101話:発見です!
午前中はボート遊びを楽しみ、午後は島の探索兼紅葉狩りを楽しむことになった。
せっかく風光明媚な場所に来たのだ。
しかも紅葉が美しい季節。
空耳なのか。
ともかく正体不明な声に不安になり、楽しまないのは残念過ぎる。
ということで各自馬に乗り、整備されている人馬共通の遊歩道を進んだ。
のんびりの散策となるため、女性陣は馬を馬丁に引いてもらいながら、ゆったりと進む。
ジェラルドを始め、ブルースもロイター子爵も、乗馬は得意。
三人とも背筋をピンと伸ばし、騎乗している姿はなかなかのもの。
その背景に、色づいた木々があるのも実に絵になる。
今回は二泊三日の短い滞在。もし長期滞在するなら、画家を連れてきてもいいかもしれない。
「旦那様方、この辺りで休憩はいかがでしょうか。湖畔に面しているので湖もよく見えますし、王家の皆さまも、こちらでよく休憩をされていました」
馬丁の少年は、ここへ来ることに慣れているようで、よどみなく案内してくれる。
言われた場所は、確かに湖畔に面しており、丸太で作ったテーブルとベンチも設置されていた。
「いいだろう。ここで少し早いがティータイムにしよう」
ジェラルドの一声で、休憩となった。
馬を降りると、すぐにジェラルドが私をエスコートしてくれた。
ブルースもミユを連れ、湖畔のテーブルとベンチがある場所へ向かっている。
「見てください。沢山のオークの実が落ちていますわ」
ロイター子爵夫人の言葉に、落ち葉の絨毯の地面を見ると、可愛らしいオークの実が転がっている。
「お、リスもいますぞ」
ロイター子爵に言われ、近くの木を見ると、何かがサッと動く様子も見えた。
きっとあれがリスね、そう思った瞬間。
木に隠れるようにしている人物が、見えた気がした。
これには心臓が止まりそうになる。
「ジェラルド、そこの木に」
「そこの木に、リスか?」
「!? リスではなく……」
もう一度木を見るが、そこに先程見えた気がする人物はいない。
見えた気がした……けれど本当は誰もいなかった……?
見間違え、なのかしら……。
人は柳の木を、幽霊に見間違えるくらいなのだ。
昨晩からの恐怖心で、幻覚を見たのかもしれない。
そう、なんとか冷静に考えるが、心臓は不協和音を奏でている。
「おや、その木、もしかしたら」
ロイター子爵が木に近寄り、ぐるりと背後に回り込み、私達を手招く。
「見てください、樹洞があります。そして何かがありますよ!」
そこで湖畔に先に到着していたブルースとミユも呼び、その樹洞を見てみると……。
枯れ葉や鳥の羽毛、小動物の毛などにまぎれ、人工物――小さな箱のような物が見える。
「これは鳥や小動物の巣に使われているようですが、今は空き家でしょうか。そしてこれは」
そう言うとロイター子爵はハンカチで箱を持ち上げ、取り出した。
「これは……指輪を入れている箱ではないか?」
ジェラルドの指摘にロイター子爵夫人も「そうですわ、そうですわよ!」と応じる。
「奇跡ですな。黄金とガラスでできているから、腐敗することもなく、残っている。しかしこのリングケース、これだけで相当な値が張るのでは!? ふんだんに黄金も使われているのですから。もしや王族の方がここに滞在していた時に、置き忘れたのでしょうか。あ、子供が隠し、忘れてしまったのかな?」
このロイター子爵の推理に、ジェラルドは「違うでしょう」と指摘する。
「高さ的に子供は届かないだろう。よって子供が隠したとは考えにくい」
「そうなると大人が意図的にここに入れた……隠したのでしょうか?」
ブルースの問いに、ジェラルドは腕組みをして考えながら、言葉を口にする。
「一時的に隠したのであれば、取り戻しているはずだ。隠したことを忘れるような品には見えない。……ロイター子爵、そのリングケースは開きますか?」
問われたロイター子爵は蓋を掴み、少し力を入れると、開けることができた。
するとそのリングケースの中には……。
「これはすごい。なんて立派なダイヤモンドだろう。王家の宝物庫にあるような宝石では!?」
ロイター子爵が驚き、夫人も「まあ」と目を丸くしている。
ジェラルドは冷静にハンカチを取り出すと、その指輪を手に取った。
「リングの内側にイニシャルが彫られている。CとAだ。そしてLove foreverの文字。この飾り文字はかなり古いものだ。ざっと百年前だろうか。今ではほとんど見かけない。その点を踏まえると、このリングケースと指輪は、推定百年前のものになるな」
「お父様、これはAという人物がCという人物に贈った『永遠の愛』を誓う指輪では? つまり婚約指輪の類ではないでしょうか」
ブルースの指摘にジェラルドは頷く。
「そう考えるのは妥当だ。過去の王家の誰かがこの城に滞在中、求婚しようとした。サプライズで渡すつもりで、ここに隠したのかもしれない。だが渡し忘れた……ということはないだろう。これだけのダイヤだ。何か事情があり、渡せなかったのかもしれない」
そこでジェラルドは指輪をリングケースに戻し、「これは国王陛下に報告しよう」と告げた。






















































