私の長い3日 中編ー3
次回から後編になります。
多少の肥満ならまだ良いけど、国王夫妻は2人で400kg近くあるだろうし、息子も五雨唯璃が42kgならば…4人分はあるわね。
作物すら少ないのに、コレだけ肥えられるのは…国民にかなり負荷が掛かってるはずだわ。
『で、彼女を離してくれる?』
「無理な話だ。あーんな美味い飯食ったことがない!」
「そうよ!」
「パパママ!僕を助けて!」
「お前なんかより、この女のがはるかに使える!しかも…ぐふんぐふん…可愛らしいからなぁ」
頬をベロリと舐めた瞬間、エンシェントドラゴンが咆えた。
ヤバイヤバイヤバイヤバイ。何とかしないと、そう思いドラゴンの長達を見回せば、脂汗をダラダラ流し、立ち竦み、今にも倒れそう。
『クラナド国、ドラゴンの長達は咆哮に立ち竦んでます。同胞ならではのアルアルですね』
「……」
『残りの国々の率直な意見を聞きたいわ。返答次第で、世界は滅びるわ。エンシェントドラゴンだもの、生きながら焼かれ死すら出来ない…確かな生き地獄が待ってるわ』
「聞いてくる。返事は…」
『はい、のみよ』
「いいえが多かったら」
『一蓮托生、中立国とは言え…エンシェントドラゴンは、焼き尽くすわね。勿論、私達異種族やドラゴン族にも慈悲はないわ』
返事すらせず、国王達がいる場所に足早に向かうクラナド国王の姿は、あまりにも滑稽に見えた。
いくらなんでも、自分は他人の尻拭いなんてしたくない、と後ろ姿が言っていた。
『グリーン、ブルー、フェアリー、どうする?』
「もう…莫迦なの!アイツ!」
「馬鹿だよ!エンシェントドラゴンに喧嘩を売るなんてよ!」
「唯璃お姉ちゃん…」
『まー、中立国が国々の率直な返事を聞いているわ』
全速力で走り、息を切らしてまでこちらに来る、各国の国王女王達が姿を表す。命や世界崩壊の危機だし仕方ないわね。
「満場一致で…カナデイル国の制裁を決めました!」
「当たり前だ」
「当たり前よね」
「うんうん!」
「待て待て…グングニルは使えんし…俺の武器を使う」
「ミョルニルをか…」
「面倒くさいだろ…あの人数の武器」
『確かにね。でも、芥虫夫婦や兵士達は生け捕りよ。人間同士のやり方が有るわけだし、それが終わればシルバーの制裁があるわ』
「うむ。では皆は後ろに」
そう言うと、形が独特な武器ミョルニルを背中から降ろすと、「カナデイル国の兵士と国王の持つ武器の破壊!」とミョルニルに指示を出しぶん投げた。
ミョルニルは横にクルクル回りながら、カナデイル国の兵士の武器のみを壊しながら回る。
「鮮やかね」
「グングニルに比べたらまだまだだな」
「グングニルも三叉槍も凄いわよ…」
「ホントだよね!」
『フェアリーは三叉槍だし、ブルーは勝利の剣、よね』
「エルフのアンタは…ドラゴン殺しの魔法使えるじゃない」
『あらやだ、ドラゴン種全員相手にしたら…エルフなんて全滅よ。協定通りに、暴走してエルフに危害を加えたら使うだけよ』
次々と敵の武器を破壊していくミョルニルに、私はどうであれドワーフにも勝てない。対策は出来そうね。戦で学べることは学んで、対策する、それがエルフのやり方よ。
「ほれ、終わった終わった」
「ならば、こちらの出番…」
「「「「広範囲拘束魔法発動!!」」」」
人間とて莫迦ではない。
余計な争いはしたくないから、拘束魔法を磨き上げてきて、それはドラゴンの…まだまだ幼体なら拘束出来る。
『やるじゃない』
「俺達は…民を守らなければならない」
「そうよ、無用な争いをし異種族全員敵に回すには…マイナスしかないわ」
「じゃな…」
「ですね」
利己的思考回路ね。分かりやすくて私は好き。
「離せ!お前達…まさか俺達を」
「同盟国裁判をした後エンシェントドラゴンに身柄を渡します。
彼女はエンシェントドラゴンの番になる女性、ですから」
「な…なら、手など出さなかった!」
「クラナドを含む国は、あの店はどんな店が分からない、防御結界など複数の結界が張り巡らされていて、神のなせるワザと考えたはず。
ならば、今は静観しておこうと会議で決まった。それを破り、各国を危機的状況に追いやった」
「そうね…危うく世界崩壊する所だったわ!」
そして、フェアリードラゴンとドワーフの長が、エンシェントドラゴンに近づき…気絶させた?あの、エンシェントドラゴンを?
「成功したな」
「えぇ…今回は2人の努力の賜物ね」
……どういうこと?
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