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現状把握

本日2回目の更新です


 穏やかな食事はまだ続く。

 芽依の庭の話やメロディアの庭の話、今後の収穫の見込み等、今すぐ領民に必要な食に関する話を重点的に話し、ふぅ……と息をついて飲み物を飲んだ。


「………………ふむ。まだ長期的に見る必要はあるが、回復の見込みはあるのだな。安心した」


「メイさんの尽力のおかげですね」


 ふわりと笑って言うシャルドネにピクリと反応したセルジオがジロリと見る。

 それに笑うシャルドネ。


「どうしましたセルジオ。何か言いたいことでもありますか?」


「………………コイツを名前で呼ぶな」


「おや、それを貴方に言われる筋合いはないと思いますが?」


「それは許せる範囲から逸脱されているだろう」


「貴方も名前で呼んでいるのに?」


 バチバチと言い合う2人にオルフェーヴルは目を見開きアリステアを見る。

 アリステアとブランシェットは、またかぁ……と苦笑していて、オルフェーヴルに気付いたアリステアは、はは……と乾いた笑みを見せた。


「この2人はメイを挟むと良くこうなるのだ」


「お嬢さんは魅力的な方ですからね、仕方ないのかしら」


 うふふ、と笑うブランシェットもいつもの事だと料理を口にする。


「…………君は……人外者の目を惹き付けやすいのかな。伴侶から見たらもやもやしてしまうかもしれないな」


 困った様に笑うオルフェーヴルに芽依は首を傾げる。

 そして、カラフル野菜のテリーヌを1口食べ美味しさにフルフルとする。


「伴侶ですか…………伴侶ねぇ…………」


 悩む様子の芽依を思わずじっと見るセルジオとシャルドネ。

 うーん、と顎に指先を置いて考えるのだが、芽依のイメージはどこまでも家族達と庭の世話をしているものだ。


「…………今はいらないですね」


「要らないのか」


「大事な家族がいますから」


「………………蟻と奴隷2人……か?」


「……なんですか、喧嘩売ってます?大根様が相手しますよ」


「大根……?」


 可笑しげな返事を返した芽依にオルフェーヴルは首を傾げる。

 普通の大根しか知らない人物なのだ、紳士な大根様を見たらきっと新しい扉を開くのではないだろうか。







「では、私から話をしますね」


 カタリとカトラリーを置いたシャルドネが微笑みながら話し出した。

 シャルドネが今対応しているのはファーリア内の他領地の内情確認である。

 どうやらあまり、いい状況ではないようだ。


「まず、アリステアが王から言われている食料支援の話がどれ程緊急性があるかから話をしますと、キリスラディアの3分の1がすでに危機的状況に陥っていますね。あそこは移民の民も少ない上に人外者は協力的ではありませんから、それも予想内ではありますが。次にネーレウスとガイウスですが、食料難ではありますが上手く他のものを利用し凌いではいるが時間の問題のようです。特にガイウスは如実ですね。ネーレウスは人外者の協力を得ています」


 知らない場所の名前が出てきたぞ、と芽依は姿勢を正した。

 それを見たシャルドネは淡く微笑む。


「説明不足でしたね。では、簡単に。キリスラディアもネーレウスもガイウスと同じ比較的ドラムストから近いファーリア国内の領地です。ドラムストが国内の一番端にあたり、そこから……そうですね、ファーリア国王都の方角に向かって3つの領地があります」


 テーブルを指でなぞると、ぽわりと線が浮かび上がり、ぐるりと囲ったドラムストと書かれた場所を指さす。

 

