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4話:公爵様が素敵過ぎでした!

「ブルース! うんちはね、木の棒で突っついて、笑って終わりじゃないのよ。そうですよね、飼育員!」


 ハッとした飼育員は悟りを開いてくれたようだ。素早くパオーンがいる檻に入ると、うんちの掃除を始める。


「飼い主は、うんちの掃除もしないといけないのよ。一日に八回も」


「……そうしたら僕、一日中、パオーンの餌を用意して、うんちの掃除しないといけないの?」


「そうよ。そうしないとパオーンはお腹がすくし、部屋が汚くて困るわ。ブルースもご飯を用意してもらえず、自分の部屋がうんちだらけだと、困るでしょう?」


 後半の「部屋がうんちだらけ」を想像した、ブルースは、なぜかニヤニヤしている。

 大人の常識で、部屋がうんちまみれを想像したら、顔面蒼白だ。

 だがきっとブルースの頭の中では、ソフトクリームみたいなうんちが、部屋のあちこちに置かれている様子が浮かんでいるのだろう……。


「ともかく。パオーンを飼ったら、毎日の餌やりと掃除が待っている。それもパオーンが生きている限り。パオーンが生きるかもしれない四十年間、毎日欠かさずよ。それができる、ブルース?」


 ブルースはその愛らしい顔で真剣に考え込む。


「モナカにやってもらうのは?」

「ダメよ。モナカは別にお仕事があるから」

「じゃあ、お母様は?」

「お母様はパオーンの飼い主ではないもの。ブルースが面倒を見なきゃ」


「うーん」と考えた後、ブルースは「僕には無理だ」と答えを出す。


「だって僕、いつかお父様の跡を継ぐのでしょう? 公爵家のこともやらなきゃなのに、パオーンの300キロの餌の用意と同じ量のうんちの掃除を毎日は、できないよ」


「そう。じゃあ、パオーンはあの飼育員に任せましょう。会いたくなったら、また動物園に来ましょう」


「うん。そうだね。そうするよ。……飼育員さんってすごいんだ。それに平民のくせに物知りで驚いた」


 ビックリして「平民のくせに、なんて言わないのよ!」と慌てて訂正する。そして身分に関係なく、頑張る人がすごいのだと教えることになった。


「身分制度があるけれど、それが全てではないの。その人を見る時は、身分で判断しちゃダメよ。いっぱいいろいろなことを知っている。誰かに親切にできる。優しさがあるとか、その人の心を見るのよ、ブルース。まだ難しいかもしれないけど。決して身分だけで人を判断しないでね」


「うん。分かったよ。お母様」


 ホッとしたその時。


 「こ、公爵夫人!」と飼育員の声。「えっ」と思い、振り返った瞬間。

 パオーンがまるで、ブルースが賢くなったことを祝うかのように、ザバーッと鼻を使い、私の頭から水をかけた。


 この時の私は衝撃を受けながらも、季節が初夏で良かったと思うのだった。


 ◇


 結局。


 びしょ濡れになった私は、ブルースとは別々で帰ることになり、夕食はブルースと公爵……夫であり父親のジェラルドと摂ってもらうことになった。遅れて帰宅した私は、まずは入浴し、そしてブルースの様子を確認する。するとブルースは既に食事を終え、入浴も済ませ、ぐっすり寝ていた。


 手に握りしめているのは、パオーンをモデルにしたゾウのぬいぐるみ。大切にしている様子に頬が緩む。


 自室に戻り、夜食を運んでもらい、一人遅れて食事をしていると。


 ノックの音がして、初めましてとなるフォード公爵……ジェラルドが部屋に入って来た。既に入浴を終え、濃紺のバスローブという姿。私自身も、ラベンダー色のネグリジェに、白の薄手のガウンを羽織った状態。覚醒後、初対面なのに、いきなりこの寛いだ姿は……。そう思うものの、ジェラルドとは夫婦なのだ。恥ずかしがることもできない。


「聞いたよ、キャサリン。今日は動物園では災難だったな」


 Oh my goodness!

 ジェラルドは何ていい声をしているのかしら! 低音で深みがあるのに甘い声。小説では分からなかった。というか公爵の小説での描写なんて、数行だったと思う。


 前世記憶を取り戻し、キャサリンの記憶も融合した結果。それは若干キャパオーバーしている。一部うろ覚えなこともあった。


 ということで改めてテーブルを挟み、対面の椅子に座ったジェラルドを見ると……。


 ホワイトブロンドに碧い瞳。ツーブロック分けした前髪の左側は、後ろへ流している。キリッとした眉で、仕事がデキるビジネスマンという感じだ。キャサリンの記憶を辿ると、確か商会経営と領地運営に追われ、子育ては私と乳母任せだったようだが……。


「モナカから報告を受けた。君が面白い発言をしたと。ソフトクリームの食べ過ぎや、夕食の食べ残しを心配し、そしてゾウを飼いたいというブルースの我が儘を正したと。これまでの君からは考えられない行動で、驚いたようだ」


「あ……そうですよね。驚かせて申し訳ありません。モナカにも謝らないといけないわ」


「フッ。本当に変わったようだ。モナカには、忠実に君に仕えるように指示してある。そこは気にしなくていい。それに君の変化をモナカは、好意的に受け止めている。これまでは……君の価値観に合わせていた。でも今日からは、君の価値観に共感できる……と言っていたぞ」


 これにはホッと胸を撫で下ろす。この世界と前世では、価値観が違うところもある。でもどうやらモナカは、分かってくれたようだ。


「食事が終わったようだな。……たまにはワインでも飲むか?」


「あ、はい」と即答すると、ジェラルドは驚いた表情をしている。


「キスをする時は、お酒を飲まないで……が、君の口癖だったから」


 そう言われて記憶を辿ると 確かに。でも二人ともワインを飲んだら、お酒の香りなんて分からないのでは?


 そんなことを思いながら「今日は私もワインを飲みたい気分なんです」と伝え、運ばれてきたロゼワインを二人で飲んでいると……。そこは私達が夫婦なので。そういう流れに。まさかの喪女卒業と、動揺することはできない。何せ息子がいる身なのだから……!

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