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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

短編 10 スーパー長芋ブラザーズ

作者: スモークされたサーモン


 とりあえずタイトルから連想するものを書いてみよう。そんな感じで生まれた物語です。





 この宇宙の何処かにあると言われる惑星『芋』


 今日もこの星で仁義なき争いが起きていた。


 争いの発端は長芋兄弟の兄、ドン・長芋と里芋姉妹の姉、ミス・里芋が『どっちが優れた芋なのか』の言い争いを始めたことによる。


 正直どうでもいい内容にも思えるが当人たちは本気だった。それこそ芋を芋で洗うような凄惨なる芋洗い戦争の始まりである。


 先制攻撃としてドン・長芋がまず主張した。


「長芋は芋にしては珍しく生で食べられるミラクル芋だ! こんな芋は他にはねぇ! ヌルヌルするだけの里芋なんかとは格が違うんだよ! 格が! お前ら箸から逃げるんだよ!」


 鼻息荒く主張するドン・長芋。


 これに対してミス・里芋は冷静に切り返す。


「はぁ? 触れたら痒みを引き起こす白い物体が何を勘違いしてるの? 里芋は芋煮の定番。むしろ里芋こそが芋全てにおける代名詞に相応しいわ。歴史も縄文時代に遡れるし。時代の深さこそが食の歴史って分からないのかしら? 啜るしか能のない長芋には分からないかしら?」


 ミス・里芋の煽り文句は超一品。これにはドン・長芋も『ぐぬぬ!』と唸る。


 だが、我らがドン・長芋も負けてはいない。


「里芋なんてなんかゴツゴツしてて黒い塊じゃねぇか! 長芋は綺麗な肌色だもんねー!」


「はぁ!? 剥けば綺麗な素肌が見えんのよ! 地肌に触れんな! この長芋野郎!」


 乙女としてミス・里芋がぶちギレた。ドン・長芋は胸を掴まれて吊り上げられる。今にもドンのボディは折れそうだ。


 ドン・長芋とミス・里芋は長年に渡って争いを続けてきた。それこそ幼稚園の頃から高校の修学旅行に至るまで。その青春の全てを互いにぶつかり合って過ごして来たのだ。そしてドンはよく折られた。何せ長芋ゆえに。


 それをいつも見守っていたのが長芋兄弟の弟、ポン・長芋と里芋姉妹の妹、モニュ・里芋である。


 今もそばで二人のやり取りを見ている弟妹二人は仲良さげである。


「兄さんはいつも素直じゃないよね。モニュちゃん」


「姉様もドンさんの事が大好きなのにまだ意地張ってるのです。見てるこっちが恥ずかしいのです」


 この二人。なんと恋人である。ポンとモニュは兄達とは違い素直であった。


 物心着いたときからラブラブで将来を約束した仲。家族公認である。


 里芋てあろうが長芋であろうが特に気にしない二人からすれば年長の二人が取っ組み合いの喧嘩をしていても、じゃれあっているようにしか見えない。たとえ毎回ドンがポッキリと折られていたとしても。


「ぐぁぁぁ! またか! また俺を折りやがったな、この暴力里芋が!」


「脆すぎんのよ、長芋は。里芋ならこんな風にならないんだけどね」


 ドン・長芋をへし折ったミス・里芋が地面に落ちたドンの体を踏みつける。靴は勿論脱いでいる。ドンの見えないところでミス・里芋の足先がドンのボディを優しげに撫でる。なんとなくエロティックだが撫でているのは里芋である。


