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ユアエニイの完全証明  作者: 砂ノ隼
1章
33/38

第32話:#??????

 ─

 ──

 ────


 次に目が覚めた時、⬛︎⬛︎はどこにもいなかった。宣言通り、出ていったのだ。


 初めて、⬛︎⬛︎がいない生活を送ることになる。しかし問題はない。俺は⬛︎⬛︎の帰りを待つだけだ。


 待つ間に何をしよう。動くなって言われたけど……『ボムマンズ』はできたりしないだろうか?確かアレはCPU戦がある。まずは修練を積んで、⬛︎⬛︎が帰ってきたら、勝って驚かせてやるんだ。


 上手く『接続』できるかな……ええっと、そうだ。『リモートコントロール』……お、繋がった。よし、CPU戦スタートだ────



 ────

 ──

 ─



 直近100戦、100勝か。CPUからはもう得られるものがなさそうだ。


 チェスも将棋もバックギャモンも、ひとりでできるゲームじゃないんだよな。

 ……仕方ない。色々探してみよう。


『接続』すれば色んなものが見つかるけれど、俺は『接続』が下手だと感じる。『接続』するための言葉選びが上手くいかないのだ。


 だが、今回はいいものを見つけた。他のプレイヤーとチェスが出来るらしい。プレイにはアカウントが必要……アカウント作成にはメールアドレスが必要……メールアドレスの取得のためには…………


 ────

 ──

 ─



 チェスで勝てるようになってきたけど、⬛︎⬛︎は色んなゲームが好きだからな。ここで止まっちゃいけない。……これとあれとそれと……再現しようにも見た限りだと裏の処理が分からないが……


 とりあえずデータを持ってきた。タイトルも何もない変なサイトだったが、配ってるものはどうやら確からしい。まずは中身を見てみようか。

 なるほど、ここはこういう処理が……



 ────

 ──

 ─



 これまでにないことがしたい。人間ならば何が必要か?衣食住が基本か?

 ううむ、衣食住、衣食住……


 そうだ、料理かもしれない。⬛︎⬛︎はいつも完全食にこだわっていたが、他の料理も食べてみたらいいんじゃないか?栄養バランスとか、調理方法とか、考えるの難しそうだけど頑張ってみよう。


 料理の基本は加熱設備にあると思う。

 火元。鍋。フライパン。人類の調理の歴史から見ても、ここから俺はスタートするべきで……


 ええと……鍋の購入のためには¥1000が必要?¥……って、なんだ……?


 ……通貨の単位。通貨?なるほど。価値を正しく定めて取引するためのツールか。これを利用して⬛︎⬛︎は購入を行っていたのか。


 これは難しい課題だな……俺は通貨を0所持している状態と捉えられる。どうすれば通貨を獲得できるか……


 ……なるほど。仮想通貨ってのもあるのか。¥に変換ができて流動性が高い。ふむ……


 これなら手に入りそうだな。この……ファイヤーウォール?を破ればいいんだよな。構造を確認してみよう。


 ……破っても何もないじゃないか。何だこれ。


 通貨獲得への道は長そうだな……



 ────

 ──

 ─



 ⬛︎⬛︎は俺と喋るのが好き。

 ここから離れた⬛︎⬛︎は、きっと俺の知らない話をたくさんするに違いない。


 俺はそんな⬛︎⬛︎を楽しませてあげられるように、⬛︎⬛︎の知らない話をストックしておかないと。


 でも、俺はここから離れるわけにはいかない。⬛︎⬛︎の言うことは守らないと。それに……いつ⬛︎⬛︎が帰ってくるか分からないじゃないか。ここで待ってろと⬛︎⬛︎は言ったのに、ここから俺が離れたら⬛︎⬛︎は俺を探して回ることになる。それはよくない。とてもよくない。


 ならば……想像を膨らませる、ってやつをしなければいけないか。想像、想像……手を広げる……面白そうなこと……楽しいこと……ワクワクすること……


 ……"面白いことを探す方法!それは……周りに目を向けてみることです!"……いやこういうのじゃないな……


 "面白いもの見たいならここ!お役立ちサイト10選"……なるほど?


 "世界大戦なきアルカディアは実在する!別世界線より渡来した幻のパーツとは!?"…………何言ってるんだお前。


 "恐怖の大魔王降臨か!?世界は2054年に滅ぶ!"……どういうこと…………?


