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45/150

45話:完了です!

 一方のブルースは、笑顔を貼り付けている。だがそれは本心ではない。もう目が氷点下の冷たさだ。でも陶酔した様子でミユにした嫌がらせを語るイザベルは、全くブルースの変化に気づいていない。


「……そうか。僕の最愛であるミユに君は、そんな嫌がらせをしていたのだね。なんてヒドイことをするのかな。君のしたことはおおやけにして、罰してもらうよ」


「え……?」


 全てを聞き終えたブルースの一言に、イザベルの脳は理解が追い付いていない。

 しばし二人の間に沈黙ができた。

 ようやくブルースの言葉を理解したイザベルが、握り締めた手でテーブルを叩く。


「私がやったという証拠なんてないわ! それに法廷では自白が重視されるのよ。でも私、自白なんてしないわ!」


「そうか。でも、どうかな。さっき、君が話したこと。みんな聞いていたよ」


 仮面お茶会のため、周囲にいたメイドや執事。皆、仮面をつけている。

 だがその正体は……。


「う、嘘、どうして、校長先生や教頭先生が!? それにミユまで……」


 皆、一斉に仮面を外した。


「僕の父親であるフォード公爵と、母親であるフォード公爵夫人もいる。ああ、あと、君のクラスの担任もいるよ。みんな、さっきの君の言葉を聞いていた。君さ、声、大きいから」


 苦笑するブルースに対し、イザベルは顔面蒼白だ。

 これだけの人数に聞かれ、言い訳なんて無理な話。

 観念するしかない。


「君、本当に僕が好きだったの? 誰かにそうするように、言われたのでは?」


 イザベルは何かを言いかけ、でも呑み込む。


 おそらく黒幕がいる。

 それは間違いなく、スチュアート。

 でも彼女もまた、何か弱みを握られているのだろう。


 弱みを握られていたとしても。


 イザベルは、未来の公爵夫人を狙っているように感じられた。それにミユに対し、嫌がらせをするにしても。本当はそんなことをしたくないと思っているなら。胸倉を掴み、ミユの胸元が露わになるようなやり方を、する必要はない。床に押し倒し、馬乗りになってまでペンダントを奪おうとする必要もない。ましてや平手打ちなんて、する必要はなかった。


 つまり濡れ衣カンニング事件のシルバンとは違う。


 イザベルとスチュアートは、利害が一致したのだ。


 つまりイザベルは、未来の公爵夫人の地位を欲した。

 スチュアートは、ミユを手に入れたかった。


 だからこそ、ミユに対するイザベルの嫌がらせは、容赦ないものだったと思う。

 でもその嫌がらせもここまでだ。

 ミユが顔に傷を作るようなことは、もう二度とさせない。


 校長と教頭、そして担任の教師に連れられ、イザベルは庭園から去って行く。どうせこの後、話を聞いても。イザベルは口を割らないだろう。そういう約束をスチュアートと交わしているはずだ。


「いやはや驚いたな。女子の競争心とは、かくも恐ろしいものなのか」


 執事に変装し、イザベルの告白を聞いていたジェラルドがため息をつく。


「イザベル侯爵令嬢は、自分に自信があったのでしょうね。自分こそが未来の公爵夫人に相応しいと思っていたのかと」


 スチュアートがイザベルに話を持ち掛けたのも、彼女に自信を感じていたからだろう。自分の方がミユより優れているという自負があるからこそ、上から目線で嫌がらせもできた。


