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閑話 セルジオの髪結い



 移民の民の芳しい香りは、なんの対策もしていなければ広範囲にダダ漏れになる。

 それを防ぐために、香り消しの外套やベール、ハットといった身につけるアイテムを使用する。

 それは芽依も同じで、以前は自分の庭でさえベール必須であった。


 しかし顔を見たいがためか、セルジオはどんな方法を編み出したのかわからないが、髪結いの最中にその編み方に香り消しの魔術を一緒に編み込む事に成功した。

 いきなり部屋に現れるセルジオである。

 風呂上がりの濡れた髪を乾かして欲しいと頼まれるくらいに無防備な姿を晒す芽依は、セルジオの前ではあまり匂い消しをしていない。


 慣れなのだろうか、それとも信頼しているのだろうか、それは分からないがこのまま何もしない芽依を放置しないためにもかなり研究をして編み込む方法を見出したのだ。


「………………痛くないか? 」


「大丈夫です……可愛い」


 手鏡で編み込まれた髪を見る。

 器用にリボンを巻き込んで漆黒の髪に赤いリボンが映える。

 くるりと巻いた髪を指先で遊ぶ芽依を、櫛を片付けながら見た。


「…………これである程度は抑えられる。庭にいる時、この髪の時はベールを外してもいい」


「本当ですか? やっぱり視界を遮っちゃうから気になるんですよね」


「外套をずっと着ているのもつらいだろう?」


「はい」


 コクコクと頷く芽依に小さく笑みを零して芽依の頬を撫でる。

 ん? と首を傾げると更に笑みを深めた。


「今日はなにをするんだ?」


「今日はお米の苗が手に入りそうって連絡を頂いたので、シャリダンに行こうと思っています」


「シャリダンか」


「はい。セルジオさん、お米が収穫出来たら一緒にご飯を食べましょうね」


「…………そうだな」


「お米が出来たら日本酒も作りますね」


「酒か? 」


「お酒です」


 ふっ……と笑って撫でていた手を離したセルジオは、楽しみにしていると、微笑んだ。


 最近は本当に、この精霊との時間が取れない。

 芽依も忙しくしているが、やはりこのじわりと上がる気温を調べているようで朝のこの時間もかなり急ぎ髪結をしてくれる。


 少し斜めになったリボンを直したセルジオが立ち上がり、また頬を指の背で少し撫でてから部屋を出ていった。


「………………撫でられちゃった」






 この後、庭に行った芽依を見たフェンネルは顔を赤らめ叫び、ハストゥールは目をまん丸にして跪き祈りだした。


「ちょっ! ハス君?! え? なんで拝んでるの?! 」


「メイちゃぶふぁ!! ふぁいなぁーー??!! 」


「なんだってーーー?!」


『何叫んでやがる、うるせぇぞ…………あ? メイか。似合うじゃねぇか……可愛いな』


「ぐふぅぅぅ!! 」


 ふわりと撫でるメディトークの強打撃な見えない攻撃にクリティカルヒットした芽依は胸を抑えて片膝をつく。

 今日も今日とて、芽依の庭は仲良しであった。







 

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