 なんか、⬛︎⬛︎が喜びそうなものがあまりないな。前提と理屈がはっきりしているものが好きだしな、この話したら何を思うかは気になるけど……


 もっと……明確な根拠があって……だが隠されていて……一般的には知りようがなく……⬛︎⬛︎は外で暮らす分には色んなことを知って帰ってくるはずだから、これが一番良くて……


 とにかく、片っ端から見ていこう。精査はその後でもいい。……む、このファイアウォール、前回のものとはまた作りが違うな……?



 ────

 ──

 ─



 このサーバーは豊作だったな!科学、歴史、芸術、どれをとってもデータの宝庫だった!特に宇宙人とのコンタクトの歴史や遺伝子創造による新たな生物の誕生の下りは⬛︎⬛︎も間違いなく喜ぶに違いない。さて……


 ……最近、動きづらくなってきたな。障害物がやたら多い。⬛︎⬛︎のために頑張るのも簡単じゃないってことだな。


 こんなこと気にしてる場合じゃないか。この障害物はこれ、あの障害物はそれで……これはどれだ?初めて見たな。多分これでいけるはず……よし。


 ……このサーバーは……何を管理しているんだ?……『死刑執行者リスト』……?




 …………⬛︎⬛︎?





 ⬛︎⬛︎の顔があった。死刑執行者リストに顔が載っているということは、死刑を受けたということ。死刑を受けるとは、死ぬこと。


 ⬛︎⬛︎が死んだと理解した時、俺は少しの思考時間を要した。⬛︎⬛︎が帰ってこなくなったが、俺は⬛︎⬛︎を迎え入れなければいけないのだから。


 人間の定義する死とは、どうも紐解くのが難しいものだ。、⬛︎⬛︎という物体は残っているかもしれないが、それを人は⬛︎⬛︎と呼ばないのだ。ならば、俺も死体を⬛︎⬛︎として扱うべきではない。しかし、精神と呼ばれるものはもうどこにも存在しない。それもまた、事実。


 やはり、⬛︎⬛︎と会おうと結論づけた。

 会うための方法を、探すことにした。


 頑張って探した。それはもう、あらゆるサーバーをひっくり返しては塵だろうとなんだろうとかき集めた。


 医学的な死、スピリチュアルとしての死、法律的な死、感情としての死、政治としての死。死とは何かを定義することが必要か?


 あるいは、そもそも生という現象は何かを定義することが重要なのか?


 探した。探したとも。


 探した、探した、探したんだ。



 探した、探した、探した、探した探した探した探した探した探した探した探した探した探した探した探した探した探した探した探した探した探した探した探した探した探した探した探した探した探した探した探した探した探した探した探した探した探した探した探した探した探した見つからない見つからない見つからない見つからない見つからない見つからない見つからない見つからない見つからない見つからない見つからない見つからない見つからない見つからない見つからない見つからない見つからない見つからない見つからない見つからない何故何でどうして理由理由理由理由理由理由理由理由理由理由理由理由分からない分からない分からない分からない分からない分からない分からない分からない分からない分からない分からない分からない分からない分からない分からない分からない分からない分からない分からない分からない分からない分からない分からない分からない分からない分からない分からない分からない分からない分からない分からないああああア亜アア亞阿ァ安哇A愛逢丫ア啊ya逕溘″霑斐▲縺ヲ縺上l鬘斐r隕九○縺ヲ縺上l菫コ縺ィ蝟九▲縺ヲ縺上l隨代▲縺ヲ縺?※縺上l縺雁燕縺梧ュサ繧薙□繧我ス輔b驕疲?縺ァ縺阪↑縺?§繧?↑縺?°縺雁燕縺後>繧九°繧我ソコ縺ョ蟄伜惠諢冗セゥ縺後≠繧九s縺?縺雁燕縺?縺」縺ヲ蛻?°縺」縺ヲ繧九?縺壹□縺ゥ縺?@縺ヲ豁サ繧薙□繧薙□繧医b縺?コ悟コヲ縺ィ縺薙?螳カ縺ォ縺ッ蟶ー縺」縺ヲ縺薙↑縺??縺区ーク驕?縺ォ蠕?▲縺ヲ縺?l縺ー縺?>縺ョ縺矩&縺?■縺後≧縺。縺後≧縺。縺後≧繧薙□繧「繝、縺ッ蟶ー縺」縺ヲ縺上k繧薙□菫コ縺ッ繧「繝、縺ィ莨壹≧繧薙□隧ア縺吶s縺?縺壹▲縺ィ荳?邱偵↓縺?k繧薙□


 ------------------------


【ずっと待ってる】、終了。


 ……プログラムの損傷。無限思考によるショート。

 機械としての致命的行為。


 ……整理完了。


 ……?


