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ミチルの現状


 急ぎ室内を整えミサの準備を行なうシーフォルムの信徒達を見てから、芽依はミチルがいる小部屋へと向かった。

 そこにはアリステア達もいて、グッタリとしているミチルの様子を見ていた。


「メイさん!……大丈夫でしたか?」


「メイ?!」


「怪我はないか?」


「私はだいじょ……う…………」


 ミチルを見ていた3人が振り返った事に返事を返そうとしたのだが、最後に見た時よりもグッタリとしているミチルを見てヒュッと息を吸う。

 体調が悪い理由でグッタリとしているようには見えなかったのだ。

何より、腹部から出ている大量のツタに目が行く。

 一瞬でもメディトーク達がミチルに力を貸すために芽依から離れる事が嫌だと思った自分を恥じた。


「ミ……ミチルさん!!卵は?卵は取れなかったの?そのツタは……」


 振り返りメディトークを見ると、ハストゥーレが隣に来て肩を叩く。


「あちらに卵がございます。無事に体内から取り出せました。ツタは取り出す前段階で必要な処置でした」


「そう、なんだね……無事なんだね、よかった……でも、ミチルさんが」


 卵を取り出した後も体調は良くなっていないようで意識は戻っていないようだ。

 青白いが指先は緑色にジワジワと変わっていく。


「毒を受けているようだ」


 アリステアが言うと、芽依はハストゥーレの服を引っ張る。

 かしこまりました。と返事を返してすぐにミチルの様態を診る為に手を掴み顔を見る。

 それにピクリと反応したミチルが目を開きハストゥーレを見た。

 瞳が黄ばんでいて、充血している。

 体温も下がっていて触れる指先が冷たい。


「…………ハス君、どう?」


「…………はい、複数種類の毒です。卵がひび割れこの方の体内から幾分か移民の民の力を直接吸い上げ、元々持っていたシロアリの毒を底上げし複雑にしております。卵のひび割れから吸収し毒を強化し巡回してこの移民の民の体に毒を排出しております。…………食べるのに体を麻痺させ弱らせる為かと」

 

 芽依を見て答えたハストゥーレに眉を寄せる。

 それはシャルドネとほぼ同じ答えだったようで間違いでは無いようだ。


「…………毒、ですか」


「最初は4種類の毒だと思いますが、それが複雑に重なって新たな毒を作り出しています。4種類を消すのは問題ないのですが、新しく作り出された毒を無力化するのは少々時間が掛かりそうですね」


 シャルドネが芽依を見て教えてくれる、その内容は思ったよりも良くはない。

 シロアリに囲まれ攻撃をされて、卵を植え付けられて命を危うく落としそうになる。

 それを免れたと思ったら、今度は毒だなんて。


「…………ミチルさんは今後どうなるんですか?」


「移民の民の状態を見て、不具合があればこちらで対処も可能だが、基本的には伴侶である人外者が対応する」


「それが伴侶を得た人外者の矜恃であり、他の人間や人外者から弱った移民の民を護る術だから……だが……」


 アリステアが今までの対処方法を教えてくれて、それにセルジオが付け足す。

 ミチルの伴侶であるレニアスを見ると今でもダラダラと涙を流して冷えたミチルの指先を握っているだけだ。


「………………ミチルさんの伴侶って弱いの?」


 ズバッと聞いてきた芽依に、フェンネルは下位だよ。と教えてくれる。

 下位であっても、伴侶を得るのは自由だが移民の民を守り抜くのは高位の人外者よりも難しく亡くしやすい。

 だからこそ注意深く見なくてはいけないのに、位が低いほど伴侶が体調を崩した時に動けなくなる。


「………………どうするのかな」


「どちらにしても、毒抜きをしなくてはいけません。既に体力も落ちていますし、早めにしなくてはせっかく卵を上手く取り出せても命を落としかねませんね」


 腕を組みミチルを見下ろしながら言うシャルドネ。

 表情は常に冷静で、いつも穏やかに笑ってくれる姿とはまるで別人で芽依は眉を下げた。


「…………シャルドネ、さん?」


「はい、どうしましたか?」


 冷たい眼差しでミチルを見ていたシャルドネだったが、芽依に声をかけられ微笑んで柔らかな声色で返事を返す。

 いつもと変わらないシャルドネだが、やはりチラリとミチルを見る眼差しは冷たい。


「…………えっ、と」


『毒抜きは誰がどこでやるんだ?』


「領主館に1度連れて行き対処しようと思っている。だがな、新しく出来た毒についてすぐに毒抜きは出来ぬかもしれない。そうなると……」


 眉を寄せてミチルを見るアリステアに、芽依は顔を青ざめさせた。


「…………死んじゃうんですか?」


「…………いや、まだ毒の効果がわからぬからな、致死の毒とも言いきれない。まずは、大広間にある食事を少し口にさせてから領主館に運び毒の特定からだ。幸いにも目を覚ましたしな」


 祝福のかかった食事を飲食する事で、ミサの祝福がしっかりと身体に定着する。

 その後領主館に運ぶ手筈をしていて、セルジオが果実水を丁度持ってきた。

 ゆっくりと口に流し込み、ミチルが噎せること無く嚥下したのを確認した後、どこからが現れた担架に乗せ、シャルドネと共にすぐさま転移していった。


「メイ、心配だと思うが今すぐ何か出来る事はない。先程の事もあるから、顔を知れているお前が大広間にいないのは不安を煽ってしまう可能性があるからな、少しの時間で構わないから食事を楽しんでくれないか」


 眉を下げて疲れた様子で話すアリステア。

 アリステアも同じく、笑顔を振り撒き周りの状態などを聞き込みながら少しの飲食を取らねばならいのだ。


 芽依は大広間に視線を向けてから小さく頷いたのだった。

 







 

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