40話:事の顛末と夏、本番です!
宰相であり、商会経営もしていたデイヴィス伯爵。ブルースにカンニングの濡れ衣を着せた悪党でもある。手強い相手だった。負けるが勝ちで、一度は煮え湯を飲まされている。
だが!
ジェラルドと私で見事、裏帳簿を手に入れた。
裏帳簿の存在は国王に報告し、新聞社にも知らせてある。おかげでデイヴィス伯爵の悪事は白日の下に晒され、国中に激震が走った。
結果としてデイヴィスは宰相の職を辞任し、爵位も剥奪となる。そして今は裁判中だ。その一方で、平民となってしまったデイヴィスの息子コール。まだ十代であり、学生だ。ジェラルドが参加した学園の会議では、コールを退学にするという話も出たと言う。
コール自身、ブルースのカンニングに関わっていたのは事実。だが父親と連座でコールの未来が閉ざされるのは、かわいそうに思えてしまう。まだ若い。更生の機会を与えて欲しいと思った。
そこでジェラルドとも話し、特待生として学園に残れるようにして、学費は匿名で我が家で支援することにした。クラスもスチュアートのいるA組から、C組へ変更。静かに学業に専念し、父親の失脚にめげずに生きて欲しいと思った。
ちなみにこの処遇について、コールはどう思っているのか。
校長経由で聞いた話では、学費を支援する匿名の人物に心から感謝しているようで、「卒業まで頑張ります」と宣言したとのこと。
その一方で、父親が裏帳簿を使い、違法な裏取引をしていたこと。それをそもそもコールは知っていたのか。もし知らなければ相当ショックだと思う。もし知っていたなら「ついにバレたか……」と思っているのかもしれない。コールには授業とは別で、学園にいるカウンセラーによる、カウンセリングも受けてもらうことになっている。いろいろ思うことがあれば、カウンセラーに打ち明け、前向きに生きて欲しい。
ということでようやく濡れ衣カンニング事件は、解決されたと思う。
そして世間はバカンスシーズンに突入し、学園も長期休暇となった。
例年通り、この休暇中は宿題もなく、自身の見聞を深めることが推奨されている。
今年も我が家の別荘へ、ミユのファミリーと共に滞在することになっていた。だが今回は、湖のほとりの別荘ではない。海辺の別荘だ。
海は穏やかで透明度も高く、泳ぐには最適そう……と思うのだけど。この世界のこの時代、海は眺めるもので、泳ぐものではなかった。
つまり海辺の別荘に滞在してやること、それはテラス席で飲み物やスイーツを楽しみ、海を眺める。もしくは談笑したり、読書をしたりするのだ。
これは……正直、これではつまらないです!
二週間も滞在するのに、海を眺めるだけでは飽きてしまう。
かと言っても買い物三昧になるのも……。
ここには海はあっても、それ以外で観光になるようなものは、美術館と神殿くらいしかない。
それならば。
ビーチバレーをやりましょう!
布製のボールを用意してもらい、ルールは私が覚えているものでやることにした。最初はみんな、「ビーチバレー!?」となったが、コツを掴むと楽しんでくれる。ただ女子は裸足になってもワンピースでプレーするので、大変! よって男性陣にかなり頑張ってもらった。ブルースもジェラルドも、いい汗をかきながら、ファインプレー連発だ。
続いては、スイカ割りをやりましょう!
この世界のスイカは小ぶり。棒が当たる面積が少ないので、スイカ割りは難易度が高いかと思いきや! ジェラルドがいきなり見事に真っ二つにするから、みんなビックリ。その一方で、ミユとその家族、そして私は、何度も砂浜を叩くことになる。しかも肝心なスイカを叩いても、割るまでには至らない。
ブルースは何度か砂浜に木刀を振り下ろしていたが、最終的にスイカの位置を掴むと……ジェラルド程とはいかないが、ちゃんと割ることができた。
見事割れたスイカをみんなで食べる際、塩をふりかけると美味しくなると教えると、全員半信半疑。でもブルースとジェラルドが「やってみよう」と試し「スイカが甘くなった!」と大喜び。ミユとその家族も挑戦し、甘くてジューシーなスイカにかぶりついた。
ビーチバレーにスイカ割り。
砂浜で思いっきり遊んだら、次は昼寝!
ストローハットを被り、日焼け対策でレースのアームカバーもつけていたが、たっぷり陽射しは浴びている。そしてビーチバレーで体を動かし、スイカを食べて満腹。そうなるともう、昼寝タイムだ。
テラス席に並べられた、ひさしの下のデッキチェアにもたれると、睡魔はすぐにやってくる。ニ十分程みんなで爆睡だ。
昼寝が終わったら、夕食はバーベキュー!
テラス席で調理人が豪快に肉、魚、野菜を焼いてくれる。我が家がみんな喜んで野菜を食べるので、ミユの家族も野菜に挑戦してくれている。でもタマネギもカボチャも。トウモロコシもズッキーニも。焼いてソースと絡めて食べると美味しいのだ。それはみんな、実食して分かってくれたと思う。
満腹になったら、いよいよラスト。
夏の定番、肝試し!
モナカ達使用人のみんなが、ゴースト役に扮してくれたのだけど……。血まみれのメイドとか、ナイフを持って追って来るバトラーとか、本気で怖い! しかも迫真の演技過ぎて、私は悲鳴をあげまくりだ。ジェラルドに何度も抱きついてしまう。
一方のジェラルドは「キャサリン、あれはモナカだ」「あれはチャーマンだ、怖くはない」と実に冷静!
結論!
私、ホラー苦手でした!
でも怖がって抱きつく私に、ジェラルドの庇護欲は増したようだ。
肝試しの後のジェラルドは「キャサリンの意外な一面を見た」とベッドでの溺愛度が急上昇だった!