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初売りの福袋とお雑煮


 お正月明けのカテリーデンの浮ついた空気感が醸し出されるように会場内にフワフワと浮きながら落ちてくるシャボン玉を福袋を並べながら見上げる。

 7色にじんわりと色を変えて、光の屈折で色を強く反射する。

 そんなキラキラした様子をまるで子供のようにいつまでも眺めていたい気持ちになるが、カテリーデンは時間との勝負。

 芽依は、端から4種類の福袋を出し、フェンネルとハストゥーレはカップに入ったお雑煮を並べる。

 相変わらず暴れる胸元を晒しているパピナスは、なぜかポスターのようなものを作っていたようで、福袋やお雑煮について無駄にリアルなPRが激しいポスターを飾っていった。

 飾る度にフルリと胸が揺れて客や隣のブースの売り子の視線を釘付けにしている。


「え、いつのまにポスター」


「メイ様の素晴らしい福袋とお雑煮宣伝しなくてはと頑張りました」


 褒めてください……とお尻をクイッと出してくるパピナスに芽依は頭を抱えると、なぜかゴボウが出現。

 何を狙っているか分かった芽依は、すぐさまゴボウをへし折った。


「あぶねっ! ゴボウはマジであぶねっ! 」


 戦闘中、お尻を串刺しにするマンのゴボウを暴れる前に確保して足で踏み潰している。

 フェンネルも顔を引き攣らせ、ハストゥーレは恐怖に震えてメディトークの腹部に自主的に避難した。


「ご主人様の為でしたら、ゴボウで刺されるのもやぶさかではありません」


「ダメだからねっ?! 」


 頬を赤らめてサラリと金髪が肩から落ちる姿を見た。

 綺麗なお姉さんなのだ。なにを間違えてこんな性格になってしまったのだろう。

 いや、それを含めてパピナスなのだが……と芽依は困った人だなぁと眉尻を下げて笑う。

 芽依の庭にいる人の大半は困った程に芽依を好きで、その愛情表現は度が過ぎている。


 ふらりと芽依はメディトークにしがみつくと、ん? と振り向き芽依を見る。


『なんだ、疲れたか? 』


「…………いやぁ」


『なんだよ』


 クスッと笑って芽依をしがみつかせたまま商品を並べていく。

 そんな芽依たちを、ポカンと見ている隣のブースの人。


「…………え、なんだこの集団」


「あら、あなたメイちゃん知らないの? 」


 ジワジワと福袋購入者が集まりだしていて、自分の方に来た! と思ったが、全員芽依の客だというのも衝撃で。

 ただただ呆然と芽依や周りの家族たちを見る。

 そんな売り子の少年に、いつものおば様が話しかけた。


「……おれ、ガイーシャから引っ越してきたばっかだから……」


「あら、遠い国から来たのねぇ。随分着込んでいると思ったら」


 おば様がびっくりして話をしていると、周りの客も売り子の少年を見だした。

 いくら冬で寒いとはいっても、まるで雪だるまのように着込んでいる。

 カテリーデンでもそれなりに温度調節をしているし、入口から1番遠いので暖かい方だ。

 芽依達もコートを脱いでいる。


 ガイーシャとは、ドラムストから遠く離れた年中暖かい国で、四季のない温暖な国。

 人柄も穏やかで、争い事の好かないガイーシャの民はいつもあらあらうふふと笑っている人が多い。

 だが、周りの国から見たら、それが異様にも見られる。

 果物の実りが良いいい国である。


 そんな所から引っ越して来たという売り子の少年。

 国柄の柔らかな性格ではなさそうだ。


「この人ら、一体なに? 」


「今後もドラムストで生活するなら覚えてる方がいいわよ、移民の民のメイちゃんと、その家族や奴隷よ。みんな仲良しだけど、メイちゃんに手を出したら怒られるからね」


「もうカテリーデンって言ったらメイちゃんだよなぁ」


 うんうん、と頷く客たちの話を聞いている売り子の少年は、ポカンと芽依を見ている。


「あ、おば様」


「メイちゃん。待ってたわよ福袋! 」


「並べ終わったからどうぞ」


 にっこり笑顔で普通に話す芽依。

 ガイーシャにも移民の民はいたが、話す姿は初めて見るし、笑顔でクルクル動いている姿にポカンとするのが止まらない。

 次々に来る客たちを全員で捌いているのを信じられない……と見ていると、懇意にしている人外者達や、人も現れる。


「おー、メイー」


「カイトくん! あけましておめでとう」


「お、おめでとう……変な挨拶だなぁ」


 あはは、と笑って肉の福袋を買う呉服屋うささんの店主カイト。

 以前血吸いの蚊によって吹き飛ばされた屋根も修復されて店も再開している。

 芽依の行きつけのお店である。

 大好きな家族の売り子用コスプレ衣装や部屋着の大半はうささん商品。


「また今年もご贔屓に! 」


「近いうちに顔出しまーす」


 バイバイと手を振る芽依。

 その後にはふらりと立ち寄ったアキーシュカ。


「やあ、来たよメイちゃん。へえ、これが福袋かい? 」


「わ! アキさぁん!! 」


「まあ、アキーシュカ様、いらっしゃいませ」


 これには芽依とパピナスが思いの外反応して、2人ともアキーシュカの前に移動する。

 相変わらず性別が間違えているかのようなアキーシュカのイケメンスマイルに、カフェ常連客がザワつく。


「まさか、アキ様と懇意にしているの? 流石メイちゃんだわ……」


 と、どこかから話し声が聞こえる。

 アキーシュカの人気は凄いようだ。


「そうだな、果物と野菜のをくれるかい? 」


「はぁい」


「メイちゃん、新作ケーキを試しに作るから今後顔を出しにおいでよ。試食して感想を聞かせてくれるかい? 」


「わわ! いきますいきます! メディさんいーい? 」


『誰か連れてけよ』


「はーい! 」


 ワクワクと目を輝かせる芽依に、クスリとアキーシュカは笑う。

 手を伸ばして優しく頬を撫でるアキーシュカに目を奪われた。


「いつでも待ってるよ」


「はい、お触り禁止だよアキーシュカ! 」


「おや、手厳しい」


 フェンネルによる妨害があり、芽依は抱きすくめられて離された。

 クスクスと笑うアキーシュカは、福袋ありがとうと笑って離れて行く。

 丁度来たメロディア達と鉢合わせて、アキーシュカと少し話したあと、芽依達の前まで来た。


「あけましておめでとう」


「あけましておめでとうございますユキヒラさん、メロディアさん! 」


「今年もよろしくね」


「はい、よろしく! 」

 

 そう言いながら、予め言われていた肉と果物の福袋を手渡す。

 そして、カップに入ったお雑煮をニヤニヤしながら見せた。


「どうですかぁ? メディさん特製お雑煮ですよぉ? 」


 ドラムストに馴染みのない餅を、周りは遠巻きに見ていた。

 まだ、誰も手を出していないのだが芽依は確信しているのだ。

 ユキヒラさんは、絶対に、買う!


「買ったぁ!! 」


「毎度ありぃ!! 」


 よしきた!! と2人分入れると、もっとちょうだいと催促。

 それを見て、周りの客も顔を見合せて購入していった。

 芽依の新商品は、こうして買われて行くことが多い。

 



 

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