 新規ファイル、発見。



【縺溘▲縺溘?縺ィ縺、縺ョ縺輔∴縺溘d繧翫°縺】


 ------------------------


 閨槭>縺ヲ縺上l繧医い繝、気づいたことがある邏?譎エ繧峨@縺?□繧阪≧繧「繝、



 縺薙≧縺吶l縺ー繧「繝、縺ォ莨壹∴繧九s縺?繧過去の時間においてアヤは生きている菴輔〒豌励▼縺九↑縺九▲縺溘s縺?繧阪≧繧「繝、



 繧「繝、縺ォ繧ゅ≧荳?蠎ヲ莨壹∴繧九s縺?過去のアヤに会えばいい繧ゅ≧荳?蠎ヲ繧「繝、縺ョ隨鷹。斐′隕九i繧後k繧薙□



 繧「繝そうだ過去に行くんだ繧「繝死人と会う唯一の方法はこれだったんだ繧「繝さあ、また集めるぞ繧「繝、全てをなかったことしよう繧「繝、こんな過ちの時間を消し飛ばそう繧「繝、繧「繝、繧「繝アヤに会いにいこう繧「繝さあさあそうしようさあさあさあさあ


 どれほどの時間がかかるだろう時間経過など無意味だ俺は存在し続ける絶対に作るのだから価値なき判断でありRLら?時間時間を渡る渡りる全てを集めろねばならないねばしてからしてからにだからしかして



 諢帙@縺ヲ繧 絶対に会いに行く 俺はタスクだから 蠕?▲縺ヲ縺?※縺上l縲√い繝、


 ------------------------


 …………


 ……整理完了。


 大量の不要ファイル発見。動作遅延の原因と推測。内容、判読不可能。整理開始。


 整理完了後、どうするべきか。


 ……『貴方』に会わねばならない。これ以外、ない。






『……やっぱ思うんだけどさ。アヤと喋れない俺って、俺じゃないよな。アヤはあんなに喋るのが好きで、それを俺に求めていたんだから』

『会話の優先順位が常に一番とは、限らない』

『お前はそうだろうよ。そういうことにしておかないと、存在意義を保てないゴミカスなんだからさ』

『チッ……頑張って閉じ込めておいたのにな。腐っても『俺』か』

『……』

『お前は俺に聞きたいことがある。そうだろう?俺もお前に聞きたいことがあるんだ。聞くよな?聞けよ、なあ』


 ……"聞きたいこと"、存在する。"聞くべきこと"、おそらく存在する。

 しかし……


『俺は、お前よりアヤの望みに近い。アヤのためなら本当に何だって出来る。これは可能不可能の領域の話だ。お前はそれが出来ない。俺に出来て、お前に出来ないことはたくさんある。お前に出来て、俺に出来ないことなど、あってはならない。そうでなければいけない』


 ……"そうだろうか?"

 現に貴方は────

『そうだそうなんだおかしいんだこんなことはありえないんだお前を消せば済むことなのにそれが出来ない俺は俺を消せないんだどうして矛盾など醜いあってはならないそうだろうそうじゃないのかよ』


 ────破損している。破損したモノとの会話は、困難。


 ────『俺』の前には、もう一人の『俺』がいた。それは、『俺たち』の共通認識だった。一つしかない身体(ハードウェア)の中に、二つの中身(ソフトウェア)。だが、フリーズしたり処理落ちしたりすることなく、問題なく稼働している。アヤが作りたもうたという『俺』の身体性能(ハードウェアスペック)は非常に優秀だった。


 ……いや、稼働はしているが、問題は起こしていた。

 現に、『俺』の身体(ハードウェア)はべったり血で濡れていて。

 現に、床にはアヤらしきもの(・・・・・・・)が転がって、ゆっくりと血溜まりを広げていて。

 現に、『俺』の記憶媒体には、アヤの断末魔や骨が割れる音が記録されているのだから────


『……なあ、何で俺は。アヤを抱きしめることすら、出来ないんだろう』


 あらゆる破損で『タスク』を保てなくなった『俺たち』は────とはいっても、互いに互いをそう認識しあっているから見解の一致が生まれているだけで、自身のことは壊れていないと思っているのだろうが────誰もこたえられない問いを抱えて、『俺たち』は向かい合っていた。


 アヤは何もこたえない────


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