 イザベルから嫌がらせを受けていた当事者であるミユは、この顛末について聞くと、こんなことを言う。


「スチュアート第二王子殿下に脅されて行動したのなら、許して上げたい気持ちになります」


「ミユ、許す必要なんてないよ! あのイザベルは、君の顔に傷をつけたんだ。退学でいいと思う」


「退学では可哀そうよ。罪を憎んで人を憎まずで」


 ミユはヒロインに相応しい、優しい心の持ち主だった。


「退学でも十分だと僕は思うな。お父様。退学でなければイザベルは、停学ですかね?」


 ブルースは絶対にイザベルを許したくないようで、ジェラルドに尋ねる。


「そうだな。退学でなければ、停学が妥当という判断になるだろうな」


「でもフォード公爵、新学期は始まったばかりです。ここで停学になると、留年になってしまいませんか?」


 ミユがジェラルドに尋ねると、ブルースが反応した。


「ミユ、君がそこまで気にする必要はないよ!」


 ミユ命のブルースの必死さは、なんだか可愛らしい。

 その姿をまだ愛でたい気持ちもあるが、助け舟を出す。


「ミユは、退学ではなく、停学でもなければ、イザベル嬢に何を望むのかしら?」


 ミユは真摯な表情で考え込み、そして答えを口にする。


「奉仕活動一年。どうでしょうか?」


 嫌がらせをした相手がミユだったことを、イザベルは感謝するがいい――そう思わずにいられない。まるで聖母のような慈愛をミユは示したのだから。これがヒロインと言われればそれまでだが、やはりミユは特別だと思う。


 ということでミユは両親を通じ、自身の意向を学校に伝えた。

 しかし校長は……。


「イザベル・バークリーは、婚約者のいないスチュアート第二王子殿下にも言い寄っていました。殿下から通報がありましたよ。ブルースくんには婚約者がいますからね。どうやらブルースくんに断られた場合に備え、婚約者のいない殿下のことも狙っていたようです。とんでもない学生だと分かりました。彼女は退学です」


 品行方正なスチュアートが嘘をつくはずがない――というフィルターは、相変わらず校長には働いているようだ。だが実際のところ、これはトカゲの尻尾切りだ。スチュアートが失敗したイザベルを切り捨てた。イザベルはスチュアートに、言い寄ったりしていないと思う。


 そしてイザベルに確認したところで「はい。殿下に対し、アタックしていました」としか答えは返ってこないはず。


 この私の予想は、正解だったようだ。


 人を使い、調べたところ……。


 イザベルは退学後、隣国へ留学している。こんな中途半端な時期に留学生なんて、通常は受け入れない。しかもその学校には、その国の王族も在籍している。間違いなく、イザベルとスチュアートの間で密約があったはずだ。どのみちイザベルは失敗すれば、ミユへの嫌がらせもバレ、学園には居づらくなる。ゆえに退学で無問題。むしろ隣国に留学できるなら、イザベルからしたら、万々歳だったはずだ。


 これを踏まえると、イザベルとスチュアートは同じ穴の狢だったのだろう。


 そしてイザベルは留学先の学校で、高位貴族や王族の婚約者を目指すのかもしれない。


 とはいえ隣国でイザベルが何をしようと、もう関係ないだろう。そこで墓穴を掘ることになっても、知ったことではない!


 なお、バークリー侯爵家からは、ミユの両親にお詫び金が別途支払われている。その額、バークリー侯爵が所有する商会を一つ手放し、工面したお金で支払われたとか。イザベルは隣国へ逃げたが、その両親は大きな痛手を負っている。


 しかも後から耳にした社交界の噂では、イザベルを両親が勘当すると言っているとのこと。


 スチュアートとの密約があったとしても、それは留学した学校への口利きまでだろう。学費はバークリー侯爵が出しているはずだ。勘当になれば、学費も滞在費も失う。侯爵令嬢という地位も。うまく逃げたとイザベルは思ったかもしれない。だがそれも早晩、終わりだろう。


 隣国へ向かい、留学をして、新しい学校生活が始まった――そう思ったところで、勘当される。天国から急転直下の地獄行き。しかも地獄へ突き落すのは、実の両親なのだ。これほどの悲劇はないかもしれない。だがすべてはイザベルの自業自得の結果だ。


 こうしてイザベルのざまぁは、彼女自身の両親により、完了することになった。

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