1殺 ループですわ~
「これより大罪人!シューベラ・タクンサーの処刑を行なう!」
「……え?」
それは一瞬のこと。
私、タクンサー公爵家長女であるシューベラ・タクンサーの首に何かが触れる、直後、私の頭は飛び、視界が変化し、見えるのは、
「……オギャアァァァァァァ!!!!!!!!!??????????」
私は悲鳴を上げましたわ。
いえ、上げたつもりでしたわ。しかし、その声は悲鳴とは言えないような物。私、気付いたときには赤子になっていて、死に戻りというのをしていたんですの。
それから始まる死に戻りの運命。2度目の人生では私が間違えていたと思ったことを改善したり、未来の知識を活かして領地を発展させようとしました。が、結局それでも私は殺されてしまいます。暗殺でしたわ。
更に何度も何度も何度も何度も繰り返し。21度目の人生の終わり。
「流石ですシューベラ様。この都市が世界一の都市であることは誰に聞いても明らかでしょう」
私は領地を発展させ、人間関係を良好にし、最高とも言える結果を出しました。だからこそ、
「お前の所為で母さんは死んだんだぁ!!!」
気が緩んでおりましたわ。
頭に当たる感触。固いものが当たり、血があふれ出すのを感じます。近くの兵士達が慌てている声が聞こえますわね。
しかし、手当も虚しく私は死んでしまいました。これからは22回目の人生です。
21回目の人生、私にできることは全てと言って良いほどやり尽くしましたわ。民を幸せにして、年を発展させ、国同士の戦争が起らないように外交の根回しをして。……それなのに。それなのに、私は民に何かを投げられ、死んでしまったのです!
「オギャ~」
力なく声を出す中、私は自分の中の何かが大きく崩れ去るのを感じました。
私が一体何をしたというのか。そして、誰のためにここまで頑張ってきたと言うのか。
勿論、私が生きていくためでもありますわよ。このループを断ち切るために。……しかし、決してそれだけではございませんの。外交を整え、都市を発展させ、誰1人として飢えることのない場所を作ったのは、他でもない民のためですわ!
だと言うのに!あの民は私に石を投げ、私の命を奪いました。
きっとあの者は、いえ、あれ以外にも多くの者が、私は不要だと思っていたのでしょう。そうでないならば、誰かがあの民を止めるはずですから。
「オギャ~」
ならば。私のあの血のにじむような努力が必要ないというのならば!私は民達に地獄を届けようではありませんか!私に感謝のできない民など、苦しんでしまえば良いのですわ!!
「オギャアアアァァァァァ!!!!!!!」
そう考えてから5年後。
私は、
「シューベラを次期公爵として指名する!」
「ありがとうございますわ。お父様。必ずやご期待に応えて見せます」
次の公爵としてお父様から指名を受けましたわ。ここまで天才と言われるような力を示してきて、公爵家の下に付く多くの貴族を味方につけましたの。そしてお兄様達も説得して、全員次期公爵として争わないように約束させました。
ただ、ここまでは前回と同じですの。前回も、少しでも早く力が得られるようにこうやって動いたのですわ。ですが、ここからは変えます。ここから、この都市を、国を、いえ、世界を地獄に変えて見せますわ!!
「私、お散歩をしてまいりますわ」
「はい。お気をつけて行ってらっしゃいませ」
そのための第一歩として、私は庭に出ますの。
今回の目的は、適当な者の殺害ですわ。殺害と言うだけだとインパクトに欠けるかもしれませんが、これはあくまでも布石ですの。そこから更に虐殺を起こしてみせるのですわ。
では、詳しい内容を説明していきますわね。
計画1:第1段階として、先程も言いましたとおり適当に人を殺害しますわ。ポイントは、誰にも私が殺したことは気付かれずにやると言うことですの。と言うことで狙いは、1人でいる者ですわ。それに後ろから近づいて、首を刺すか頭を潰すかしますの。これまで何度かループの中で護身術や戦闘術を学んだこともありますから、人を殺すのも……おそらく問題ないと思いますわ。
計画2:さて、第2段階目ですの。これは第1段階の続きですわ。私は殺した者の第1発見者となり、人を呼びますの。そして、暗殺者がいるのではないかと騒ぎますわ。これを聞いたお父様はおそらく粛正、つまり、どこかに暗殺者が紛れ込んでいるということで、近くにいた職員などを全員処刑すると思いますの。これだけでも虐殺とまでは言えませんが、大量の死人が出ますわ。
計画3:そうしたらもう1度、計画1を行ないますの。つまり、私が誰かを殺してまだ暗殺者が潜んでいるということにするわけですわね。流石に第1発見者が2回目も私だと色々なことに気付かれかねませんので、殺害方法と発見者は工夫しますわ。そして、また計画2のようなことを行ないますの。私が恐怖を感じたとして騒げば、お父様は暗殺者を潰すために更に大量の粛正を行なうと思いますわ。近くにいた人間だけでなく、屋敷に仕えている方々全てを。
さて、これだけでも屋敷はかなり荒れますわ。とりあえず計画に関しましてはここまでにしておきましょう。私は計画10まで考えておりますが、計画10まで全て成功すれば、この国と隣国の幾つかの人口がそれぞれ半分程度にまで減ると思いますの。
うふふっ。楽しみですわぁ~。
「……ふんふふ~ん」
私が計画の成功を思って気分を良くしていると、鼻歌が聞こえてきました。見てみると、どうやら少年が何かしているようですわね。おそらく庭師の息子か何かだと思いますわ。
丁度良いですわね。では、あの者をターゲットにしましょう。
私はその辺にあった石材を1つ掴み、慎重に少年へ近づきます。そして、手に持った物を振り上げ!
虐殺のスタートですわぁ!!!