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ユアエニイの完全証明  作者: 砂ノ隼
1章
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プロローグ:白は最も汚い色

 君が崩れ落ちる様を、僕は遠くのことのように眺めていた。


 君の最期はスローモーションでエモーショナルでショッキングな……冗長なものに映るのか、はたまた何気なく等速で過ぎ去るものなのか。その答えはどうなるかを密かに楽しみにしていたけれど、その結果が何であれこれからの僕に関係はないことに気づいて、ゆるく首を横に振る。手にした『銃』をゆっくりとおろし、その場から立ち去ろうとして────


 ────倒れ伏した君へと、振り返ってしまうのだ。


 ぴくりとも動かなくなった君の姿は、さっきまでの元気な姿とは程遠い有様だ。

 ああ、そういえば。君にも血は通っていたんだよな、とか。でも血が通っているからなんなんだろう、とか。君は話してくれてこそだよな、とか。でもこれからはその会話すら不要になるんだよな、とか。

 様々な思考が頭をよぎっては、追い出して、よぎっては、追い出して。やがてはぐるぐると歯止めが効かなくなって、ため息を一つ。


 「くだらない」


 僕が望んだから、君は死んだ。それ以外の事実は存在しない。全ての行いには責任が伴うし、全ての選択には結果が伴うのだ。

 ああ、そうだ。僕が。僕が。ずっと僕が。最初から、最後まで。ずっと。選択肢がない中でずっと僕は、一本道を走ってきて。後悔はないつもりだったのに。ああくそ。


 もし、もしのことだけれど。

 あの日の僕があの選択をできたら。あの日の僕があんな選択をしなければ。


 僕と君は、一緒にいられたのだろうか。


 「……くだらない」


 ぎりと奥歯を噛み締めて、僕は『銃』を投げ捨てた。人生にたらればを持ち出すやつは、馬鹿だ。取り戻せない過去を憂いて、ありもしない未来に縋るやつは、どうしようもない馬鹿なのだ。そうだ、僕とて所詮は、馬鹿の集いの中の一人でしかない。


 ああそうだ。なんてことはない。結局はいつも通りじゃないか。

 いつも通り、僕が悪い。

 いつも通りに僕が原因で、いつも通りに僕のせいなのだ。


 「はは、ははは、アハハ…………」


 ああ、君が生きてなくてよかった。倒れて、動けなくなって、その耳が既に機能を失っていて、助かるよ。


 こんな汚い笑い声、君に聞かれたら僕はどうにかなってしまうと思うから。

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