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地雷

本日3回目の更新です


 芽依は庭持ちの移民の民だ。

 芽依は普通の移民の民と重要度が変わってしまっていた。

 既に国のデータに乗っている情報は庭持ち、奴隷2人所持。

 シロアリによって否応無く減らされた為、今や貴重な庭持ちの移民の民、しかもその収穫数は群を抜いている。

 そして、2人の奴隷も希少な人達で、その時点で芽依という使い勝手の良い移民の民が出来上がってしまった。


 そんな芽依は、実は蓋を開けたらしっかりと物事を把握しようと奮闘し、意見を発信できる人物だ。

 便利な箱庭を所持していて、管理された庭を2つ持つ。

 さらに、人外者を惹き付ける魅力的な人で、奴隷2人は本心で芽依に絶対服従。

 そして、戦闘も出来る荒ぶる野菜付きという、まさにパンドラの箱のような人物だ。


 この、国のデータだけを見て興味を持ち、通常の移民の民の感覚で話しかけたら誰でも等しく返り討ちになるだろう。

 この男のように。


 芽依は慈悲深い性格では無い。

 好き嫌いがしっかり分かれていて、自分で手を伸ばさない限り、誰かを助けることは無い。

 その食指が動かなければ、たとえ死ぬことになろうとも助けることはないのだろう。


 それが今回は、大飢饉に直面したに過ぎないのだ。


 芽依だって無駄に命が散るのを見てはいたくない。

 だが、知らない相手を助けるよりも、メディトークをフェンネルやハストゥーレを、アリステア達領主館の人を。

 そして、ドラムストを守りたい。


 芽依が助けるのはこちらが優先になるのは絶対なのだ。


「なので、移動も支援もできません」


「っ………………結局は保護され助けられている下賎な者の分際で…………カハッ!」


 ガッシャン!!と派手に音を鳴らして倒れ込んだ男。

 その男を無表情で見下すフェンネルとハストゥーレ。

 背中にはフェンネルの足が乗っていて、何か魔術を使おうとしたのだろうか、右手をハストゥーレが掴んでいる。


「なんなの、喧嘩売りに来たわけ?殺すよ?」


「ご主人様は清廉な方です。貴方のような醜いものは近付けたくありません」


「殺していーい?メイちゃん」


「だめです、アリステア様が良いとは言わないよ」


「ですが、ご主人様に似つかわしくない表現をされていました。それに、何かをしようとしていた可能性が高いです」


「……………………じゃあ、僕がしてあげようか?気付かれないようにグサってするの得意だよ。…………あ、正体がバレないように細切れにした方がいいかな?」


 服を引っ張り参戦表明するニア。

 可愛さにノックアウトしそうだが、言う言葉は中々にグロい。


「ありがとう、大好き。でも本当に大丈夫だよ。相手を見下して命令することしか出来ない人相手に少年の綺麗な手を汚す事ないよ」


「………………綺麗な、手?」


 沢山殺してきたこの手が?と、首を傾げて自分の手を見るニアの可愛さに目を細めてから、怒りに溢れているハストゥーレとフェンネルを見る。


「ほら2人ともこっちに帰ってきて。怒ってくれたご褒美をあげるからね。何がいい?物がいいかな?食べ物かな?それとも齧る?」


「齧るはご褒美に含まれるの?!」


「……………………齧る……」


「ちょっ……ハス君まさか、喜んでる?!」


 渋々怒りを収めた2人が芽依に従い戻ってきた。

 メディトークは武力行使しなかった芽依を褒めるためか、牛乳プリンを取り芽依に渡すというこの場に似つかわしくない事をして、カテリーデンの常連はなぜかほんわかしてしまう。

 その中に、頭を数回撫でるセルジオと微笑んで芽依を見るシャルドネ。

 同じく牛乳プリンを持つブランシェットが芽依と顔を見合せ笑うという芽依への支持を見せる。

 

 これで、移民の民の芽依が自分の意思で交渉出来ること、そして奴隷や友人が助けてくれる事を深く根付かせる事に成功した。

 

「………………大切な祝祭ですからね、今切るのは如何なものかと思いますよ」


 静まり返った場に聞こえた朗らかなシャルドネの言葉が1番恐怖を煽ると、震えたその場の人達にアリステアは苦笑した。


 たとえ領主であろうとも自分に関係のない人外者が相手では、何かあったとしても文句が付けれないこの世界。

 様々な繋がりが大切になるからこそ、頼む時には誠心誠意の対応が望ましいだ。


「メイを含めて庭持ちは皆、私の管理下に入っています。無理に頼んでも必ず私に話が来ますので、庭持ちが不安になるようなことをするのは皆さん辞めくださるよう。現在はドラムスト復興の為、支援物資は難しい事理解をして頂きたい」


 アリステアがしっかりと注意を促した事で、罰の悪そうな表情をする人達が多数。

 そんな中、空気を読まないパーシヴァルがアリステアに言った。


「では、救援要請をするぞ!野菜を中心に頼む!」


「………………話を理解してくれ」


『阿呆か』


 アリステアが頭を抱える中、メディトークの的確な声が響いた。


 メロディアは呆れたように芽依の背中を叩き、ユキヒラは肩を叩く。

 ミチルは手を軽く握り笑って、あまりこちらに話しかけないレニアスすら哀れみの顔を向けてくれた。


 ドラムスト外に住む人達は、この関係性だけで以前通達された正しい移民の民への対応を思い出す。

 移民の民の変化した様子を初めて目の当たりにして、本当だったのだと理解した。

 これにより、予測していたよりも芽依という移民の民の異質性や周りの人外者からの評価、アリステアが大切にする何かを持つのだと、他領や他国に知られる大きなきっかけとなった。


 

 







 

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