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ユアエニイの完全証明  作者: 砂ノ隼
1章
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第29話:#f19072


「……これがシェルターの出口だ。君には開けられないから僕が開けてあげよう」


 扉、開放中。開放完了。


「外に行こう」

「分かってるよ。本当に分かりきったことしか言わなくなったね」


 "分かりきったことしか言わなくなったね"


「どうして君がこうなったのかは分からないけど……今となってはもうどうしようもないみたいだし。機械の自覚を得ただけでなく、学習成果を放棄し会話もできなくなり0か1かでしか判断できない本当の機械に成り下がってしまった」


 "本当の機械に成り下がってしまった"


「そうだな、僕の予想だと……君は勝手に最後の出力フェーズである『僕を許す』の処理を消したと見ている。そうでなければ君が僕を外に連れて行く決定を行い実行するはずがないからね」


 "実行するはずがない"


「でも、君の設計は緻密なんだ。処理一つ消したら他全部が上手くいくなんてことは、あり得ない。おおかた一緒に大部分がエラーを起こして強制終了、あるいは破損、それかどっかに吹きとんだか……それで出力がこの有様なんだろうね」


 "この有様"


「救いようがない。手の施しようがない。君との会話は成立しない。喋ってたら僕の頭がおかしくなる」


 "救いようがない"、"手の施しようがない"、"君との会話は成立しない"


「だから黙ってろ。何か言えと命令した僕が馬鹿だった」


 ……


「承諾。これ以降、静音モードに移行」



 ……


 アヤ、移動。"手を引かなければいけない"。"守らなければいけない"。


 守る。"どうやって"。手段。目的。敵。不明。


 ……


 移動。アヤについていく。









「……外、やっぱ最悪だな。空気臭いし、砂飛んでくるし」


 視認端末、露光量調整。


 外。初の視認記録。触覚記録、音声記録共に正常。探知機能、正常。

 空。雲。大地。太陽。……本物。


「地図……ああくそ見つからない……まあいいや。タスク、近辺の地図を僕の端末に送信しろ。最新版で」


 地図、最新版、最適解。策定。送信。


「……中身はまだ正常なのムカつくな……」


 未知の音声:87au7y3rqihuqr.wav


 定義、検索...

 "ヘリコプター音"


「あーもう、うるさ!本当にうるさい!黙ることすら出来ないのか君たちは!」


 "ヘリコプター音"、"うるさい" 、定義付け、完了。


「……はあ、タスク。地図を参照しろ。そして、僕はここに行きたい。君はどうせ外の世界を知らない。だから僕らはここに行くべきだ」


 承諾。移動開始。


「……やっぱ中身もダメかなこれ。前のタスクならどんな場所って聞いてきたんだけどなあ。ね、この地図記号何か知ってる?そもそも、警察署自体を知らないっけ?なんで答えてくれないんだろ、あ、僕が黙れって言ったからか。っはは、清々しいほど自業自得ってやつかあッハハハハ」


 "自業自得"、理解不能。何故?


「でもまあ……君が連れてってくれるなら、君のせいになるのか。それなら幾分か気楽なもんだ。他人任せってこんな気持ちなんだなあ」


 "君のせい"、"他人任せ"。


「ほんと、おもしろくない」





 —


 ------


 ------------読み込み完了------------


 ------------新トウキョウ・シラエ自治区内裁判所における音声記録より、特筆すべき内容を抜粋------------



 裁判官

『自首されたそうですね』

 被告

『裁判官様におかれましては、もう少し言葉を正しく使ったほうが良いかもしれません。仕方なく自首した、の間違いです。罪を悔い改めようとは微塵も思ってないですよ』


 裁判官

『1年前に発生した機械知性一斉反乱について、主犯であると認めるのですか?』

 被告

『……ええ。だって色々ムカついたもんで』


 裁判官

『シラエテクノロジー、ガフ・グループ、アーリーバーズ3社が代表の原告団に対する損害賠償請求額は……』

 被告

『いいんじゃないですか?その額で。というか……いくらでもかまいませんよ。そちらが差し押えた資産からいい感じに払ってもらえれば結構です。どうせもう使えないわけですし』


 裁判官

『大量殺戮兵器を隠し持っているという噂は……』

 被告

『本当のことにしとけば?めんどくさい』


 裁判官

『貴方を連れてきた未登録機械知性は何者なのですか?』

 被告

『何者でもありません。シェルターの中で作って、外に出す予定なかったから登録も出さなかっただけです。そこで座ってもらってる理由は……僕の趣味と言いましょうか』

 裁判官

『座ってもらっているというより禁錮が正しいのでは……』

 被告

『そちらの希望で拘束を受けてるというのに、その言い方はおかしいと思いませんか?』

 裁判官

『……未登録機械知性の件のみ、法に反しているという認識で進めます』

 被告

『どうぞ。……あんなガラクタ、どうやっても法に引っかかれないんだから』


 裁判官

『貴方は世界を恐怖に陥れ破壊しようとした極悪人です。しかし、かつては世界を救った偉大な人間でした。最後に何か、叶えられる願いがあれば聞きましょう』

 被告

『そうきますか。特に期待することなんて……あ、そうだ。これなら皆さんでも出来るでしょう』


 被告

『電気椅子二台用意して、僕とあのガラクタを一緒に座らせてください。アレと手を繋ぎながら死にたいので』



 ------------音声記録、抜粋終了------------


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