出すかと思ったら。自分のことは置いていけ!?


 ブルースは何を考えているのか、実に分かりやすい。

 対するスチュアートは、理解不可能。

 それでも私が何度か促し、ようやくスチュアートはベンチから立ち上がり、護衛騎士に声をかける。


 私が先導する形で、ユラユラ吊り橋のところまでやって来た。

 後ろを振り返り、ちゃんとスチュアートがいるか、確認する。


 よし。ついて来ているわね。


 私、スチュアート、護衛騎士、教師の順で、吊り橋を渡ることに。

 満を持して吊り橋に足を乗せる。


「!」


 ユラユラ吊り橋というだけあり、揺れる!

 橋の来歴など説明したが、それは資料で得た知識。

 実際に渡るのは初めてだった。


 そうであっても。


 ホラー系は苦手な私ですが。

 前世において、絶叫系マシーンには強かった。

 ということで歩き出すと、さらにユラユラ揺れるが、無問題!

 私からすると屁でもない。

 むしろ、もっと揺れたら面白そうと思い、少し揺らすと。


 「うわああああ」と情けない声が背後からすると。


 え、まさか。


 振り返ると顔面蒼白のスチュアート。

 サファイアのような瞳が潤んでいる。

 王道な王子様が怯える姿……。

 激レア。

 どうやら吊り橋……高い所が苦手らしい。


 それにしても見目麗しい王子様のこの顔は、庇護欲を掻き立てるわね。

 仕方ない。

 橋を揺らすのは止めてあげよう。


 ブルースの天敵スチュアート。だがこんな吊り橋ごときで意地悪しても、仕方あるまい。むしろ今はツアーガイドと生徒という立場なのだから、アドバイスをすることにした。


「スチュアート殿下、まず下を見るのは止めましょう。顔をあげて、前を見てください。私が少し前を歩くので、私を見ながら続いてください。恐怖を感じたら声をかけてください。止まって、深呼吸をしましょう。手すりは握った方がいいです。そしてその手すりがある限り、安全だと自分で暗示をかけてください。後は会話をしましょう」


「な、君の助けなど」


「ここまで来て、後戻りは恥ずかしいですよね。みんな、心配してこちらを見ています。私の言う通りにしてください」


 スチュアートは橋の先でこちらを見ている生徒に気づき、「くっ……」と唇を噛みしめる。


 最後の最後まで橋を渡らなかったのは、怖かったからね。でもそれは逆に彼が橋を渡る姿に注目を集めることになる。いつもの冷静なスチュアートなら、そこに気が付いただろう。でもおそらく高い所が苦手なスチュアートは、そこまで思い至ることができなかった。


 さらには高い所が苦手なことは、腰巾着二人も知らなかったのだろう。知っていたら「大勢に紛れて渡った方が目立ちませんよ」とアドバイスしていたはず。


 ということでスチュアートがつい下を見てしまわないように、当たり障りのない会話を始めることにした。好きな食べ物。それをスチュアートに尋ねる。


「殿下は甘い物が好きですか?」


 焼きリンゴであれほど喜んでいたのだ。きっと好きだと思い、振った話題だ。


「好きです」

「例えばどんな?」

「……チョコレート」


 おこちゃまだ。ブルースより幼く感じる。


「殿下はチョコレートフォンデュをご存知ですか?」


「チョコレートフォンデュ? 知りません」


 当然だ。この世界には存在していない。

 会話に意識を向けてもらうため、出した話題だ。


「チーズフォンデュはご存知ですよね? あれのチョコレート版です」


「チーズフォンデュのチョコレート版……?」


 食らいついた!

 想像して、スチュアートの頬がほころんでいる。

 今、ここが吊り橋の上であることを忘れ始めていた。


「チョコレートをとろとろに溶かし、そこにフルーツやスイーツをつけていただくのです」


 スチュアートは想像し、目が輝いている。


「チョコレートフォンデュにおススメのフルーツは、一番はストロベリーです。でも王族であるスチュアート殿下であれば、キウィやパイナップルを手に入れることができますよね?」


 「勿論だ!」とばかりに、スチュアートが頷く。


「甘酸っぱいキウィは、チョコレートをくぐらせると、スイーツに変身です。パイナップルはジューシーで、チョコレートと絡むと、ぶわっと甘さが広がります。酸っぱさが嘘みたいになくなりますよ。もうたまりません」


 スチュアートの頬が赤くなり、喉をごくっと鳴らしている。


「クッキーやパウンドケーキをつけても当然ですが、美味しいです。アイスクリームをくぐらせても間違いがありません」


 他にもチョコレートフォンデュにおススメの食べ物を一通り紹介すると、スチュアートの瞳は喜びでキラキラと輝いていた。


「チョコレートフォンデュ。聞いたことがありませんでした。ですが王宮に戻ったら、パティシエに用意させようと思います」


「ええ、そうしてください。そして殿下、お疲れさまでした。ゴールです」


「え!」


 無事、吊り橋を渡ることができた。

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