 ドラムストは、領主館から真っ直ぐ進みカシュベル、砂地を挟みペントランがあり、カシュベルの逆隣に森を挟んでガヤとシャリダンがある。

 森は広く、奥に行けば行くほど野生化した強い幻獣が生息していて、シャリダンの人達からはいい狩場と認識されているが通常は立ち入り禁止。


 その森のずっと先にミカがいるマール公国があり、今回シロアリ被害は免れている。


 そのマール公国の8割は海で囲まれ、徒歩では数週間はかかるだろう距離ではあるが隣接しているネーレウスも3割程は海に面している地域に存在している。

 こちらは通常海と共に生活している穏やかな気質の人達が多いらしい。

 人外者も定住しやすく比較的手を取り合って仲良く過ごしているようだ。

 だからこそ、人外者が転移で野菜購入に向かって食いつないでいるらしい。


 そこから逆側に進むと巨人族が多く住むガイウス領があり、こちらは1回の食事量が多い為いつも備蓄にまで手を出してしまう程食べてしまう人達ばかりの為、今回のシロアリ被害にはトホホ……と頭を垂らし備蓄放出が加速気味で支援をとドラムストに話が来ている。

 これについては、話は来るだろうなと最初から予想していたアリステアは息を吐き出した。


 そして、ガイウスから離れた位置にキリスラディアがあり、シロアリは直線的に王都がある場所に進んでいる為ファーレンのほとんどがシロアリ被害にあっている状態であった。


 今1番危険視しているのはキリスラディアである。

 観光地として場を広げた少し変わった領地であり、人外者は休息として来るものの定住はしない地域である。

 人が毎日入れ替わり来てはガヤガヤと騒がしいキリスラディアに腰を据え落ち着いて住む考えは人外者にはあまりないようだ。

 また、人の入れ替わりが多い為足が付きにくく、気紛れに呪いや悪戯を仕掛けやすい特徴も持っていた。


 そんな人外者にとって、気に入ることはあっても強い思い入れの少ない場所でのシロアリ被害があったと知り、食料不足になるのも分かりきっているので人外者や人間の集客自体が今は低迷していた。

 食料がないので、提供も難しい状態ではあるのだが、営業しないことには領地維持ができず危機的状況らしい。


「その為、特にキリスラディアとガイウスから救援要請が来ています」


「………………メイがいるからだろうな」


「私ですか?」


「そうであろうな。各領地の移民の民の人数や能力は予め国に通告されている。ドラムストが近年豊作なのもメイが来てからだから分かりやすいのだ。更に、ガイウスへの毎年の支援と引き換えに白の奴隷を受け取っている事も知られているから、支援出来るくらい今も野菜があるのでは?と勘ぐられているのだ…………実際にドラムストの領民他の領地よりも待遇がいい」


「だからと言って簡単に支援したものなら、他の場所からもと話が来てしまってドラムストが自滅しかねないの。自領の食料危機にまだ対応出来ていないのに他領に支援だなんて無理な話だわ」


 首を振って話すブランシェットにアリステアは頷く。

 そんな支援要請が昼夜問わずアリステアに入るのだそうだ。

 ファーリアや、3つの領地以外からも。

 ドラムストの復興に力を入れたいのに、他からのちょっかいが来てイライラしてしまうらしく、セルジオは特にらしい。

 日をすぎる度に顔つきがイライラしていくのが分かる。


「…………どちらにしても今すぐは無理だな」


 暖かなストレートティを飲み言うセルジオにシャルドネも頷いた。


「メイさんの備蓄放出に助けられ、ドラムストの備蓄で今賄っている状態です。収穫が安定しなくては支援なんて無理な話です」


「やっと街も落ち着いてきた所でいらん火の粉を持ち込んで欲しくはないものだな」


 2人の相性の悪さは今更なのに、こうした危機や、仕事を始めたらしっかりと切り替えお互いの意見を聞ける大人の対応が出来る2人は、存外に仲が悪い訳では無いのでは?と想う。

 しっかりと自分を持ち、発言が出来るからこそぶつかる様子に芽依は胸がムズムズしてしまう。

 気軽に仲良しですね!なんて言ったらシャルドネに笑顔で圧力を掛けられ、セルジオに頭を叩かれ変なパジャマを用意されそうだ。


 



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