15話:王立学園に入学(潜入?)です!
王立レーモン学園にブルースとヒロインであるミユがついに入学した。
前世と違い、学園の生徒達は婚約をしている者も多い。
なにせこの学園は、王侯貴族が通う学校だからだ。
だがしかし。
学校は勉強をする場所。
よって婚約者同士は必然的にクラスを分けられてしまう。
可哀想に。
ブルースは、愛するミユとクラスが別々となり、さらにそのクラスで婚約破棄の元凶となる子爵令嬢ハナ・アルディと出会ってしまうのである。
子爵令嬢ハナ・アルディ。
挿絵に一度だけ登場し、小説で書かれた人物像をまとめると。
玉の輿狙いの巨乳童顔少女。ピンクブロンドでピンク色の瞳のツインテール。小柄で確かに可愛い。
小説中では、子爵令嬢ハナと出会った令息は、彼女にゾッコンになる。
でもそうなるのも仕方あるまい。
小説に書かれていない情報収集のため、人を雇ったところ。
ハナは玉の輿狙いのビッチだった。
より高位貴族を求め、ステップアップしている。
最初は男爵家の嫡男、次に子爵家の次男、続いて伯爵家の嫡男。
彼らを手玉にとりながら、どうすれば男がなびくか、徹底的に実践で学んでいるようなのだ。
玉の輿ハンターとして成長したハナは、今やその照準を王立レーモン学園で一番金目のある男に向けている。狙いたいのはこの国の第二王子。だがさすがに王族は手強い。護衛騎士同伴で登校しているうえに、彼の周りの学友は選ばれし者ばかり。宰相の次男や騎士団長の嫡男などであり、しかもクラスはヒロインであるミユと同じ。ハナとはクラスが違う。
ちなみに第二王子の取り巻きにブルースが選ばれていないのは、さすがにそこまですると“やりすぎ”であるから。一学年3クラスしかないのだ。A組のエースは第二王子、B組のエースはブルース、C組のエースは侯爵家の嫡男と、学園も分散させた形だ。
なお、A組の女子の多くが婚約者がいる令嬢。つまりまだ婚約者がいない第二王子に、変な虫がつかないようにしているのだろう。それもあり、ハナはB組で、ヒロインであるミユはA組なのだ。
ブルースとミユの恋。
これは温かく見守ると決めている。
だが子爵令嬢ハナは、玉の輿狙いのビッチ。ロックオンされたら、ブルースがどうなるか分からない。ブルース本人の意志に反した何かが起きるかもしれないのだ。
それを阻止したい。
そこで私は臨時用務員として、学園に潜入することにした。
臨時用務員……であるが実質業務免除で、自由に学園内を動けるのは……公爵様、ジェラルドがこの学園の理事の一人だからだ。多額の寄付もしているので、学校側も文句はない。そして当然だが、この件は、ジェラルドから許可をもらっている。
「臨時用務員……。でもその姿は 、女性教師みたいだ。そのひっつめにした髪。ハーフリムの眼鏡。立襟の地味な色だが、体のラインがハッキリ分かるドレス……。これはこれで、なんというか、普段は厳しいのに、夜は……という妄想を掻き立てるな」
私が変装を繰り返すことで、ジェラルドの何かを目覚めさせてしまった気がしてならない。そして補佐官はまたも執務机の書類が大散乱し、青ざめることになる。そこは申し訳ないと思いつつ。いつも以上に気持ちを昂らせるジェラルドは、この上ない色気があり……。なんだか夫婦のお楽しみになりつつある。
ともかく。
潜入した私は早速、ブルースとハナの様子を観察することになる。
と言っても、授業中に二人の接触は皆無。
だが時限ごとの短い休憩にも関わらず、ハナはブルースに接近する。
ところがブルースは、うまいことかわしている。
「レストルームに行くので」「今日は日直で次の授業の準備がありますので」「先生に呼ばれているので」
偶然なのか、必然なのか。
とにかく短い休憩時間はセーフ。
最大は登下校、そしてお昼休み!
だが。
「お昼を一緒に食べたい? ごめん。僕は婚約者がいて、でもクラスが違う。彼女と過ごせるのは昼休みしかないんだ。当然だけど、僕はミユとお昼を食べるよ」
見事にバッサリ、ハナを切っている。かつこれを言われたら、もう二度とお昼は誘えないだろう。
では登下校はどうか?
「婚約者を迎えに行き、共に登校する。学園から婚約者を、屋敷へ送り届ける。当然のことだよね? だから君と登校することも、下校することもできない」
ブルース、最高!
拍手喝采を送りたい。
しかしこれをブルースに言われた時のハナの表情と言ったら……。
般若みたいに恐ろしい顔をしていたわ。
めげないハナは、交換日記をしないかと誘ったり、王都で人気のパーラーに行かないかと声をかけたり、本当は奢ってもらいたいだろうに、オペラのチケットがあるので観に行かないかと声をかけるが……。
「ごめん。婚約者以外と交換日記をする気になれない。パーラーも行くならミユがいい。オペラなんてそんな高額なもの、婚約者でもない君に連れて行ってもらう義理はないと思う」
こうなるとハナは、日直でブルースと一緒になる時くらいしか、接点は作れない。
しかしそんな接点はそう頻繁にあるわけではなかった。
これならブルースは、玉の輿狙いのビッチの手に落ちないで済む!
そう思っていたが……。
お読みいただき、ありがとうございます!
章ごとに読み切り作品の
第三章スタートのお知らせです。
『転生したらモブだった!
異世界で恋愛相談カフェを始めました』
https://ncode.syosetu.com/n2871it/
【冒頭からなんだか波乱万丈の予感!?】
ほのぼの、まったり、美味しく
時に小さな事件が起きて……。
第三章も美味しいものが登場。
ぜひご賞味くださいませ。
ページ下部にあらすじ付きイラストリンクバナーがございます。
タップORクリックで目次ページへ飛びます!