126話:見つけられるか……!です!
結局。
18時の鐘が鳴り、その後。
21時の鐘が鳴るまで粘ったが、成果はない。
犯人が王都警備隊が言っていたような、「個人で歩き売りをする人間は気ままと申しますか……。松ぼっくりやどんぐりが手に入らないと、その日は売り歩かない。気が向いたらう歩き売りをする。なんて者も多いようで……」というタイプであるならば。
毎日ホリデーマーケットに顔を出すとは限らない。むしろ、事件を起こしたのだから、身を隠している可能性もあった。
それでも個人で野山で拾った松ぼっくりやどんぐりを売るということは。生活に困窮している可能性が高い。王都警備隊の目を気にしつつも、商売を再開する可能性が高かった。ゆえに今日はダメでも。明日、明後日と粘ることも考えたが……。
私は思い切って提案することにした。
「炊き出しをしませんか?」
この提案に、馬車の中のジェラルド、ブルース、モナカは一瞬固まる。
屋敷へ向かう馬車の中。
なぜブルースが一緒なのか。
ミユは……?となると思うが、これには訳がある。
時間も遅いので、ブルースがミユを見送ることに、王都警備隊から難色が示された。
それはそうだろう。
しっかりしており、もう大人に思えてしまうが、ブルースもまだ学生。
既に21時の鐘が鳴っているのだから、一刻も早く家へ帰りなさい、というわけだ。
そこはもう、親としてもその指摘を受け入れるしかない。
それにブルースの代わりで、王都警備隊の隊員が、ミユと侍女の護衛に着き、屋敷まで送ってくれることになった。これなら問題なしだ。
ということでブルースが私達の馬車に乗り込み、ジェラルド、モナカ、私の四人で屋敷へ戻ることになったのだけど……。
私が炊き出しを提案すると、皆、「?」となってしまった。
そこで私は説明する。
「個人で松ぼっくりやどんぐりを拾い、歩き売りするということは、生活が困窮していると思うのです。しかも騒動を起こし、王都警備隊の目が厳しく光っている。そうなると歩き売りをしたいのに、できない可能性があります。そこで炊き出しをすれば、食料を求め、現れるのではないでしょうか。ミユやブルース、あの日現場にいた従者と侍女は、その様子を離れた場所で眺める。もしあの時の女性を察知できたら、声を掛けるというのはどうでしょうか?」
私の案を聞いたジェラルドが即答する。
「それはいいかもしれない。ミユは囮にならないで済むし、フォード公爵やロイター子爵家とは無関係の家門として動けば、まんまと誘き寄せることができるかもしれない」
ということで。
炊き出し誘き出し作戦が、三日後に行われることになった。
計画通り、ミユとブルース達は、変装の上、離れた場所で見守る。
ジェラルドと私は変装し、この日の炊き出しを行うピアース侯爵家の一員のふりをすることにした。
そう。
ジェラルドのビジネスパートナーであり、私の幼なじみであるリックが、その家門の名を貸してくれたのだ。つまりピアース侯爵家による、ホリデーマーケットの炊き出しが行われることになった。
王都警備隊からも、ミユの囮作戦の時より人数は少ないが、隊員が来てくれている。
こうして食欲をそそる香りのシチューとパンを配る炊き出しが、冬の夕暮れ時にスタートした。
こんなにいい香りがするのだ。
しかも無料。
すぐに人が集まってきた。
子供、子連れの母親、老人を優先し、行列に並んでもらう。
その行列の中には、黒に近いグリーンのフード付きローブを身に着けた女性の姿も見られた。
これには一同、期待がこもるが……。
ブルースやミユ達から声は掛からない。
服装が同じように見えても、あの時の犯人の女ではないということだ。
そう簡単には見つからないか。
そう思い、ジェラルドと共に炊き出しにせいを出していたが……。
行列の後ろの方で動きがあった。
黒に近い、グリーンのフード付きローブを身に着けた女性……少女が、平民を装った王都警備隊の隊員に、取り押さえされていた。
◇
炊き出しの現場は、モナカや他の我が家の使用人に任せ、取り押さえられた少女の元に向かうことになった。
広場の端に、炊き出し作戦に集まっていたメンバーが集結した。
私達に取り囲まれた少女は……銀髪を後ろで一本に結わき、瞳は碧い色。
とても痩せている。
突然、このような大勢の大人に囲まれ、かなり動揺していると思う。
おどおどした状態で、忙しそうに視線を彷徨わせていた。
「容疑者の条件と一致します」
そう言うと王都警備隊は、彼女が黒に近いグリーンのフード付きローブを着ていること、松ぼっくりやどんぐりを入れた布袋を入れた籠をもっていること。さらにその籠の底には……短剣が隠されていることを指摘した。
さらに彼女が怪しいと指摘したのは、ミユの侍女。
一方のブルースとミユは、ピンとは来ていなかった。
だが服装、売り物、そして短剣……。
確かに犯人の女性の条件と一致していた。
「君はこちらのいる令嬢に短剣を向け、刺そうとしたのだろう?」
王都警備隊が少女に尋ねた。
すると……。
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