115話:幸せな結末、です!
BGMはKalafinaの『ring your bell』はいかがでしょうか。
オーガストとキャサリンの絶望の先には、希望が待っていたという世界観、そして鐘。この二つがシンクロしている気が~!
十一月の秋晴れの青空の下。
王家の霊廟で、厳かに祭儀が執り行われた。
祭儀の先頭に立つのは、スチュアート。
若き日のオーガストを思わせるスチュアートが、主席司祭と共に祈りを唱える姿は、不思議でならない。
参列したジェラルドと私も、ブルースとミユ、ロイター子爵夫妻、そしてヘッドバトラーのマーコットとメイド長のカラも、黒の喪服姿だった。
だが祭儀を執り行うスチュアートは、儀式用の白い祭服を着用していた。
その姿を見ると、まるでキャサリン・ハートレーを花嫁として迎えようとする新郎に見えてしまう。
「二人の永遠の愛を願い、ここに鎮魂の祈りを捧げます――」
スチュアートの言葉を合図に、最期の別れの鐘が鳴り響く。
キャサリン・ハートレーの遺骨が納められた棺は、オーガストが眠る地下へと運ばれて行く。
こうして全ての祭儀が終わった時。
唐突に「キャサリン」と呼び捨てでスチュアートに声をかけられ、ギョッとしてしまう。
ジェラルドの瞳が瞬時に敵を威嚇する、猛禽類の目つきに変わる。
スチュアート、あなたまだ懲りていなかったの!?
そう思ったが……。
「妻がいろいろとご迷惑をおかけしました。これでようやく僕達は結ばれることができます。お詫びとしては何ですが、あの湖の湖底には沈没船があるのです。遠い昔、まだ戦乱の世だった時代。王家は多くの金銀財宝を隠すため、あの湖の古城に運ぼうとしました。ですが突然の悪天候で、船は沈没したのです。でも戦乱の時代ですから、発掘する時間はなく、放置され、その事実は伝承されませんでした。でも湖に身を投げた僕は、その沈没船を、この目で見ています。そこに金銀財宝は残されたままです」
そう言って笑ったスチュアートは……違う、これはスチュアートではない。
スチュアートに憑依したオーガストだった……!
◇
後日。
湖での発掘作業では、オーガストの言った通り、金銀財宝が発見される。
既に湖も含め、フォード公爵家の領地になっていた。よって発見されたお宝は、独り占めもできたのだけど。
ジェラルドも私も。
そんなことはしなかった。
一部は王家に譲渡し、一部で古城のそばに博物館を作り、そこで引き上げた壺や古い金貨などを展示することにした。
キャサリン・ハートレーは爵位を賜っているし、そのことは国民に隠すことはできない。
百年の時を経て、オーガストとの二人の愛は、遂に公に明かされることになった。
この時代でも考えられない、平民出身の女性と王族との結婚。それを実現させたということで、現国王は大人気となった。
喜んだ国王陛下は、立役者であるジェラルドと私、ロイター子爵夫妻に、たっぷりの褒章と褒美を与えてくれた。沈没船の金銀財宝もあるのに、さらにいろいろと授かるなんて。ビックリだ。ちなみにヘッドバトラーのマーコットとメイド長のカラは、博物館の責任者も兼任することになった。
こうして古城と湖、博物館は、恋人たちの愛の聖地となった。大勢が訪れることになったので、古城の一部を解放し、宿泊可能にした。
ホラーは苦手。
怖いのはダメだと思ったけれど……。
こんな結末になるなら、ホラーもたまにはいいのかもしれないわね……!?
なお、使用人達が聞いていたという不可思議な物音。あれは城内全体の配管が古くなり、傷んでいたことが原因で起きる音だった。
気温の変化で軋んだりした音が、静かな真夜中に聞こえていただけと、後に判明している。
配管のメンテンナンスをすることで、その音はすっかり聞こえなくなった。
いつもお読みいただき、ありがとうございます。
【お知らせ】完結:一気読みできます~!
『悪役令嬢に転生したらお父様が過保護だった件
~辺境伯のお父様は娘が心配です~』
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なろう表紙を飾った本作をぜひお楽しみいただけると幸いです☆彡