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35話:甘酸っぱいです!

 デイヴィス伯爵からは、煮え湯を飲まされる形で終わっている。それはとても悔しい! だが急いては事を仕損じる。こちらは水面下で調べを続けていた。


 伯爵のことを考えると気分は良くない。


 でも今の季節、過ごしやすく、天候にも恵まれている。

 気持ちを切り替えることにした。


 切り替えると言えば!

 テストが終わり、王立レーモン学園では、夏服へと切り替えになった。


 ブルースの夏服は、白の半袖のワイシャツに、センタープレスされた紺色のズボン。シャツのポケットに学園のエンブレムがワンポイントアクセントになっているが、シンプル・イズ・ベストという感じだ。


 ところが!


 夏服を着たミユは、とても可愛らしいのだ。


 白のパフスリーブのブラウスには、丸襟を飾る細い赤のリボン。ロングのフレアスカートはハイウエストで、紺色の生地に水色と白のチェック柄になっている。


 夏服を着て、一緒に宿題をする二人の姿を見た私が思ったこと。


 それは、私も王立レーモン学園の制服を着たかった!


 なぜならば。


 ジェラルドは王立レーモン学園に通っていたが、私は女学校に通っていた。そこの女子の夏服は……。白の半袖シャツに無地の紺色のフレアスカートと地味だった。


 その日の夜、私がこのことをベッドでジェラルドに話すと。


「制服……。そう言われるとキャサリンの学校の制服は、確かに地味だったな。冬服も無地の紺色のブレザーとスカートで、リボンも何もなかった」


 仰向けになり、私を腕枕したジェラルドが学生時代を振り返る。


「そうなんです。校長先生のポリシーが『着飾ることより、内面を磨きましょう』でしたから……」


「だが卒業舞踏会では、みんな派手なドレスを着ていたような」


 それはジェラルドが言う通り。学生時代は地味な制服で過ごしたので、最後の最後でみんな、ドレスを派手にしてしまったのだと思う。ちなみに卒業舞踏会は、ジェラルドがエスコートしてくれた。懐かしい……。


「ミユの制服……そうか。あのチェック柄のスカート。確かにあれは可愛らしい。男子の制服は地味だった。でも女子の制服は、王都で人気のブティックのデザイナーが手掛けているからな」


「地味な制服の私と週に一回のお茶会。ジェラルドは味気なかったのでは?」


 するとジェラルドがフッと笑う。


「服なんておまけだ。キャサリン自身が素敵だった。味気ないなんてことはないさ」


「ジェラルド!」


 嬉しくてその胸にぎゅっと抱きついてしまう。

 するとジェラルドもさらに私をぎゅっと抱きしめて……。


 甘い夜が更けていく。


 ◇


 迎えた週末日曜日。


 ブルースとミユは、美術の勉強も兼ね、王立美術館へデートに向かうことになっていた。一方のジェラルドと私は、特に予定を決めていない。モナカに王都で人気のスイーツ店に買い物に行ってもらい、ティータイムにいつもより力を入れ、ジェラルドと楽しもうと思っていたら……。


 目覚めた私に「奥様、旦那様からです!」とモナカがリボンのついた箱を届けてくれた。


 日曜日でも私より早起きし、ブルースと剣術の練習をするジェラルドは、もう寝室にいなかった。


 わざわざ朝食前に、何を届けてくれたのかしら?


 赤いリボンをほどき、白い箱をパカッと開けた私は「まあ!」と驚く。


「奥様、これは王立レーモン学園の女子の夏服にそっくりですね。ブラウスのポケットのエンブレムは、フォード公爵家のものですが……」


 箱の中には名刺サイズのメッセージカードも入っている。そこに書かれていたメッセージ、それは……。


『愛するキャサリンへ


 君が着たいと言っていた制服に

 よく似たデザインの服を用意した。

 これを着て、今日は街でデートをしよう。


        君を愛するジェラルドより』


 ジェラルドったら!

 私が着たいと言っていたから、まさかよく似た服を仕立ててくれるなんて。


 しかもこの制服を着て、ジェラルドとデート!


 ひとまず紫色のドレスに着替え、ダイニングルームへ向かい、朝食をジェラルドとブルースと摂ることになる。ジェラルドに「ありがとうございます!」の気持ちを込め、その目を見ると、フッと彼が口元に笑みを浮かべた。それを見た私はついつい頬が緩む。


「お母様、何か嬉しいことがあったのですか?」


 何も知らないブルースが無邪気に尋ねた。

 対する私はご機嫌で答える。


「ブルースはミユとデートでしょう? お母様もお父様と今日、デートをすることにしたの」


「そうなのですね! 天気もいいですから、お母様とお父様も楽しんでください!」


 こんがり焼けた厚切りハムをナイフで切りながら、ブルースは朗らかな笑顔になる。


 こうして朝食を終えると、着替えとなる。王立レーモン学園の、女子の夏服にそっくりな服に。


「まあ、奥様! すごいですわ。女学生に見えます。せっかくですので髪型も女学生風にしましょう!」


 モナカがノリノリになり、ツインテールにした髪を三つ編みにし、それを束ねて輪っか状にしてリボンで留めてくれた。お化粧はナチュラルにして、ローファーを履くと……。


「奥様、完璧ですよ!」


「なんだか恥ずかしいわ」


「お肌も若々しく、スタイルだっていいのですから、恥ずかしがる必要はありませんよ! 旦那様がお待ちです。エントランスホールへ参りましょう!」


 モナカに促され、エントランスホールに行ってビックリ!


 だってジェラルドの服装は……白のワイシャツに、ポケットにはフォード公爵家のエンブレム。センタープレスされた紺色のズボンと、これまた王立レーモン学園の、男子の夏服風なのだ!


 しかもジェラルドもまた、その服装で違和感がないのだから!


「キャサリン、驚いたな。女学生にしか見えない」

「ジェラルドも、男子学生にしか見えないです!」


 こうして馬車に乗り込み、向かった先は……。


 初めてのデートで行ったカフェ。

 よく二人で立ち寄ったステーショナリーショップ。

 さらにブルースともよく足を運んだ動物園!

 そう。

 あの動物園は、ジェラルドとのデートで何度か足を運んでいた、思い出の場所だった。


「これがキャサリンをびしょ濡れにしたパオーンか。立派なゾウだな」

「ええ、あの鼻でさんざんチューもされました」


 するとジェラルドが私をじっと見る。


「キスをしたいのだが」

「ダメでしょうね。今、制服にしか見えない服を着ていますから」

「……ではそこの建物の影で」

「もう、ジェラルドったら!」


 屋敷に帰れば好きなだけ甘えられるのに!


 でも……。


 学生の時、制服でデートしてジェラルドとキスは……したことがないわね。


 改めてジェラルドと向き合うと、なんだかドキドキする。


「キャサリンが制服風の装いだから、緊張するな」

「それは……私もです」


 もういい大人なのに。

 制服風の服を着ているだけで、こんなに甘酸っぱい気持ちになれるなんて!


「キャサリン……」「ジェラルド」


 まるでファーストキスをする気持ちになり、瞼を閉じかけたが……!


「ジェラルド!」「!?」

「パオーン!」


 降って来たのは干し草!

 水じゃなくて良かった!


「キスは屋敷に戻ってからにしよう」

「そうしましょう」


 学生時代に戻ったかのような、初々しいデートを楽しんだ日曜日だった。

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