「何かしら、この白くてヌルヌルするものは……ふふっ」


「俺の体液だ!」


 ミス・里芋の爪先はドンの体液でヌルヌルだった。色々アウトな気がするがただの長芋汁なのでセーフである。


「姉様……ド変態の痴女っぽいですの」


「兄さんの発言もアウトだよね」


 二人の弟妹は冷静だった。毎回このやり取りをしてて飽きないのかと思うがここからがある意味で本番である。


「こんなにヌルヌルさせて……このヌルヌル……あぁん」


「ごっふぅ!」


 ここでミス・里芋のボディプレスがドン・長芋に炸裂。


 ドンのヌルヌルがミス・里芋の全身に絡み付く。


 白くてヌルヌルする液体が里芋にコーティングされたのだ。そのヌルヌルレベルは既に天文学的なレベルである。


 ドンは更にボディを折られて瀕死であるが。


「んっ……こ、この変態。私をヌルヌル責めにして……んんっ……手込めにするつもりね!」


「……いや、俺、今にも死にそうなんだけど」


 ドンの上でコロコロと転がるミス・里芋。とろとろのヌルヌルである。


 この惑星芋では芋類である限りリスポーンが可能になっている。それが故にミス・里芋はドンに容赦がない。ドンが毎回白くてヌルヌルする液体になるまで彼の上でコロコロし続けるのだ。


 里芋によるすりおろし。ある意味で拷問である。


「あぁん! このヌルヌル野郎♪」


 ミス・里芋は色っぽい罵声を浴びせた。そこにあるのは愛する者の体液でヌルヌルになった里芋の姿。背徳を極めし乙女の姿である。


「……」


 既に体の大半が液体へと変わったドンからの返事はない。ただヌルヌルとミス・里芋に絡み付くのみである。


「うわぁ」


「姉様が完全に痴女なのです。恥ずかしいのです」


 拗れた二人の愛の形は年少の二人にはまだ早すぎた。


 ドンだった白い液体に溺れるミス・里芋。その顔は喜びに満ちていた。嫌いな相手に見せる顔ではない。ドンの意識が飛んでからミス・里芋はこの顔になる。


 乙女心は複雑なのだ。里芋だけど。


 そしてドンがリスポーンするまでミス・里芋は満たされた顔で白濁したヌルヌルの海でコロコロし続けた。


 その姿はどう見ても変態であった。




「……なぁ。兄ちゃんはどうすりゃいいんだろうか?」


 その日の夜のこと。ドン・長芋は弟のポン・長芋に訊ねた。


 もう二人の関係性は固まりきってしまった。普通の恋人にはなれない。それをドンも理解していた。今の関係はあまりにも歪である。相手が大切だからこそドンは悩んでいた。このままではミス・里芋は変態のまま年を取っていくだろう。


 ドンの危機意識はわりとマジだった。


「……兄さんが攻めるべきかな」


 ポンは言った。それは何気無い提案だった。ポンとしても兄の相談に乗れるほど人生経験が豊富な訳ではない。


 二人のように体液まみれのプレイはまだ未経験のうぶなカップルなのだ。


「……攻める、か」


 だがポンの提案はドンには晴天の霹靂だった。


 ドンはミス・里芋を愛している。だから酷いことは絶対に出来ない。だがそれが必要な事ならば……。


 ドンの瞳に焔が宿った。


 兄のただならぬ様子をポンは後にこう記したという。


『兄さんが焼き芋になってた』と。




 ◇


 

