帰宅
ゴトゴト………ゴトゴト………
お父様の傷は治ってはいるがあの後気を失ってしまった。
顔色は良いが念のため医者に見せるべきだということですぐに帰宅することとなった。
馬車に揺られながら考えを巡らせる。指先の紋様を見ながら。
まず先ほど起こったことは、猫が現れた。そしてお父様の傷を治し、その後指先の紋様になった。
この猫は、お母様が言うにはケット・シーという猫型の妖精らしい。しかし普通の猫との違いが明確で、二足歩行で服を着ている。前世でのゲームの知識でいえばモンスターを狩りするゲームに出てきた猫のような感じ。そんな不思議生物がなぜかお父様を助け、その猫は俺の手の中に入っていった。
理由は分からないが今は感謝するしかない。
考えを巡らせていると、
「フェニア?その………手のほうは大丈夫?指先に不思議なあざができてるけど………。痛くはない?」
お母様が手の心配をしてくれた。
「はい。痛くはありません。」
「そう。何かあったらすぐに言うのよ」
「わかりましたお母様」
そう言って痛みはないことは伝えた。しかし痛くはないだけで違和感がある。熱を持っているような感じだ。触ると特に熱は感じないが。
とまあ猫に関してはこんなところか。次は肝心のお父様の傷が治った現象だ。
多分あれは魔法、しかも治癒魔法だ。途中お父様が空に軽々と飛んだのも多分魔法の類である。あの時は冷静でいられなかったから理解できなかったが、いまは状況を整理できる。
まず魔物からだ。ヴァイパーホークと名前の通り毒を操っていた。しかも口から吐くのでなく羽を広げる動作のあと空中に毒の玉をだしていたのであれも魔法だろう。しかも射出まで速かった。お父様も負けじと打ち返そうとしていたが相打ちになっていた。
この世界ではこれが当たり前なのか?お父様は辺境伯だからさすがにここまでの戦闘力は基準にしちゃだめか。ヴァイパーホークも生態系上位に位置する生物だし。
やはり異世界。自衛のためにさっさと魔法を覚えたい。この一件でお父様やお母様からの許可をもらうのも比較的楽になりそうだ。
それにしてもよかった。生まれ変わって早々、親が死んでしまうなんてことがなくて。
そうえば前世の親父と母さんは元気にやっているだろうか………。先に死んでしまうとはなんと親不孝ものなんだ。
とまあ前世のことはあまり考えないようにしないとな。色々と辛くなる。
いろいろと思考をしているうちに自宅についた。
自宅についてからは館内は大慌て、お父様を自室へ運び、医者を呼んだ。ヴァイパーホーク毒を浴びたが命に別状はなかった。一安心であるがなかなか目を覚まさなかった。それとお母様から一応手を医者に見せたほうがいいと言われ見せることとなったが、医者も初めてのことらしくこれがなんなのか分からなかった。
なんだかんだ、今日は疲れた。本当に疲れた。さっさと寝たい。そうして俺は寝室で泥のように眠るのであった。
――――――――――
ん?
なんだこれ?
ああ今日は休みか。今日は暇だから動画でも見るか。
癒しの猫動画でもみよう。
「~~~ニャーニャー~~~」
「ケットシーチャンネルの看板猫ことケットシーのジルヴェですニャー」
「なんとビックリ!今日は赤嶺集くんに会うことができたにゃ。では赤嶺くんを呼んでみますにゃ」
「初めまして赤嶺くんことフェニアくん。ようやく君と出会うことが出来て我はうれしいニャー」
「俺ケットシーなんて初めてみたよ。まさかお父様が助かるなんて思ってもみなかったけど助けてくれてありがとうな!」
「ふっふっふ。感謝は嬉しいが当たり前のことをしたまでなのにゃ。それに打算的なこともあるにゃ。そうえば契約がまだだったにゃ。早く契約の同意が欲しいにゃ」
「もちろん!お父様を助けてくれたしいいよ!でも契約ってどうするんだ?」
「こうするにゃ」
ガブリッ
「いて!って思ったけどそんなに痛くはないな。これで終わり?」
「これでフェニアと我は運命共同体だにゃ、これでようやく約束が果たせるにゃ」
「ああ。そうだな。これからよろしく」
「よろしくにゃ」
――ジジッ――
「続い………のニュー………です。…日未明……都内の……で………が………発見………警察では現在………を
……………です」
――――――――――
………ん。
「ふぁああ」
ん?ああ夢か。
んーなんか変な夢を見た。昔の記憶と今の記憶が混ざった感じだったな。やっぱり夢って変なの多いよな。そうえばケットシーが契約とかって言ってた気がするけど。
ふと手に目をやると昨日まで灰色だった指先の紋様が赤色に変わっていた。
「なんだこれ!?色まで変わっているよ………」
赤色の紋様をみてまた頭を抱えるフェニアであった。
これはいろいろと調べる必要があるな………。お父様が目覚めたら新しい本を借りて調べてみよう。
そうして起き上がり、お父様の様子を見にお父様の寝室に行った。
お父様の寝室に行くと、お父様が目を覚ましていた。
「おお!フェニアよ。朝から来てくれるとは嬉しい」
「お父様!お目覚めになられたのですね!ううっ………良かったですー!!」
またしても泣いてしまった。
「体のほうは痛みとかはないですか?」
「ああ。不思議と痛みがない。クラリッサから聞いたぞ。どうやらケットシーが助けてくれたらしいな。その後フェニアの手の中に入っていったとか。どうだ?見せてくれないか?」
そう言われて色が変わっていることが気になり、少し戸惑ったがどちらにせよ後からバレるので見せることとした。
「ええと、朝起きたら赤色に代わっていたのですが、こんな感じです」
そうして指先をみせる。
「ほう!これは妖精の契約印だな。実際に目にするのは初めてだ。これは妖精族と契約することで体の一部に紋様が刻まれるというものだ。これは今後フェニアが魔法を使うときに役に立つであろう」
「契約印というのですか。それに”魔法”にも役に立つとは、いいことを知れました。ところでお父様、すこしお話ししたいことがあります」
この千載一遇のチャンスをものにできるかどうかは俺次第だ。
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