 惑星芋。またしてもここで芋を芋で洗う凄惨なる芋洗い戦争が起きようとしていた。


 今回も先制攻撃はドン・長芋である。


「……」


「きゃー!」


 ドン。まさかの無言でドン! である。


 ミス・里芋は床に転がされた。里芋だから一度転ぶと中々立てない。ドンはここに全てをかけた。


「……これからお前の皮を剥く!」


「……ふぇ?」


 ミス・里芋はまだ現状を理解できていなかった。ドンに倒された事も彼女からすれば初めてであるし、少し胸がときめくのを感じていた。


 そして里芋の皮を剥かれる……それの意味を正しく理解したとき、彼女は叫んでいた。


「な、ななななんですってー!」


「ぬおりゃー!」


 ミス・里芋の叫びを消すようにドンが動いた。彼もまた叫んでいた。ミス・里芋にのし掛かりめりめりと黒く繊維質な皮を素手で剥いていく。


 里芋一族にはこんな掟がある。


『皮を剥いてきた相手には食われないといけない』


 剥くのなら食え。責任取って食え。つまりはそういう意味でもある。つまりはそういう意味なのだ。ミス・里芋は体の水分が一気に沸騰するのを感じた。レンジ調理である。


 その気はなくともミス・里芋の皮は一気に柔らかくなった。ヌルヌルも増したがドンは必死になって皮を剥いていく。


「あ、や、あ、いやっ! あ、嫌じゃなくて……きゃ!」


 ミス・里芋はドンに剥かれながら様々な感情に翻弄されていた。


 嫌であるはずがない。でも乙女として恥ずかしくて堪らない。このまま剥かれてしまえば二人の関係はどうなってしまうのか。乙女心が不安と歓喜に振れる。振れてしまうのだ。


 ミス・里芋も今の関係には悩んでいた。でもこのままの関係もありだと思っていた。ミス・里芋はドン・長芋を手玉に取る。そしてドンを好き勝手にする。それは男女の関係として歪だとしてもミス・里芋は幸せを感じていた。どんな形でも愛する男に溺れる事が出来る。そんな今の関係に彼女は逃げていた。


 ドンが本当は大人しくて清楚な女の子が好きなことをミス・里芋は知っていた。

 

 そう、隣のクラスのさつま芋ちゃんみたいな子がドンの好みだと。


 ミス・里芋はドンを愛している。それこそ小さい頃からずっとである。だからこそ今の関係は断ち切れない。ドンを自分のものにしておくにはこれしかないと思ってしまったのだ。


 なお、さつま芋ちゃんには許嫁がいて既に結婚が決まっていることをミス・里芋は知らない。


「おらぁ! これで最後だ!」


「いやぁぁぁぁ!」


 ミス・里芋の乙女心が肯定か否定かの答えを出せずにいる間にドンが最後の一線を越えた。


 ミス・里芋の体は今や生まれたての赤ん坊のように光輝いていた。真っ白な体は染みひとつない。


 ドンは見とれていた。


 自分のしたことであるが愛する女の裸である。里芋だけど。


 ドンも初めて見るミス・里芋の素肌である。思わず生唾を飲み込んでいた。


 ミス・里芋もドンが出来る限り優しく自分の皮を剥いてくれたことを理解していた。逃げられないようにのし掛かられて……それでも手つきは優しかった。まるで割れ物に触れるような、そんな手つきだった。芋なのに。


 ドン・長芋とミス・里芋の視線があった。互いに互いの瞳を見つめていた。


 そして……。


「姉様には酢味噌ですの?」


「普通の味噌も美味しいよねー。シンプルに塩も合うし」


 ここで弟妹の参戦である。というか最初から側にいた。


「……何もつけずに……私を食べて?」


「……お、おう」


 ドンとミス・里芋の顔が近付いていく。そして……。


「あ、父さんから伝言があったんだ」


「まぁ。なんですの?」


「早くやっちまえ、だってさ。兄さん」


「……だそうですよ。姉様」


「……お前ら、分かっててやってるよな?」


「そうよね。これは間違いないわよね?」


 二人のキスは阻止された。


 とても良いところで阻止された。


 だが、それも仕方無い。ようやく二人が結ばれたのだ。がんじがらめになってしまった糸がようやくまっすぐに繋がった。


 少しくらいの意地悪があろうともう大丈夫。


 モニュとポンは二人の姿に未来を見たのである。


 二人の手がしっかりと繋がれ、離れぬその様子から。




 ◇



 ここは宇宙の何処かにあると言われる惑星『芋』


 今日もこの星では芋を芋で洗うような凄惨なる芋洗い戦争が起きていた。


 事の発端はこうである。


『お前は塩で食べるのが一番旨い! 元がいいからシンプルなのが一番なんだよ!』


『私は色んな味をあなたに食べてもらいたいの! 私の全てを知ってほしいの!』


 ……そういうのは家の中で二人っきりでやってほしい。


 惑星芋は今日も平和だ。




 今回の感想。


 すごいものが出来ました。R15で足りるか不安です。



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